池上冬樹の作品一覧
「池上冬樹」の「週刊文春ミステリーレビュー2011-2016[海外編] 名作を探せ!【文春e-Books】」「花火 吉村昭後期短篇集」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
吉村昭『花火 吉村昭後期短篇集』中公文庫。
吉村昭が昭和後期から平成18年に没するまでの後期に発表した作品群より遺作『死顔』を含む16篇を収録した短編集。いずれも身近にある『死』を感じさせる短編ばかり。自らの死期を悟り、描いたのだろうか。
『船長泣く』。三崎から出港した太平洋を漂流するマグロ漁船の中で、飢餓と渇きの狭間に繰り広げられる船長と船員の葛藤を描いた秀作。史実に基づいた記録文学なのだろう。
『雲母の柵』。監察医務院に勤める新米検査員を主人公にしたサスペンスフルな香りのする短編。日々変死体と向き合う中、同期の3人の中の女性検査員が突如辞職する。彼女に僅かばかりの好意を抱いていた主人公だが、彼女の闇の部分を知ることに。
『花曇り』。恐らく小学校の低学年であろう少年の目を通じて、普通ではない両親の関係を炙り出す。大人の犠牲になるのはいつも子供なのだ。
『手鏡』。近所の公園で見付かった嬰児の死体、癌を患い苦しみの中で亡くなった友人と『死』を意識させる出来事の連鎖に主人公はかつて結核で療養していたことを思い出す。
『花火』。かつて結核を患った主人公が執刀医の死に思いを馳せる。もしかしたら、『手鏡』と同じ主人公だろうか。
『法師蝉』。友人の死と主人公の結核療養の記憶、そして、主人公の妻の死。『手鏡』『花火』、そして本作と次第に『死』が身近に迫って来るようだ。
『寒牡丹』。夫の定年を機に離婚を切り出す妻。娘の結婚式を目前に控え、妻は退職金の半額を手に家を出る。余りにも打算的で身勝手な妻。もしかしたら、かなり耐えていたのかも知れないが、哀しいね。
『桜まつり』。長兄の遺産相続で長兄の娘の相談に乗る主人公。問題は長兄の婚外子の相続だった。
『観覧車』。自らの浮気により離婚を余儀なくされた主人公が幼い娘との束の間の幸福を味わう。身勝手にも、よりを戻したいなど所詮無理からぬことなのだ。
『西瓜』。離婚した妻に呼び出され、突然告げられた知人との再婚。残酷だな。
『自殺-獣医(その一)』。次の『心中-獣医(その二)』との連作。肺癌を患った犬の突然の死は自殺だったのか。
『心中-獣医(その二)』。突然、主人公獣医の元に運び込まれた瀕死の犬。犬を道連れにした心中事件。
『遠い幻影』。戦時中に幼き主人公が記憶しち静岡で起きた特急富士の轢死事故の真実を明らかにするという内容の短編。事故は実際にあったのか。
『聖歌』。 教会で行われた姉の葬儀。聖歌が流れる中、姉の波乱の人生に思いを馳せる主人公。
『見えない橋』。36回も刑務所に入った69歳の累犯者の面倒を見ることになった保護会の主幹。刑務所の中で死ぬのは嫌だと真人間になろうとするが。
『死顔』。遺作。年老いた兄弟。次兄が亡くなったことから、遠い昔に亡くなった父母の記憶を思い出す。幸せな死などは無く、人は皆、幾ばくかの未練を抱えて天国に召されるのではないか。
本体価格860円
★★★★★
Posted by ブクログ
・あらすじ
吉村昭の中期短編集10篇。
・感想
どれも面白かった!
「鳳仙花」「休暇」「苺」「鋏」はどれも刑務官や篤志家(と言っていいのかな?服役中の受刑者を社会的に支える人たち)の話。
この中だと特に「休暇」が重たかったかも…。
鋏に出てくる片桐も不気味な印象があったな。
なにあいつ、慇懃無礼なのかよくわからん。
「無期刑を受けた犯罪者」という事実が余計に不気味さを醸し出してた。
あんなやつ一刻も早く追い出したくなるよw
「同情心を持たず一線引きつつも冷徹な視線で物事を観察する語り手」は読んでてストレスなくていい。
吉村先生のお父さん三部作は時代を感じたw
明治〜昭和初期の人間だもんな。
今からたった100年前なのにこんなに社会も国民性も変わるんだなーと感慨深い。
こんな父親からよくもまぁ立派な息子たちができたもんだわ。
戦中戦後の社会の様子なども知れるので興味深く読んだ。
そして巻末の編集者である池上冬樹の解説も面白かった。
私はシーラッハも好きなんだけど、解説で吉村昭先生とシーラッハの相似点を指摘してて得心した。
確かにこの二人は似てるわー。
現代小説を「ストレートに感情を描き、時に厚く塗絵をして共感を呼ぶことを第一義とした小説」という解説にも納得。
これでもか、というほどに一方的に押し付けて共感させようとする押し付けがましい作品が多くて最近の作品は読めなくなってしまった。
「感情を描かず、共感という媚びなど一ミリもない吉村昭の硬質な文学」がなんとも心地いんだよなぁ。
Posted by ブクログ
吉村昭『冬の道 吉村昭自選中期短篇集』中公文庫。
吉村昭が中期に描いた短編の中から選りすぐりの10編の短編を収録。
吉村昭と言えば、過去に埋もれ行く歴史の断片を描いた記録文学作品の他に、日本人の心を描いた一連の短編にも定評がある。『三陸海大岸津波』『関東大震災』『破獄』『羆嵐』『漂流』は前者で、後者の代表作は岩手県田野畑村を舞台にした『梅の蕾』だろう。『梅の蕾』は何度読んでも泣けてしまう。
本作では刑務所の看守を題材にした短編と戦争に翻弄される家族の姿を描いた短編が収録されている。『梅の蕾』同様、極めて淡々とした洗練された文章が読み手の心を揺さぶる。
『鳳仙花』。四季のうつろいと共に平穏に過ぎていく日常も普通の人には当たり前のこと。儚さと物悲しさが同居する吉村昭ならではの短編。刑務所の死刑囚たちを集めた句会。閉鎖された環境の中で僅かに感じる自然と四季のうつろい。櫛の歯が欠けるように少しずつ居なくなる句会の仲間。いつの間にか桜の季節は鳳仙花の季節に……
『休暇』。主人公の男のアイロニー的な心の内を描いた短編。子持ちの女性と結婚した刑務所の看守の男。結婚式の前日に死刑執行の支え役を勝って出て一週間の特別休暇を得た男は新妻と子供と3人で新婚旅行を楽しむ。しかし、心の中を過るのは……
他に『苺』『破魔矢』『黄水仙』『欠けた月』『冬の道』『飛行機雲』『鋏』『月下美人』を収録。
本体価格840円
★★★★