あらすじ
昭和三十~四十年代、『番頭はんと丁稚どん』『とんま天狗』などで絶大な
人気を獲得。コメディアン、俳優、司会、コメンテーターとして、テレビの
黎明期から活躍する大村崑の回想記。
劇団「笑いの王国」を結成した芦屋雁之助、小雁兄弟や花登筺、
同時期に活躍して関西の笑いを全国に広げた藤田まこと、藤山寛美、
高倉健、渥美清、美空ひばり、森繁久爾、森光子など昭和のスター・・・。
抱腹絶倒、波瀾万丈のエピソードが満載!
・おもな目次
【第一章 人気者狂想曲】
北野劇場/花登筺の脚本と演出/「とんま天狗」
【第二章 家族の記憶】
神戸・新開地
【第三章 「大村崑」の誕生】
終戦/闇物資商売/キャバレー「新世紀」
【第四章 姓は尾呂内、名は楠公】
ミゼットの生CM/オロナミンC秘話/アドリブから生まれた名コピー
【第五章 僕と家族】
息子たちと銭湯へ/家族対抗歌合戦必勝法
【第六章 「崑ちゃん」秘話】
メロンの恨み──江利チエミと高倉健/遊び仲間・藤田まこと
東京の仲間たち──渥美清、谷幹一、関敬六
キャバレーの流儀──エノケンさん/鼻メガネの継承──三木のり平先生
耳元で聴いた「柔」──美空ひばり/異端児──トニー谷さん
すごい顔パスの音曲師──柳家三亀松師匠/桂米朝師匠の「路銀」
『君恋し』──ミヤコ蝶々/藤山寛美さんの楽屋テクニック
森光子ちゃんと森繁久彌先生/とんま天狗ファン──十八代目中村勘三郎
座長・北島三郎さん/八代亜紀さんのサプライズ
【第七章 未完の話】
未だ届かない船――森繁久彌
【第八章 元気ハツラツ!】
崑ちゃんがくれたオロナミンC/崑ちゃんの元気の秘訣
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Posted by ブクログ
子供の頃、大村崑と三木のり平の区別がつかなかった。というか、同じ
人だと思っていたんだよね。だって、ふたりとも「鼻メガネ」だったのだの
もの。
三木のり平は既に亡くなっているけれど、大村崑は今でも現役だ。本書
が発行されたのは2015年なのだが、その時点で御年84歳。まずこの年齢
にびっくりした。
芸能人は実年齢より若く見えることが多いけれど、片平なぎさ主演のテレ
ビドラマ「赤い霊柩車」シリーズを見ている限り、崑さんは60代くらいに見え
るんだよね。
本書はテレビの黎明期から平成の現在まで、生い立ちを含めた崑さんの
人生の聞き書き。関西弁を活かしているので、崑さんの話が時折、頭の
なかで「赤い霊柩車」シリーズの「秋山さん」で再生されちゃう。
喜劇役者であることは知っていたが、幼い時に父親が亡くなり、親戚に
引き取られて特に叔母には厳しく育てられたなんて知らなかった。
芦屋雁之助・小雁と共に過ごした劇団「笑いの王国」の結成・解散の
いきさつ、大塚製薬やダイハツのCM出演時の裏話、既に故人となった
昭和のスターたちとの思い出話等が満載。
映画「ブラックレイン」で高倉健が演じた刑事の役は、もしかしたら崑さん
が演じていたかもしれなかったのだね。そうなっていたら、作品の雰囲気
も少々違っていたかもしれない。崑さんでの「ブラックレイン」も見てみたい。
ご家族のことも語っているのだけれど、結婚する時に奥様から「揺子と
呼んで欲しい」と言われた約束をずっと守っていらっしゃる。
これって素敵なことなのじゃないかな。結婚生活が長くなると奥様を呼ぶ
のに「おい」とか「お前」とか「お母さん」に変化してしまうと思うのだ。それ
なのに2010年に金婚式を迎えて後も、奥様のことを「揺子さん」と呼んで
いらっしゃるのだもの。
若い頃に肺結核を患って片肺を摘出しているが、それ以外には大病も
せず、戦後から現在まで活躍を続ける稀有な存在である崑さん。まだ
まだ「元気ハツラツ」なのである。