狩猟とそれを行うハンターたちに取材したエッセイ。
山とそこに棲息する獣たちと人間をめぐる、生と死の循環を取り上げているところなど、全体の雰囲気はこの本に推薦文を寄せている赤坂憲雄氏の著書『性食考』に類似している。獣を殺して料理し、自らの糧となるまでを追うところなどは、内澤旬子氏の『世界屠畜紀行』
...続きを読むとも似ているだろう。しかしこの本の際立って特徴的なのは、著者の母親として出産と育児をした体験、写真家としての立場から狩猟を追う体験、そして家族と共に獣の肉を料理して食べている体験をひっくるめて描いているということだと考える。またポストコロナ文学として、野生の肉を食べている面からコロナウイルス蔓延の影響を試論しているのも興味深い。
実際の狩猟で得られた猪をはじめとする写真も多く掲載されており、著者の体験を深く追いやすいのもありがたかった。