芝木好子のレビュー一覧

  • 洲崎パラダイス
    戦後の混沌とした時代に、今の江東区にあった所謂赤線地帯「洲崎パラダイス」を舞台に、人生に希望を見出せない男女の鬱屈した日常を描いた短編集。
    特に橋を渡ったらおしまいと言われる、その橋の向こうに希望を見出している若い女の子の話がなんとも言えず切ない。
  • 湯葉・青磁砧

    描写に唸る。

    湯葉、洲崎パラダイス、青磁砧を収録。中でも青磁砧が一番好きだった。群青の湖もそうだったが、芸術が生まれる場所の描写がとてもいい。本作では高能の釜焚きのシーンはが出色の出来で、思わず乗り出してしまうほどの臨場感があった。やきものに取り憑かれた父・隆吉の背を見て育った娘・須恵子は、やがて自身も父のあとを...続きを読む
  • 群青の湖
    研究室で働いていた主人公が琵琶湖のほとりの旧家に嫁ぎ、夫に裏切られ…と紹介分にあったので
    ハードな内容を想像していたけど、琵琶湖周辺の自然描写、琵琶湖に感化されていく主人公
    昔話を読んでいるような感覚になった。ひたすら美しいお話です。

    夫の裏切りから自殺未遂、ただしその後主人公が意外ととんとん拍子...続きを読む
  • 洲崎パラダイス
    闇の瀬戸際のせめぎ合いをリアルな描写で綴り、退廃的な空気のなかでもがきあえぐ男と女の生き様を読む者に見せつけてくる。
  • 洲崎パラダイス
    昭和30年頃の向島・鳩の街の赤線街を描いた、男性作家の吉行淳之介による『原色の街・驟雨』と読み比べたく、同時期の木場・洲崎の歓楽街を描いた、女性作家の芝木好子による本作を手に取った。私娼が働く洲崎特飲街へと続く橋の袂、「あちら側」と「こちら側」の、ちょうど境界に位置する飲み屋「千草」を起点に、女達の...続きを読む
  • 春の散歩

    小説のシーンを反芻しながら読む

    いくつかこの著者の小説を読んだ後、こちらを読んだ。あの小説の主人公は著者のこんな体験に基づいて作られたものだったのか、と様々なシーンを思い返すのが楽しかった。この順番で読んでよかったと思う。
  • 湯葉・隅田川・丸の内八号館
    著者の祖母、父、そして自身をモデルにした連作ですが、それぞれ全く趣の違う物語です。「湯葉」は明治の商家の妻の生き様を、「隅田川」は大正から昭和初期の浅草の伊達男を描いています(この父親が自分で図案も描く高級呉服商ということで、本筋には関わりありませんが、着物好きとしては楽しかったです)。「丸の内8号...続きを読む
  • 湯葉・隅田川・丸の内八号館
    父権的なるものを失ったとき、ひとりの女としてどう生きるか? 母娘3代の生き様のちがいを描くことで、この3部作はあざやかに明治から大正、そして昭和という時代を映し出す。

    3作通じてif(「もし…」)の用法を使うことで、「男」の死、あるいは消失によって「女」の生を描くという手法がおもしろいが、同時にそ...続きを読む