下巻です。読み終えた後は、しばらく、余韻に浸っていました。
それだけ読み応えがあり、とても面白い内容であったと思います。単なる戦記、立身出世ものではなく、様々なメッセージを投げかけてくる内容だったと思います。
無常な世の中、伝播しめぐる悪意、戦争という狂気が生み出してしまった化け物のお話でした
...続きを読む。
メッセージ性が強いんですよね。様々な問題を投げかけてきました。何が正しくて何が間違っているのか。歴史は勝者がつくり、結果、再び過ちを繰り返す。そんな戦争が持つ狂気が描かれていました。
話の中で、シェラの愛馬だった「青ざめた馬」が死んでしまったときは、思わず涙ぐんでしまいましたね。「我が家」と形容した砦で、部下の騎兵たちとともに芋を育て、それが実るのを楽しみにしていたシェラ。部下たちと食事をし、一緒に行動しているときは、確かに彼女は「死神」ではなく「少女」だったのではないでしょうか。
善良な者がいるけれど、それを上回る害悪がおり、真面目に戦っているものたちが死んでいく。また大義のために立ち上がったはずの解放軍も、結局は、圧政を敷いた王国の悪と同じ悪へと落ちる。
作中でシェラが言う「あるのは憎悪と執念だけ」という言葉にも頷けます。
作中の軍師ディーナーは、「一が汚れ、十を生贄にして、千を救う」という言葉を座右の銘にしていましたが、解放軍の食料を調達するために、村を襲ったことで「死神」シェラを生み出し、最後にはシェラに殺されました。
綺麗ごとだけでは世は回りませんが、「歴史は勝者が作る」のでは結局同じことを繰り返す。「汚れ」も必要であり、正しく「歴史を記録」し、「過去から学ぶ」。
そういった「あたりまえ」のことができないのが、人間なのだな、と……。
シェラは「今」を懸命に「生き抜き」ました。
その原動力が、「復讐心」であったり、満たされることのない「飢餓感」であったとしても、彼女は最初から最後まで、「まっすぐ」に生き抜きました。彼女は最終的に解放軍が樹立した新生王国を滅ぼして、その後どうなったのか、それは話の中では語られません。
「死神シェラ」。彼女に救いがおとずれたのかは、誰にも分かりません。それでも、彼女は復讐を終え「満足」したことでしょう。彼女の行った行為は、彼女に返ってくるでしょうが、それでも、彼女は「満足」して生を終えるに違いありません。
(意図的なのか)謎や伏線は残りますが、いつか明かされるときが来るのでしょうか。