職場では対立が多く発生する。皆それぞれ仕事に対して求めるものは異なるし、仕事を通じてスキルを身に付けようとするもの、愛社精神から自己犠牲も厭わないもの(最近はほぼ見かけなくなった)、兎に角、給料さえもらえれば良くて、可能な限り楽していたいもの(これは流石に淘汰されていく環境だが)。そんな社員たちが互いを見て、残業ばかりやって効率悪いと考えてしまったり、報告してこないメンバーを見て、アイツサボってると考えてしまう事もあるだろう。確かに会社では成果が求められるから、作った実績の大きさだけで判断・評価できればそれに越した事はない。実際には部下を何名も抱え、それぞれが異なるスキルを活用して、全く違う領域の仕事に対峙する様な事はよくあるから、それを横ら並びで評価せよと言われても簡単な事ではない。うまく調整し、部下同士のわだかまりを解消し、皆んなが評価に満足、ハッピーなんて事は夢のまた夢だ。上司と部下、チームのメンバー同士、社員と外部の協力事業者、自部員と他部署の部員。皆それぞれ自己の願望も会社に対する要求も、与えられた環境も、上位からの指示内容も、プレッシャーの大きさも違う。加えて個人が歩んできた人生、受けた教育、育った家庭環境、持っている能力の高さ、価値観や考え方も異なるから、これで対立(コンフリクト)が発生しないわけがない。
本書はそうした職場で発生する紛争と、解決手段としての「コンフリクトマネジメント」について、事例と実践方法を紹介している。事例は仮名などを使って伏せてはあるが、全く自分の職場に起こっていることを観察されているんじゃないかと思うくらい、ピッタリ当てはまる。正に私のチーム内の誰かと全く同じ様な考え方や行動をする者が存在するから、すごくイメージしやすく、その心の内なども、いつも想像しているものと似通いすぎている。どこの職場でも同じようなものかと諦めたくもなるが、昨今人手不足で猫の手も借りたい(実際の部下は皆優秀な人材ばかりである)様な状況、辞められて仕舞えば、また採用から育成まで長時間かかる事を考えれば、対立を上手く解消して、それぞれの最大パフォーマンスを引き出させた方が、間違いなく良いに決まってる。
とは言え、各社員とは隔週で1on1をやって、なるべく要求を聞き出そうと試みるが、忙しさにかまけて、その場凌ぎになっていることに気づく。そんな自分への反省も込めて本書を読みながら、納得できる事も数多くスラスラと読み進められた。
先ずは何年管理職をやっても難しさを感じる「コンフリクト」を上手に解決しながら、少しでも多くの社員がそれぞれに合った状況で持つ能力を活かせるよう環境を整えたい。その参考書として大変役に立つ一冊である。