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作家を志していた父。浅草のストリップ劇場での芝居への開眼。こまつ座旗揚げ、小説への執念――演劇、文学、ドラマ、三つのジャンルにわたって精力的な創作活動をする一方で、戦争、憲法、国家、農業、水などの問題について真摯に発言しつづけた井上ひさし。膨大な資料を駆使して、〈ひさしワールド〉を多角的に照らす。
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Posted by ブクログ
これは「ひさし伝」というより井上ひさし文学の評論集と言ったがいいかもしれません。 しかし労作です。たとえば井上ひさし全仕事という全集をつくるとすると、ひょっこりひょうたん島から組曲虐殺までゆうに百巻は越すでしょう、史上最多巻の全集となるはずです。再読するだけで二年はかかったでしょう。 とにかく、...続きを読む井上ひさしさんの膨大な著作群を目の前にすると、、天才と天才ゆえの努力にだれもが圧倒されてしまいます。笹沢さんは作品群を時系列に分解整理して井上ひさしさんの思想と方法論を解き明かしています、いやはや大変なお仕事。 好子さんとの離婚話のところはちょっとつらいですね。 当時テレビでも途方にくれる井上さんの姿が放送されていたのを思い出しました。 天才井上ひさし、あえて名づければ日本のドストエフスキーでしょう。 たとえば、ここにドストエフスキーの方法論ともいっていいくだりがある。 「ぼくは、世界発見の有力な方法のひとつが物語であると思っています。 物語はコードの塊ですから、混乱している状況をある人はこういうふうに見ました、となると、自然に物語になってしまいます。 だから、物語の中には、発見と発表の方法が一緒になってるわけです。 ただ、世の中には使い古された物語がいっぱいあって、それによりかかっているとだめで、まず、こういう話です、ということをお客さんと契約していくわけですね。 もっともその通りになってしまうと、実に質の悪い予定調和のアホな芝居になってしまう。 そこでお客さんと最初に契約を取り交わしておいて、これはこういう話ですと言っておいて、お客さんがそのコードを、芝居の文法を、そうかこれだ、と呑み込んだところで少しずつずらして行く。 最初に提供した物語の文法Aを少しずつずらして行くのです。 同時に、前もって、こっそり,もう一つ文法Bを用意して、伏線を張っておき、ずらした物語の文法AをBに乗り換える。 つまりこれが例のどんでん返しです。 つまり観客と絶えず契約を結びつつ、その契約を、第二、第三の契約へ巧みに更新して行く。これがつまりは物語というものだと考えています。 この契約を価値観あるいは世界観と言い換えてもいい。」 準備なしの会話の中でこう言えるのはすごい。
山形の小さな町から湧き出でた言葉の泉が戦後という時代を流れながら、井上ひさしという大河になる物語です。コント、TV台本、歌詞、小説、戯曲と言葉の流域を広げていった人ですが、自分の言葉を文字にして書きつけることより、人の声にして放つことを大切にしていたような気がします。だから小説より戯曲という一回性の...続きを読む表現にこだわったのでした。ストリップ劇場のコント作者出身という原点にその理由を求めることも出来そうですが、しかし、もしかしたら「時間を止める」「時間を忘れさせる」という彼独自の〈ユートピア〉感がそうさせたのかもしれません。悲惨な現実を否定するのではなくて、「いまユートピアに向かって走っている」という共感によって未来に繋げていく。最終的に語っている境地が「過去ときちんと向き合うと、未来にかかる夢が見えてくる。いつまでも過去を軽んじていると、やがて未来にから軽んじられる。」そのための今。だから井上作品は〈思い残し切符〉を持った幽霊たちのワンダーランドなのかもしれません。
ひさし文学の全貌を知るにはとても詳しい案内書になる。井上ひさしの人間としての生活という点からは少し物足りないが、紛れも無い労作である。
ひょっこりひょうたん島」が死んだ人、死んだ子供たちの話だったと知って吃驚! 井上ひさしの本はかなり読んだと思っていたが、まだまだ読んでない本がたくさんあった。読み続けていきたい。芝居も機会があれば見続けていきたい。精神のリレーを繋いでいきたい。
この戯作者が生きている その時代に間に合ったことが たまらなく うれしい そして その戯作者が逝ってしまったことが たまらなく 悲しい ていねいに たんねんに ゆっくり じっくり 井上ひさしさん の 六千万歩 を 辿ってくれた 労作
「ひょっこりひょうたん島」「ネコジャラ市の11人」「ブンとフン」「下駄の上の卵」「偽原始人」「モッキンポット師の後始末」「青葉繁れる」「四十一番の少年」そして「十二人の手紙」。私が観たり読んだりした井上作品はざっとこんなところだった。いつだったか、講演会を聞きに行ったこともある、オーストラリアの人々...続きを読むが、日本人にフレンドリーなのはなぜかという部分が印象的だった。それはともかく、井上ひさしの人物像を理解するには役立つ一冊。
井上ひさしの故郷である山形新聞の記者であった著者が膨大な資料を駆使してひさしの生涯を書き尽くす.引用文が多すぎるのが玉にきずだが仕方がないか.
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