作品一覧

  • 不平等・所得格差の経済学――ケネー、アダム・スミスからピケティまで

    不平等・所得格差の経済学――ケネー、アダム・スミスからピケティまで

    ビジネス・実用

    3.0
    1巻3,960円 (税込)
    高名な経済学者である著者が、経済的不平等・所得格差の思想について、過去2世紀以上にわたる進化をたどる。ケネー、アダム・スミス、マルクスからピケティに至る経済学者たちの考え方を概括し、歴史的視点による今日の不平等の捉え方を問う重要な著作。
  • 新中国経済大全 資本主義と社会主義を超えて

    新中国経済大全 資本主義と社会主義を超えて

    ビジネス・実用

    -
    1巻3,520円 (税込)
    毛沢東時代の混乱と停滞から、起業家精神あふれるグローバル経済の主役へと変貌を遂げた超大国・中国。その成長はいかにして実現しえたのか。今後の課題はどこにあるのか──。 金融、不動産、テクノロジー、米中覇権の行方から新世代の消費傾向まで。中国と西洋の二つの視点を持つ新世代の気鋭の経済学者が、急成長の裏に隠された様々なひずみを浮き彫りにしながら、中国経済のいまを最新データと経済学のロジックで鮮やかに描き出す。昨今の中国経済衰退論のカウンターとなる一冊。 【目次】 日本語版への序文 第1章  中国という謎 第2章  中国経済の奇跡 第3章  中国の消費者と新世代 第4章  中国独自の企業モデル──国有企業と民間企業 第5章  国家と市長経済 第6章  中国の金融システム 第7章  テクノロジーをめぐる競争 第8章  世界経済における中国の役割 第9章  世界の金融市場で 第10章  新たなパラダイムに向けて 監訳者解説 中国経済の新しい見取り図 梶谷懐(神戸大学大学院経済学研究科教授) 註と参考文献
  • 所有とは何か ヒト・社会・資本主義の根源

    所有とは何か ヒト・社会・資本主義の根源

    ビジネス・実用

    3.0
    1巻2,310円 (税込)
    本やスマホ、土地や家屋、雇用や資産。自分のモノとして持っていることが「所有」であり、衣食住や商品取引、資本主義の原点である。こんにちシェアやレンタルがあるのに、ヒトは所有せずにいられない。他方でヒトの自由を守る所有権が、富の偏在を生む元凶となっている。なぜだろうか? 経済学や社会学、人類学の最新知見をふまえ、所有(権)の謎をひもとき、人間の本性や社会の成立過程、資本主義の矛盾を捉えなおす意欲作。
  • ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界

    ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界

    ビジネス・実用

    4.0
    1巻1,200円 (税込)
    「楽観」と「悲観」の中国経済を読み解く 不動産バブルが崩壊し、今世紀最大の分岐点を迎えた中国経済。 このまま衰退へと向かうのか、それとも、持ち前の粘り強さを発揮するのか? 『幸福な監視国家・中国』で知られる気鋭の経済学者とジャーナリストが、ディープすぎる現地ルポと経済学の視点を通し、世界を翻弄する大国の「宿痾」を解き明かす。 ◎「はじめに」より 中国経済に関する書籍はしばしば、楽観論もしくは悲観論、どちらかに大きく偏りがちである。 そうした中で本書の特徴は、不動産市場の低迷による需要の落ち込みと、EVをはじめとする新興産業の快進撃と生産過剰という二つの異なる問題を、中国経済が抱えている課題のいわばコインの裏と表としてとらえる点にある。 なぜなら、これら二つの問題はいずれも「供給能力が過剰で、消費需要が不足しがちである」という中国経済の宿痾とも言うべき性質に起因しており、それが異なる形で顕在化したものにほかならないからだ。 「光」と「影」は同じ問題から発しているのだ。 ◎本書の内容 ●1999年の着工以来、四半世紀も未完成のマンション ●陸の孤島にそびえ立つ巨大幽霊タワマン ●不動産危機によるチャイニーズドリームの終焉 ●コロナ以降の金融・財政政策のチグハグさ ●バブルはなぜこれまで崩壊しなかったのか? ●「合理的バブル」が中国経済にもたらした歪み ●楽観ムードが消え、人々は借金返済と貯蓄に邁進 ●スタバからコンビニコーヒーへ…消費ダウングレードが加速 ●国家公務員は倍率87倍の狭き門に ●竹中平蔵が中国経済のキーパーソン? ●EV普及の裏にある「墓場」の存在 ほか
  • 中国経済講義 統計の信頼性から成長のゆくえまで

