鈴木徹郎の作品一覧
「鈴木徹郎」の「ムーミン全集[新版]」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「鈴木徹郎」の「ムーミン全集[新版]」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
"目が覚めたときにたいせつなのは、眠っている間も、だれかが自分のことを考えてくれていたのがわかることなんじゃないかなって。"
ムーミンシリーズの最終作。「ムーミンパパ海へ行く」と対になるお話。
「ムーミンたちに会いたい」「ムーミン谷に行きたい」と願ったホムサ・トフト、(この巻における)ヘムレンさん、(この巻における)フィリフヨンカ、ミムラ姉さん、スナフキン。
なんらかの解決したい悩みを抱えて彼らはムーミン谷にやってくるものの、ムーミンたちはちょうど島へ行っている最中。彼らには会えない。
そのため客人たちは十一月と十二月をムーミン谷でムーミンたちのように過ごすことになる。
偶然集まってきた小さい生き物たちの共同生活。愛おしかった。
共同生活の中で苛立ちながらも、自分が作りたい音楽の五小節を探す。
"(ぼくは、テントから出なきゃいけない。考えてばかりいるよりも、いっしょにいたほうが、まだましだ。連中ときたら、ムーミン一家とは大ちがいだよ)
はっと急に、スナフキンは一家のことが恋しくて、たまらなくなりました。あのひとたちだって、うるさいことはうるさいんです。おしゃべりだってしたがります。どこへ行っても、出くわします。でもいっしょにいても、ひとりっきりになれるんです。
(いったいムーミンたちは、どんなふうにしてたんだっけ?)
スナフキンは考えて、びっくりしました。
(夏になるたびにいつも、ずっといっしょにすごしていて、そのくせ、ぼくがひとりっきり
になれたひみつがわからないなんて)"
ムーミンたちを恋しく思いながらも、最後はひとりひとり、自分がやることを見つけて冬が始まる。
そして、その冬の始まりにムーミンたちが谷へ帰ってくるところでシリーズは終わる。
自分のやりたいこと、いるべき場所へ帰るという終わり方が好きだなぁ。
本当はもっとこの小さい生き物たちの小説を読んでいたいけれど、トーベがこの巻で筆を置いた理由がなんとなくわかる気がした。
Posted by ブクログ
ムーミン一家が登場しない本
秋の気配にテントをたたみ、スナフキンがいつものようにムーミン谷を離れます。
初登場の小さなホムサ・トフト。自分にお話しを作って聞かせるのが好きなトフトは、会ったこともないムーミンママを夢見ています。
フィリフィヨンカ。家の中のことをきちんとするのが好きな彼女が、虫のせいで屋根から落ちそうになるという怖い思いをしたのち、全てを放り出してムーミン一家に会いに行きます。
秩序を重んじるヘムレンさんも、ボートで大海原に出ていくことを、ムーミンパパに話すんだと、雨に濡れながら出かけてゆき…
とんでもなく年寄りで、なんでも忘れてしまうスクルッタおじさんは、遠い昔に行ったことのあるムーミン谷を思い出しました。
いつもと何一つ変わらないミムラねえさんは、妹のミイに会いたくなってムーミン屋敷を訪ねました。
そして、ムーミン谷を出たはずのスナフキンがやってくるのをみんなが迎えました。
スナフキンは、自分だけの音楽を掴みそこねてムーミンに会いに戻ってきたのです。
このひとたち、それぞれに属性、性格が違いすぎて、どこか噛み合わない日々を過ごします。でも、だんだんとお互いを尊重し合い、
翻訳者の畑中さんが仰った事なんですが、
《共鳴》してゆくのです。
私が好きだったのは、お話にしか聞いた事のないムーミン一家のことを頑なに信じているホムサ。
この子は、屋敷で出会ったチビチビ虫に関する本を読み続けるんだけど、それがとても不思議な事を起こすのです。
ここが、『ムーミンパパ海へ行く』で、1人お庭を想い、取り憑かれたように壁に絵を描いていたムーミンママに通ずるような気がしたんです。ホムサの想いがママと響きあったよう。
そうです、ムーミン一家とおちびのミイは、あのパパの島の灯台にいるんです。
それに、ホムサが香りで誰かのことを理解する所も素敵。ミムラはペパーミントのにおいがするんですって
ホムサだけがどうしてみんなスナフキンのことを尊敬するのだろうと、本気で考えます。
みんなから距離をとって自分の世界に閉じこもっているのではと
ミムラ族はどうも自分は自分、人は人という感じが強いですからね。
(でも、ここって時に手を差しのべます)
ミムラが好きにしていられるのは、フィリフィヨンカのようにご飯を作って、家を仕切ってくれる人がいるからで… ミムラ族に近い自分も反省
あらためて大人こそ楽しめるお話しです
トーべの評伝を読むと、こんな風に書かれていて驚きます。
_トフトの語りはトーべ自身のものであり、ムーミン谷の一家の話を語り続けることがもうできなくなってしまった、トーべ自身の声なのだ。『ムーミン谷の十一月』はどんな風に「ムーミン谷と幸せな一家が色褪せ、姿を消していった」か、という物語になっていくのである。_
と、あります。ムーミン谷の物語を描き始めて25年が経ち、このお話でムーミン谷の本は、最後となります。トーベは大人向けの作品へとシフトし、自分を取り戻していった…のかな。
プーとクリストファーロビンのように
でも、愛がなければここまで書けないし、こんなに長く読まれてもいないですよね。
ムーミンママとホムサとママの森にはトーべの愛を感じられたから。
Posted by ブクログ
朝日が昇るのが遅くなる。
夕日が沈むのが早くなる。
朝夕が肌寒くなる。
木々の葉の色が変わってくる。
手足が乾燥してくる。
知らぬ間に季節が冬へと進んでいく十一月。
わたしは、この本が読みたくなります。
ページをめくると、今年もスナフキンは旅に出たくなっていました。
ある朝の早く、スナフキンは、ムーミン谷のテントの中で、目がさめました。
あたりは、ひっそりしずまりかえっていました。
しんみりとした秋のけはいがします。旅にでたいなあ。
ほんとにふいに、どこもここも、しんみりとしてきたのです。
あたりのようすは、もう、なにもかも、いままでとは、がらっとかわっていました。
旅に出ようと思いたった人には、いっときいっときが、身のちぢむ思いでした。
ムーミン谷はしずかです。
ぽつぽつと話す人の声と、風の音と、雨の音と、川の音と、海の音と、木々のざわめきと、時折だれかが作業をするトントンという音しかありません。
自然の中はしずかです。スナフキンが木の葉を踏みしめて歩く音が聞こえてきそうです。
スナフキンは、旅の途中で、いろいろな人に逢います。
みんなは、それぞれ、ムーミンママや、ムーミンパパや、ムーミンのことを思い出しています。まだムーミンパパの家へ行ったことのない人もいます。
みんなは、ムーミンパパの家に行くことにします。
けれど、家にはだれもいません。
そうなのです。ムーミンシリーズで、この巻だけ、ムーミン一家の人たちが出てこないのです。ムーミン一家は旅に出ていたのです。
奇妙な同居が始まります。不思議な巻です。
そして最後は、はるか地平線から追い風に乗って一直線に岸にむかってくる、ムーミンパパたちの乗るヨットが見えてくるのでした。
ムーミンパパが帆柱に吊るしたカンテラの灯が冬近い夕暮にあたたかく見えてますよ…