作品一覧

  • 藤沢周平伝
    4.0
    1巻2,640円 (税込)
    元山形新聞記者が『ひさし伝』(新潮社)に続き、「東京に住んでいながら顔はいつも山形のほうを向いています」と藤沢周平自身が語る、その山形にスポットを当て、69年の人生を辿った独自の伝記。 市井に生きる人々に注がれるやさしいまなざし、忘れられかけている日本の原風景の再現、端正で清冽な詩情あふれる文章などの魅力で、今なお人気の高い作家の人生が、これまでと一風異なる視点から浮かび上がってくる。 山形新聞での井上ひさしとの対談、東京の冬と比較した寄稿など、単行本未収録の作品も紹介されており、丹念な調査から、藤沢周平の「自慢はしない」「普通が一番」という人生哲学が描かれていく。 旧制中学に通いながら文選工として働き、山形師範学校卒業後中学校へ赴任するも、肺結核に罹り東京で療養。退院後は業界新聞を転々としながら小説家への志を抱き続け、ようやく生活が安定するも妻が癌で他界、昭和46年、44歳でようやく「溟い海」でオール讀物新人賞、同48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞し、人気作家になる様子や、『たそがれ清兵衛』『蝉しぐれ』といった名作の背景も詳細に明かされていく。藤沢ファンは必携の一冊だろう。
  • 評伝 吉村昭
    5.0
    1巻2,640円 (税込)
    『ひさし伝』『藤沢周平伝』など、現代作家の評伝で高い評価を得てきた著者が、歴史の空白に挑んだ稀代の作家・吉村昭の生涯と作品に挑んだ渾身の力作。 吉村文学を代表する圧倒的に多くの読者に迎えられた作品は、記録文学であり、戦史小説であり、歴史小説であり、伝記小説だった。 だがそこに至る道は決して平坦なものではない。郷里の日暮里と戦争体験、長い同人雑誌の遍歴などが、後の吉村文学を形成していく様子が本書では丁寧に、ダイナミックに描かれていく。 家族の重なる不幸や自身の病気、妻津村節子が芥川賞を受賞するも自身は落選が続くなど、「純文学作家」として陽の目を見ない日々を過ごすなか、ようやく39歳にして「星への旅」が太宰治賞を受賞、作家として大きな転機を迎える。 その後『戦艦武蔵』を皮切りに、歴史の真相を見据えた記録文学に活路を拓き、驚くほどの執念で数多くの資料を収集して独自の記録文学を形づくった様子も熱く語られていく。 残念なことに本書は著者の絶筆となった。吉村昭の壮絶な死を、同病にありながら淡々と記すくだりに著者の凄みが浮かび上がる。
  • ひさし伝
    4.0
    1巻2,640円 (税込)
    作家を志していた父。浅草のストリップ劇場での芝居への開眼。こまつ座旗揚げ、小説への執念――演劇、文学、ドラマ、三つのジャンルにわたって精力的な創作活動をする一方で、戦争、憲法、国家、農業、水などの問題について真摯に発言しつづけた井上ひさし。膨大な資料を駆使して、〈ひさしワールド〉を多角的に照らす。

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ユーザーレビュー

  • 評伝 吉村昭

    Posted by ブクログ

    これを読んでいたら、吉村作品を再読したいと思ってきました。
    それぞれの作品(特に歴史・記録もの)の独特の文体により読者をその中に引きこませる技はすばらしいです。
    また、資料を元にした緻密な世界観も他の作家にはなかなか感じることのできないものです。
    なかなか陽の当たらない人物を主人公をしていることが多く、
    歴史の中で翻弄される人々のドラマにもスポットを当てているのが興味深いです。

    吉村氏の亡くなられた後、
    同じように読める作家に私はまだ出会えていません。

    0
    2014年08月16日
  • ひさし伝

    Posted by ブクログ

    これは「ひさし伝」というより井上ひさし文学の評論集と言ったがいいかもしれません。

    しかし労作です。たとえば井上ひさし全仕事という全集をつくるとすると、ひょっこりひょうたん島から組曲虐殺までゆうに百巻は越すでしょう、史上最多巻の全集となるはずです。再読するだけで二年はかかったでしょう。

    とにかく、井上ひさしさんの膨大な著作群を目の前にすると、、天才と天才ゆえの努力にだれもが圧倒されてしまいます。笹沢さんは作品群を時系列に分解整理して井上ひさしさんの思想と方法論を解き明かしています、いやはや大変なお仕事。

    好子さんとの離婚話のところはちょっとつらいですね。
    当時テレビでも途方にくれる井上さん

    0
    2012年10月26日
  • 藤沢周平伝

    Posted by ブクログ

    あまり藤沢周平の本は読んだことがありませんが、「雲奔る」も楽しく読めましたし、同郷の文豪としてこれからはいろいろな本を読んでみたいと思います(^^)

    0
    2013年11月23日
  • 藤沢周平伝

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    著作を通して周平の実像に迫っている。
    改めて再読したく成る。作品が支持されるまでの努力は凄まじいものがある。 小説を読んでも、腹が満たされるわけでもないし、明日の暮らしがよくなるわけでもない 古来政治によって世の中が平和で、万民が幸福だったなどという時代がどれはどあっただろうと考えるのだ 馬も牛も姿を消して、かわりにトラクターが田圃を這い回った 村のそばを流れる生活排水と農薬で濁り、背骨の曲がった魚が泳いだ 

    0
    2013年11月10日
  • ひさし伝

    Posted by ブクログ

    山形の小さな町から湧き出でた言葉の泉が戦後という時代を流れながら、井上ひさしという大河になる物語です。コント、TV台本、歌詞、小説、戯曲と言葉の流域を広げていった人ですが、自分の言葉を文字にして書きつけることより、人の声にして放つことを大切にしていたような気がします。だから小説より戯曲という一回性の表現にこだわったのでした。ストリップ劇場のコント作者出身という原点にその理由を求めることも出来そうですが、しかし、もしかしたら「時間を止める」「時間を忘れさせる」という彼独自の〈ユートピア〉感がそうさせたのかもしれません。悲惨な現実を否定するのではなくて、「いまユートピアに向かって走っている」という

    0
    2012年09月09日

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