    中国経済講義 統計の信頼性から成長のゆくえまで

    ビジネス・実用

    4.2
    1巻968円 (税込)
    世界第2位のGDPを誇る経済大国、中国。だが実態はつかみづらい。その経済力が世界秩序を揺るがすと見る「脅威論」から、正反対の「崩壊論」まで、論者によって振れ幅が大きい。本書では、「中国の経済統計は信頼できるか」「不動産バブルを止められるか」「共産党体制の下で持続的な成長は可能か」など、中国経済が直面する根本的な課題について分析。表面的な変化の奥にある、中国経済の本質を明らかにする。
  • 日本と中国経済 ──相互交流と衝突の100年

    日本と中国経済 ──相互交流と衝突の100年

    ビジネス・実用

    4.0
    1巻968円 (税込)
    日中関係に付きまとうもどかしさ。それは、「経済関係が良好でも、どこかで「政治」が邪魔をする」一方、「政治的な関係が悪化しても、「経済」のつながりはなくならない」ところにある。この構図は最近になってはじまったわけではなく、近代以降の両国の交渉において何度となく繰り返されてきたのである。日本(人)は中国(人)をどのように理解し、付き合ってきたのか。経済関係を軸に政治・社会状況の考察を織り交ぜながら、一筋縄ではいかない両国関係の本質を解き明かす。
  • 幸福な監視国家・中国

    幸福な監視国家・中国

    ビジネス・実用

    3.8
    1巻891円 (税込)
    習近平体制下で、人々が政府・大企業へと個人情報・行動記録を自ら提供するなど、AI・アルゴリズムを用いた統治が進む「幸福な監視国家」への道をひた走っているかに見える中国。 セサミ・クレジットから新疆ウイグル問題まで、果たしていま何が起きているのか!? 気鋭の経済学者とジャーナリストが多角的に掘り下げる!
  • 結局どうなる 中国経済 (Wedgeセレクション No.48)

    結局どうなる 中国経済 (Wedgeセレクション No.48)

    ビジネス・実用

    -
    1巻275円 (税込)
    株安を制圧できず、通貨のコントロールに手こずる中国は、不良債権問題をうまく先送りできるのか。国家粉飾が疑われ、新興国からの資金流出が止まらない。デジャブ感たっぷりの光景に世界が怯える――。【WedgeセレクションNo.48】 <目次> ■チャイナショック拡大 世界不況に備えよ ・中国は根治不可能 インフラ投資が世界救う 倉都康行(RPテック代表取締役、国際金融評論家) ・資金繰り悪化する新興国 中国の外貨準備は粉飾か 水谷幸資(経済ジャーナリスト) ■デフレ不況に近づく中国 必要なのは中国版リフレ 梶谷 懐(神戸大学大学院経済学研究科教授) ■中国経済「減速」を日本経済の経験から読み解く 中島厚志(経済産業研究所理事長) ■経済に冷や水浴びせてもやめられない「反腐敗運動」 富坂 聰(ジャーナリスト) ※この電子書籍は、月刊『Wedge』2015年9月号と2015年10月号に掲載された記事、及びウェブマガジン『WEDGE Infinity』に掲載された記事を一部編集したものです。記事中の事実関係、データ、肩書き等はすべて掲載当時のものです。
  • 世界史に学ぶ経済

