世界最強の女帝 メルケルの謎
著:佐藤 伸行
文春新書 1067
ビスマルク、そして、メルケル、その時々の危機によくもわるくも、ドイツは、ヨーロッパの盟主を世に送っている
本書は、メルケルとはどういう政治家であるかを語ってくれる
■アンゲラ・メルケル(1954.07.17~)とは
・メルケルは演説がうまいわけでもなく、聴衆に情熱的に訴えかけるタイプではない
・メルケルは、カリスマ性とは無縁であり、ドイツの大宰相でありながら、派手なところはなく地味な印象を与える女性である
・ムーティー(お母ちゃん)というニックネームをもっている。メルケルに子供はいないが、ドイツの国母と言う意味に転化されている
・欧州で一番危険な指導者で、その危険度は、ヒットラー以来である
・ドイツ初の女性宰相である。
・ハンブルク生まれであるが、生後まもなく東ドイツに移住する
・離婚歴があり、メルケルとは、前の夫のファミリーネームである
・メルケルには、1/4 ポーランドの血がながれているが、ポーランドにそのことで大きな反響があった
ポーランドも、メルケルに強いドイツを夢見ているのだ
・メルケルは、物理学者であるが、ベルリンの壁崩壊後に政治家に転職した
・メルケルは、ロシア語達人であり、英語も堪能である
■政治家をめざすメルケル
・1989 ベルリンの壁崩壊後 DA(民主的出発)のメンバーに
DAの事務所で広報の仕事を始めた
・1990 東ドイツ・キリスト教民主同盟(CDU)が、DAを吸収、東ドイツ最後のデメジエール内閣
副報道官に就任 卓抜したロシア語で、重宝される
・1990.10.03 ドイツ統一 東ドイツ消滅
ドイツ連邦新聞情報庁に就職
・1990.12 総選挙で初当選 第4次コール政権で女性・青少年問題相に抜擢
・1991.12 CDU党大会で、副党首に就任
<1991.12 マーストリヒト条約合意、EC設立、通貨統合、政治統合>
・1998.11 CDU党大会で、党幹事長に就任
・1999.11 コールの不正献金スキャンダル発覚、愛娘とおもわれたメルケルが、内部告発し、コール政権崩壊
・2000.04 CDU党大会で、党首に
・2002 総選挙は、メルケルは出馬見送り
■メルケル政権
第1次 2005年11月22日から2009年10月27日
第2次 2009年10月28日から2013年12月17日
第3次 2005年11月22日から2018年03月14日
第4次 2018年03月14日から2021年12月08日
■メルケル外交
対中 中国とは良好、中国に独産業が進出、VWの中国進出
対日 第1次世界大戦以来、日本には距離をおく、第2次世界大戦の枢軸はむしろ例外
対米 メルケル携帯盗聴事件、ナチスの過去ゆえに、人権問題に敏感な独国民は、イラク戦争で、米への親和感は揺らいだ
対仏 EUの超大国、第1次世界大戦後にハイパーインフレを経験している独は、経済対策のリスクには極めて慎重
対露 プーチンはドイツ語、ロシア語ともに、通訳なしで話をすることができる
リベラルのメルケルは、KGBのプーチンとはうまがあわない
経済政策は、天然ガスのパイプライン同盟、どこをパイプラインを通すか
レーベンスラウム、ウクライナはソ連だけでなく、ナチスドイツでも、生存圏
■ドイツの欧州における位置
・欧州統一と、ドイツ統一は、コインの裏と表
・中央銀行は、通貨の番人
・半覇権国家 ドイツは、欧州で覇権を握るには小さすぎ、バランスをとるための重石に使うには重すぎる
半覇権のバランスをとってきたビスマルクの去った欧州はドイツの強さゆえに、大きな大戦が幾度も起きている
・ナチスドイツの責任、メルケルは、強い指導力で、難民をドイツに受け入れた
■長考の政治家メルケル
・政治的決断を下すためには、情報収集を徹底的に行う
・メルケルの理解力は群を抜いている。その上に綿密な準備を行うので、国際会議では最後の一線がどこなのか
を知り抜いた上で、メルケルは会議に出席している
・象のような巨大な記憶力
・厳しい決断には、必ず、タイミングがある、遅すぎても、早過ぎてもいけない
・機が熟すまさにその時に、メルケルは、政治的判断をくだす それを「時と恵のしたたり」という
・問題解決には、問題を分割せよ、下部問題群に再構築し、個別に解いていく
目次
はじめに―「危険な女帝」か「聖女」か
1 培養基の東ドイツ
2 メルケル立つ
3 統一宰相の「お嬢ちゃん」
4 魔女メルケルの「父親殺し」
5 独中ユーラシア提携の衝撃
6 メルケルを盗聴するアメリカ
7 ロシア愛憎
8 メルケル化した欧州
9 リケジョのマキャベリスト
あとがきに代えて―中韓の術中に嵌まるなかれ
ISBN:9784166610679
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:780円(本体)
2016年02月20日第1刷発行