芝木好子の作品一覧
「芝木好子」の「薔薇の木にバラの花咲く」「京の小袖」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
◼️ 芝木好子「紫の山」
うまいな、と思う。30代40代の女が抱えている鬱屈を丹念に描く短編集。
芝木好子は「幻華」でほう、と思い「湯葉・青磁砧」で唸った。芸術方面を題材としつつ、主人公となる昭和の女性を主軸に、巧みでクセのある設定と細やかで、ともすれば通り過ぎてしまいそうな心情を丹念に描く作家さんというイメージ、さらにいえば色や音などをうまく織り込む人、という印象がある。
珠子は姉の優子との間に双子ならではの繋がりを持ちつつ、性格の違いを感じていた。優子はさっぱりしていて、珠子はナイーブ気味。仲の良いいとこ同士、優子の息子・修と珠子の1人娘・が結婚させて欲しい、と言い出し、珠子は優生学的な理由から反対する。しかし2人の意思も固く、結論を出すため姉妹は一泊旅行に出かけるー。(双生)
冒頭の「 白萩」は兄弟に見合い写真を見せて、兄の方は主人公・秋子に興味を示さず、ぜひと言ってきた商社マンの弟と結婚する。しかし兄は自分の初恋の男に似ており、趣味も合った、というもの。兄の結婚、その後も描かれている。最後の弟のひと言が短い物語を締めている。
「変身」
ひとまわり歳が違い、先妻との子がある山陰の寺僧の夫のもとに嫁いだ秋子が主人公。秋子は染色の活動で認められつつあり、1年に1度東京に帰って工芸展の準備などに没頭する。夫の由信も理解はしているが、常に雅子が寺に戻ってこないのではという危惧を抱いている。
「晩秋」では高校の頃憧れていた先輩が画家となってパリに渡っており、結婚後夫の出張に伴って行った洋子が訪ねていく。
「隠れ谷」は奔放な女性陶芸家の微妙な男女関係の話、表題作「紫の山」はスイスに出張した夫が女性とともに乗っていた車の事故で亡くなった鬱屈を抱える祥子がその地を知る海外特派員の記者と親しくなり、理解される悦びと新たな出会いに華やぐ。
どの短編も30代から40代の女性が主人公で心のどこかに人生上、生活上の鬱屈を抱えている。昭和50年代に書かれたもので、女性の立場が昭和、と捉えられるが、だから現代とのギャップとそれでも変わらないようなものがあるのでは、との感慨を同時に抱く。言葉で紡がれる主人公の心情がシンプルで刺さってくる。
人の心は単純でしかし屈折もある。人それぞれのこだわりもある。成り行きの人生を振り返った時、失われたものと、でもこれだけは、という想いと、現在地、そしてこれから。
ちなみに芝木好子さんは宇野千代さんの前に文化功労者として顕彰された人。
芸術と社会と女性。品格のある言葉遣いも含めて、滋味があふれる作品だとしみじみ思う。自分は最近、若い方々の作品に触れる機会もあったりして、年長の繰り言かも、という遠慮もありつつ、読んでみてごらんなさい、なんて言いたくなっている。
Posted by ブクログ
日本文学大賞
数々の文学賞を受賞している芝木好子の作品を読むのは初めて。
有吉佐和子同様、今では使われない言葉や漢字がいろいろ出てくる。たまには、スマホで調べるが、すぐにネットサーフィンを始めてしまうので、あまり調べない。
芝木好子が育った隅田川周辺を舞台に話は繰り広げられる。
主人公の冴子は、川沿いの呉服問屋生まれなのだが、幼少の頃は酷い喘息に苦しめられるが、それをいたわってくれたのが、下職の紺屋(染物屋)の息子の俊男だった(戦前ゆえ、身分違い)。
今、冴子は内縁の夫の実家が営む組紐屋(今でも、モデルの店は御徒町あたりにあるそう)を手伝うが、組紐とは、着物の帯締めだけでなく、大昔の巻物の紐など多岐にわたり、採算度外視で、それらを復元する様子も描かれる。
難解な古代の紐の編み方を皆で解き明かす様も面白い。
冴子の父は、東京大空襲で隅田川あたりで亡くなったと思われるのだが、それが戦後かなり経っても、冴子は受け入れられず、いつも父親の声が聞こえたりするのだった。
また、冴子や、俊男など数人の男性の愛憎も入り乱れ、皆の、臆病だったり、大胆だったりする様に、読んでいるこちらはもやもやしてしまうのだった。
Posted by ブクログ
今はもう全く遊郭の名残はない界隈だから、どんな街だったのだろうと想像しながら読んだ。
愚かで可愛い女や強くしたたかな女。
黒い激情をうちに秘めた女、狂気の中に生きる女…。
どこか諦めて、哀しさ、絶望しながら生きているのに、女であることを悔やんだり怨んだりしていない。
とにかく最後の「須崎の女」は救いがなくて辛かった。
もう少しで誰かとどうにかなれそうだったけど、もうすべてが遅かった。
じわじわと水が迫ってきて、いられる場所がどんどん狭まってゆくような生き方をしていた女は、水に飲まれて息絶える。
しかし死をもってしか彼女を救えなかったのではないか、と思うほど救いのない女の人生を描いているのに、どこか明るさがある不思議な描写力で、陰惨になりすぎずさらっと読めてしまう。
でも瞼の裏に、彼女の最期がイメージできてしまうんだ。
Posted by ブクログ
呉服問屋生まれの冴子は、幼き頃は小児喘息で身体が弱かった。大人になり妻子ある夫と内縁関係という不安定な立場ながらも、夫の生家の商う「香月」で組紐を作っている。
序盤は、冴子が幼馴染の俊男に再会するところから始まっている。
今の生活や組紐を作ることに魅せられている様子を描いているのがあまりにも緩やかなので、少し物足りなさを感じていたのだが、3分の2を過ぎた頃から冴子の心の内が熱を帯びたかのような烈しさになってゆくので、こちらまで熱くなる。
葛藤と大胆さが交互になり、それに加えて幼馴染の俊男の読みにくかった感情までも見えてくる。
俊男の染める糸には艶と色気があると言ったのは、夫の父真造であるが、甥の響一も、もちろん夫の悠も夫の祖母加津も何かを感じていたのかもしれない。
紐への情熱と男に対しての情愛の凄さを感じ、生きるってのは罪深く命がけなのだと思わずにはいられなかった。