    世界史に学ぶ経済

    ビジネス・実用

    -
    1~3巻220円 (税込)
    リーマン・ショック後、日米欧の果敢な金融緩和や財政出動によって、世界経済は壊滅的な状況になるのを回避しました。しかし今後、金融緩和の縮小段階に入っていくなかで、各国の経済や市場に大きな影響を及ぼすことが予想されます。ただし、何が起きるのか、それがどれぐらいのマグニチュードで起きるのかは、誰にも正確な予測はできません。  同様に、中国の台頭で世界の覇権構造はどう変わるのか、動力革命・インターネット革命に続くイノベーションは何か----といったことは、誰もが最も知りたいところでありますが、予測も困難です。ただし、現在の世界は、過去の歴史の積み重ねでつくられています。世界経済のさまざまな歴史を知ることは、今の時代を読み解くカギになるでしょう。  本書は、「中国は経済発展を持続できるか」とか「シェール革命で何が変わる」など、現代人がいま気になっていることを、過去の類似の事象などと比較して考えてみました。社会制度や科学技術も異なる時代の事象との安易な比較は慎むべきとしても、思わぬ示唆が得られるはずです。  本書の主な内容は以下のとおりです。 Part1 歴史で今を読み解く 疑問1 米国の金融政策はなぜ市場を乱す? 疑問2 中国の「影の銀行」は破綻する? 疑問3 アルゼンチン危機はなぜ頻発? 疑問4 貿易自由化はなぜ始まった? 疑問5 シェール革命で何が変わる? 疑問6 中国は成長を持続できるか? 疑問7 日銀が異次元緩和をしたのはなぜ? 疑問8 ITは仕事を奪うか? 疑問9 超インフレ時の株価は? 評論1 現代中国史 毛沢東とトウ小平の改革は常に「政治優先」だった 評論2 成長の壁に直面する先進国「戦争経済の先」を古典に学ぶ Part2 これが世界史を変えた 砂糖と紅茶 「イギリス風朝食」成立の裏面史 気候変動 飢饉をもたらした小氷期 麻薬 植民地経営の資金源 新幹線 世界の交通史を変えたスピード、収益、運行方式 ファッション スーツの原型は下級貴族の日常着 人口と地政学 ユーラシア覇権巡る攻防 歴史を左右した人口動態 オリンピック 冬季開催に反対した北欧 エロスと交易 長崎貿易を支えた遊女のコスプレ 大作を読む1 E・H・カーの『歴史とは何か』 大作を読む2ウィリアム・H・マクニールの『世界史』 Part3第一次世界大戦から100年 1総力戦が結びつけた「デモクラシー」と「ナショナリズム」 2政治指導者たちの誤算を描く『八月の砲声』 3人口爆発、経済成長、軍拡 強大化で孤立したドイツ

ユーザーレビュー

  • ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界

    Posted by ブクログ

    中国経済は行き詰まっている。住宅バブルは大量の未完成工事物件が、田舎の空を塞いだまま、工事もされずに鉄骨の柱も錆びついているという。一時期は中国のマンションは値上がりを続け、やがては地方にまでそのバブル的な景気が押し寄せるという楽観的な目測の元、庶民が住宅として住むには豪華すぎる物件の投資に、行き場のないお金が向けられていた。いつ頃だったか、巨大不動産企業の中国恒大集団の経営破綻がニュースで流れ、いよいよ中国初の世界恐慌が始まるのでは、と株価を見ながら緊張した事もあった。結果的には裁判による清算もこの2025年8月には完了した(香港証券市場での上場廃止は2025年8月25日)。然程、中国経済に敏感でない人でも、中国が風邪をひきくしゃみでもしようものなら、日本経済が病に伏せる(ただでさえ病人の様な状態では肺炎にでもなるか)程の影響を受けるのは避けられないと思っている。斯くいう私も恒大集団の件自体が記憶からは薄れていたが。思った以上にソフトランディングでもさせたのか、我々の耳には中国経済が破綻する様なニュースは幸にして届く事はなかった。
    寧ろ今は、中国と言えば電気自動車が世界を席巻し、バッテリーを積んだ中国車を日本国内でも頻繁に見かけるほど、中国は自動車大国となった。それだけではなく、電気自動車、バッテリー、太陽光パネルの言わば脱炭素社会の三種の神器とでも言えるこの分野では圧倒的な供給力を誇っている。一昔前の中国と言えば、強烈な埃と砂塵(砂漠から)、異臭と空気の汚れた正に発展途上でよく見られるイメージが大きかったが(加えてどんなに混雑してようが人混みで喫煙する人の多さか)、今の中国は綺麗な空気と青空でも見えるのではないかと言うくらいにクリーンな製品を大量生産している。
    その様な中国が世界経済の中でも大きな注目の的であるのは間違いなく、それは圧倒的な人口と、国家の集中的に力を発揮させる能力、爆発的な生産力から生み出される供給力の高さにある事は言うまでもない。何せ日本の10倍以上の人口を抱え、日本のような分断されて中々物事が決まらない政治とは真逆の共産党、いや習近平国家主席による即決独断型の政治体制があるから、何をするにも一斉かつ迅速極まりない。これは日本の政治家が見たら羨ましがる環境だろう。勿論その弊害として、民衆は自由を制限されるという条件付きなのではあるが。
    中国経済を見た時に、不動産バブルの沈静化、電気自動車を代表格とする「新三様」と呼ばれる新産業構造への変革を眺める事は、それを、支える国家の政策を垣間見る事になる。中国社会が抱える複数の問題•課題としては、元来、中央に権力と財が集中し、地方の財政は厳しい状況にあると言う事。そして一人っ子政策の弊害として日本を超えるスピードで超高齢化が進む事、沿岸部と内陸の貧富の格差、共産党が見誤れば一挙に崩壊しかねない権力集中のリスク、更には債務の罠を併せ持つ一帯一路構想。これらに継続的に同時並行的に向かい合わなければならない中国が、今後どの様な舵取りがされていくのか。勿論船頭は習国家主席である。そして本書でも繰り返し述べられている、「過剰供給力と国内消費需要の不足」(日本でもよくEVの墓場の記事をよく見かけたが)の問題を解消し、持続的な成長が図られるのか。まだまだ予断を許さぬ状態だが、これを見て分析する事は、世界経済の行末を占う上でも重要だ。話によれば、バブル崩壊後の日本の失われた30年を反面教師にしているという事だが、今のところ不動産バブルと高齢化については、同じ茨の道を進み続けている。
    本書は前述した様な、近年中国経済と国家の政策などを8つの章に分けて描いていく。章ごとに纏めもあるので、内容はすごくわかりやすい上に頭に残りやすい。中国経済を見ながら世界の動きを学ぶ事は、現代社会の動きそのものを理解するのにも役立つ。そして日本と同じ様な悩みを抱え、日本に先立ってそれらを解決してくれるなら、日本にとってのヒントになるかもしれない。概要を掴むだけでなく、日本のヒントを探しながら読む、という点でぜひ一度手に取ってみては如何だろうか。

