日本語の文法や語彙を細かく分析し、それが科学的思考
にとって「ツール」としていかに有効かということを
書いた、ある意味言語学的な内容を期待していたのだが
実際は日本語に限らず、今まで日本文化の枠内で「科学
して」きた先達がいかにユニークな仕事をしてきたかと
いうことを描き、これからも日本は日本語によ
...続きを読むる科学を
していけばいいのではないかと提案している本だった。
今までの結果がいいからこのまま続けていけばいいと
いう論調なのも物足りないし、その意味でもタイトルは
少しおおげさ。「日本の科学が世界を動かす」くらいが
妥当なところか。ただ、このタイトルであれば私が読む
ことはなかっただろうと考えると「してやられたな」と
いうのが正直な感想だ。「日本語で考える」のと「英語
で考える」のが違うものであり、それぞれに良いところ
悪いところがあるのは自明のことのように思えるので
なおさらである。
ただ、西洋の科学を日本に取り込む翻訳の歴史や、その
訳語の素晴らしさ、英語以外で科学しているのは日本
くらいなものだという意外な事実や、様々な先達の成果
など、読み物としてはとても面白いと思うので、一度
読んでみて決して損はしない本だと思う。文章も平易で
読みやすいしね。