子供の頃、大村崑と三木のり平の区別がつかなかった。というか、同じ
人だと思っていたんだよね。だって、ふたりとも「鼻メガネ」だったのだの
もの。
三木のり平は既に亡くなっているけれど、大村崑は今でも現役だ。本書
が発行されたのは2015年なのだが、その時点で御年84歳。まずこの年齢
にびっ
...続きを読むくりした。
芸能人は実年齢より若く見えることが多いけれど、片平なぎさ主演のテレ
ビドラマ「赤い霊柩車」シリーズを見ている限り、崑さんは60代くらいに見え
るんだよね。
本書はテレビの黎明期から平成の現在まで、生い立ちを含めた崑さんの
人生の聞き書き。関西弁を活かしているので、崑さんの話が時折、頭の
なかで「赤い霊柩車」シリーズの「秋山さん」で再生されちゃう。
喜劇役者であることは知っていたが、幼い時に父親が亡くなり、親戚に
引き取られて特に叔母には厳しく育てられたなんて知らなかった。
芦屋雁之助・小雁と共に過ごした劇団「笑いの王国」の結成・解散の
いきさつ、大塚製薬やダイハツのCM出演時の裏話、既に故人となった
昭和のスターたちとの思い出話等が満載。
映画「ブラックレイン」で高倉健が演じた刑事の役は、もしかしたら崑さん
が演じていたかもしれなかったのだね。そうなっていたら、作品の雰囲気
も少々違っていたかもしれない。崑さんでの「ブラックレイン」も見てみたい。
ご家族のことも語っているのだけれど、結婚する時に奥様から「揺子と
呼んで欲しい」と言われた約束をずっと守っていらっしゃる。
これって素敵なことなのじゃないかな。結婚生活が長くなると奥様を呼ぶ
のに「おい」とか「お前」とか「お母さん」に変化してしまうと思うのだ。それ
なのに2010年に金婚式を迎えて後も、奥様のことを「揺子さん」と呼んで
いらっしゃるのだもの。
若い頃に肺結核を患って片肺を摘出しているが、それ以外には大病も
せず、戦後から現在まで活躍を続ける稀有な存在である崑さん。まだ
まだ「元気ハツラツ」なのである。