児玉聡の作品一覧
「児玉聡」の「哲学史入門Ⅳ 正義論、功利主義からケアの倫理まで」「オックスフォード哲学者奇行」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
「児玉聡」の「哲学史入門Ⅳ 正義論、功利主義からケアの倫理まで」「オックスフォード哲学者奇行」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ビジネス・実用
ビジネス・実用
ビジネス・実用
ビジネス・実用
ビジネス・実用
ビジネス・実用
ビジネス・実用
ビジネス・実用
Posted by ブクログ
倫理ってなに?
私の当初のイメージは常に感情の起伏を表情に出さず、物事を冷静に分析し淡々と処理をする態度。
なんか的外れな気がしてくるが、本書で紹介されるピーター・シンガーの一節はこうである。
「倫理的に生きるとは、自分がどう生きているかを一定の仕方で反省することであり、反省して得られた結論に従って行動しようと努めることである。──ピーター・シンガー」
なるほど、反省と行動が大切なのだと学べただけでも本書を読み始めてよかった。しかし本書のタイトルは「功利主義入門」。功利主義って利己的で自分勝手な振舞っていうマイナスな印象だけど、反省と行動を指針とする倫理に該当するのかい?
もし私と同じような浅はかさをお持ちの方がいたら、本書はその誤解を懇切丁寧に取り払ってくれる。ぜひ、手に取ってみてほしい。
個人的に一昔前に流行った行動心理学用語の「ナッジ」も、功利主義の文脈で説明できるんだとは意外であった。合理的な判断ではなく感情に流される愚かさを人間にはあると認めた条件下で、さて最大多数の最大幸福へと導くにはどうすればよいか。頭ごなしの規制を嫌う功利主義と最低限の規範を融合させる理論は、功利主義への理解をさらに深めてくれる。
難しい思想を扱いながらも、著者のユーモアを交えた語り口のおかげで最後まで楽しく読めた。功利主義礼賛で一貫することはなく、常に各理論の良い点と問題点を挙げ最後に著者自身の立場も率直に示されている。功利主義の概観を知るには、今もなお最良の一冊だと思う。
Posted by ブクログ
哲学史入門シリーズの最新刊。
各シリーズ同様、倫理学の主要な理論の第一人者へのインタビューによるライブ感のある哲学史入門講座となっている。同時に、倫理学を学ぶことの意義を探究する構成だ。今回は倫理学がテーマであり、隣接する分野も含め功利主義、正義論、徳倫理学、ケアの倫理を扱う。
特に徳倫理学が興味深かった。
正直倫理学の中でも馴染みのない分野で、実際に比較的新しい学問分野であるという。
要するに、功利主義や義務論などのように最大多数の最大幸福や規範への遵守という倫理の評価を外部へ依拠するのではなく、「徳」を備えた人格そのものに照準を当てる理論である。理想を追求する姿勢を感じられ、さわやかな印象を受ける。
しかしながら、この理論を達成することの困難さは日々私たちは痛感している。
立法国家で暮らす日本国民としては、大前提として規範がありその下で個人的な暮らしを営んでいるという感覚がある。「徳」が個人の行動原理として影響を及ぼせる範囲には、一定の限界があるのではないか。そもそも「徳ある人」とはどのような人物を指すのだろうか。
本書には「徳」に基準を設ける方針も紹介されており、例として日本における道徳教育の内容項目が紹介されている。そこに挙がっている項目に「公正」や「国にへの愛する態度」が含まれていることに、違和感を感じる。
朱 喜哲「〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす」で指摘していたように「公正」という資質を個人に過剰に依拠する姿勢は問題含みである。この観点から見ると、日本教育における「徳」項目には、個人の内面的資質として育まれるもの(これが本書の定義における「徳」)と、本来は社会的規範として共有されるべきものが混在しているように思われる。これは、誤った個人非難に繋がりかねないと危惧する。
その他理論についても、各研究者の視点と理論における問題点を詳らかに説明してくれている。決して自分の研究分野を単に称揚するのでなく、批判的な指摘も含まれていることに本書の信頼性の高さを感じた。
過去シリーズとあわせて、最前線の研究動向に触れたい人や、用語の暗記中心の学習に物足りなさを感じている哲学初学者におすすめである。