あらすじ
呉服問屋生まれの冴子は、内縁の夫の実家が営む組紐づくりに魅せられ手伝う日々。職人として技量は認められるものの、肩身は狭い。そんなある日、八百年前の厳島組紐復元計画に誘われる。手仕事の歓び、前妻の影、幼なじみとの再会……。隅田川端に暮らす人びとの心の襞を哀歓込めて描く、日本文学大賞受賞作。〈解説〉堀川理万子
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Posted by ブクログ
日本文学大賞
数々の文学賞を受賞している芝木好子の作品を読むのは初めて。
有吉佐和子同様、今では使われない言葉や漢字がいろいろ出てくる。たまには、スマホで調べるが、すぐにネットサーフィンを始めてしまうので、あまり調べない。
芝木好子が育った隅田川周辺を舞台に話は繰り広げられる。
主人公の冴子は、川沿いの呉服問屋生まれなのだが、幼少の頃は酷い喘息に苦しめられるが、それをいたわってくれたのが、下職の紺屋(染物屋)の息子の俊男だった(戦前ゆえ、身分違い)。
今、冴子は内縁の夫の実家が営む組紐屋(今でも、モデルの店は御徒町あたりにあるそう)を手伝うが、組紐とは、着物の帯締めだけでなく、大昔の巻物の紐など多岐にわたり、採算度外視で、それらを復元する様子も描かれる。
難解な古代の紐の編み方を皆で解き明かす様も面白い。
冴子の父は、東京大空襲で隅田川あたりで亡くなったと思われるのだが、それが戦後かなり経っても、冴子は受け入れられず、いつも父親の声が聞こえたりするのだった。
また、冴子や、俊男など数人の男性の愛憎も入り乱れ、皆の、臆病だったり、大胆だったりする様に、読んでいるこちらはもやもやしてしまうのだった。
Posted by ブクログ
呉服問屋生まれの冴子は、幼き頃は小児喘息で身体が弱かった。大人になり妻子ある夫と内縁関係という不安定な立場ながらも、夫の生家の商う「香月」で組紐を作っている。
序盤は、冴子が幼馴染の俊男に再会するところから始まっている。
今の生活や組紐を作ることに魅せられている様子を描いているのがあまりにも緩やかなので、少し物足りなさを感じていたのだが、3分の2を過ぎた頃から冴子の心の内が熱を帯びたかのような烈しさになってゆくので、こちらまで熱くなる。
葛藤と大胆さが交互になり、それに加えて幼馴染の俊男の読みにくかった感情までも見えてくる。
俊男の染める糸には艶と色気があると言ったのは、夫の父真造であるが、甥の響一も、もちろん夫の悠も夫の祖母加津も何かを感じていたのかもしれない。
紐への情熱と男に対しての情愛の凄さを感じ、生きるってのは罪深く命がけなのだと思わずにはいられなかった。