東秀紀の作品一覧
「東秀紀」の「アガサ・クリスティーの大英帝国 ──名作ミステリと「観光」の時代」「東京駅の建築家 辰野金吾伝」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「東秀紀」の「アガサ・クリスティーの大英帝国 ──名作ミステリと「観光」の時代」「東京駅の建築家 辰野金吾伝」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
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Posted by ブクログ
ミステリ小説になぜ「観光」が出てくるのか。
著者の考えは、実際の(もしくは仮の)場所を設定することで、読者に内容の広がりを与え、興味を持たせるため。そしてもう一つは、これは結果論ではあるが、観光地が「聖地」になるため。
ミステリ作品の中で、こうした場所は多く取り上げられるが、例えばシャーロックホームズシリーズでは、観光地、特に田舎は、都会と比べて劣っていて、犯罪の温床となっていると捉えている、と著者は述べている。
しかしその一方で、アガサ・クリスティーの描く、観光地はそれとは全く異なる描かれ方がされている。
ミステリと観光にはどのような関係性があるのか。
アガサ・クリスティーの作品を、年代別に分類して考察していく様子はなかなか面白く、(あくまで著者の推測ではあるものの)歴史的背景と、それに影響される作品という捉え方は、今までになかった。
読書の新しい視座を得た気がした。
Posted by ブクログ
明治の偉大な建築家、辰野金吾の設計で東京駅が完成したのは大正4年のこと。事務所の弟子たちが笑いあう情景が描かれている。
「東京駅の見物客は今でも毎日一万人近くおり、乗車口も大賑わいです。『やあ、えらいもんだな』と大理石の円柱を撫でまわしている婆さんや、便所掃除用の水栓を弄りながら、どんどん水が流れるので、『これは大変だ。誰かとめてくれえ』とあわてて、頓狂な声を挙げ、助けを呼ぶ田舎の爺さんもいました。」
100年近く経って今年、東京駅復元工事が完了した。連日多くの人が押し掛け、かつてと同じように、感嘆の声をあげている。今ほど、この本を読むのにふさわしいときはないように思う。
本書では、辰野金吾がどのような思いをもって仕事をしていたのか、工部大学校時代のジョサイア・コンドルや、イギリス留学時代のウィリアム・バージェスの教え、同級やライバルの言葉や、生き様とともに語られる。それは、辰野の伝記である以上に、近代日本において建築という学問分野と、建築家という職業が確立されていく過程の記録である。
筆者はあとがきで、「あの赤い煉瓦の壁を見ていると、われわれは往時、日本人が西洋化にかけた情熱、執念、誇りを懐かしく感じてしまう。それはまた、現在に生きるわれわれを力づけるなにものかでもある。」という。
これは、単なる建築物としてそこに建つだけでなく、沢山の人に愛され、多くの思い出を集めてきた東京駅を語るのにふさわしい物語だと感じる。イギリスからコンドル先生がやってくるシーンなど、いよいよ始まるのだという感覚にぶるっときて、思わず姿勢を正してしまう。辰野金吾という建築家とその当時の建築界について、いきいきと伝える良書である。
Posted by ブクログ
かなり面白い視点での本だった。
ミステリの女王と名高いアガサ・クリスティ、彼女が書いた作品の執筆時期と、作品の舞台を著者の専門である観光学で解析するという趣向である。
ミステリと観光なんて、全然別じゃないかと思うなかれ、よくよく考えてみたならば、その発想はむしろ順当である。ほんの10年ほど前に乱立していた二時間ドラマ、あれはほとんど観光地の案内になっていた。温泉が舞台であったり、旅行好きの記者が事件に巻き込まれたりする。観光とミステリはかなり親和性が高い。
この本では、クリスティが執筆した時期などを丁寧に拾いあげ、英国の近代史と現代史をあわせて、ミステリの舞台である旅行先の田園や、観光地、保養地などの成立や、それを求めた読者たちの嗜好なども取り上げている。
既読のクリスティ作品はもちろん、未読の作品についてもネタバレ無しで解説されていて、とても面白い。二回の大戦時におけるイギリスの立場や世相なども解析されているのが実に面白かった。
平和でなければ、ミステリは成立しないという言説は正しいと同時に、そうとは限らないとも感じた一冊で、面白かった。
早速、未読のクリスティ作品を借りたので、ゆっくり読もうと考えている。