アメコミ界の古典中の古典と言われる『ダークナイト・リターンズ』は、マンネリ化していたバットマンに「ダークナイト」という位置づけを与え、そして再生させた記念碑的作品と言われている。
で、機会があったので読んでみた。これは確かに傑作中の傑作。衰えたバットマンが無秩序状態のゴッサム・シティに業を煮やして
...続きを読む大復活、すると彼の宿敵だったジョーカーも復活。アメリカとソ連は核戦争が勃発し、スーパーマンは暴走的に自警を続けるバットマンとの戦いに駆り出され……と、とにかく圧倒的スケールで物語が進んでいく。
人間の本性は変わらないよね、という作者のテーマ設定が面白く、トゥーフェイスやジョーカーを「治療した」と嘯く精神科医の愚かしさから、己の道を貫くためならスーパーマンとでも殴り合うバットマンのぶれなさなど、キャラクターの逞しさ(強さ)が読んでいてとても気持ちいい。ジョーカーのジョーカーらしさも。あのテレビ番組で皆殺しを宣言するところとか最高だった。
フランク・ミラーのアメコミの特徴なのか、小さなコマが並ぶ構成は、日本の漫画を読みなれていたら辛いかもしれないけれども、バットマンが復活するあたりでもう気にならなくなる。そして、ちゃんと見せ場は大ゴマを使ってくれる大サービス。馬に乗って、文字通りの「ダークナイト」になったバットマンの姿とか、素晴らしいアートワークだと思う。
読んでて思ったのは、1986年というレーガン政権下の不況やチェルノブイリ原発事故などが、いろいろ反映されたものになっているなぁと思った。これをもう一歩進めると『ウォッチメン』になるのかな。個人的には、あの閉塞感に満ちた時代よりも、さまざまな価値観がせめぎあい、道を見失ってしまった現在のほうが、この物語を読む価値を押し上げていると思う。
あと、ロビンが女の子になってて可愛い(ビジュアルは性別不明的だけれど)