    0
    2025年09月15日
  • ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界

    Posted by ブクログ

    専門的な内容が多く完全に理解したとは言い難いが、特定の思想に偏らない中立的な視点で今の中国経済が解説されていて勉強になる。自分では極力偏見を排してニュースを見るよう心がけているつもりだが、それでも古くて一方的な見方で中国を見ていたことに気付かされた。例えばEVの急速な普及はナンバー取得優遇などの政策要因が主だと思っていたが、単にガソリン車よりお得だから売れているだけというのに驚いた。昨年深圳の金持ち社長から「EVなんて不便で信頼できない車は絶対買わない」と聞いたが、そういう安物に俺は乗らないという事だったのか。
    そして「殺到する経済」というフレーズも中国経済の特色をよく表現していて腹落ちした。中国でビジネスしている人は必読の書、だと思う。

    0
    2025年02月15日
  • 中国経済講義 統計の信頼性から成長のゆくえまで

    Posted by ブクログ

    無関心ではいられない中国経済の動向をネタに、経済学の様々な道具を紹介しつつ使ってみせる。経済学初学者のための良書だと思う。デット・デフレーション、リフレ政策、金融政策・通貨価値・対外資本取引のトリレンマ、資本の過剰蓄積、ユーロ圏の罠、ルイスの転換点、ゾンビ企業、深圳のエコシステム(産業生態系)、囚人のジレンマと報復・評判・分断、アリババの仲介システム、ハイエクの自生的秩序、等々の概念が具体的な事例に即して語られており勉強になった。また中国政府の様々な経済政策の変遷を、それぞれコンパクトにまとめて説明してくれているのもありがたい。中国経済にについてよりフラットな見方ができるようになった気がする。

    0
    2024年03月05日
  • 幸福な監視国家・中国

    Posted by ブクログ

    終わりの部分はまさにその通りだと。気づかないから気づかれない、慣れてきたから慣れてしまった。「監視」という言葉自体の敏感度や解釈もどんどん変わっていく中で、かけがえのないもの、最後まで守り続けるレッドラインは一体どこでしょう。

    0
    2022年02月05日
  • 幸福な監視国家・中国

    Posted by ブクログ

    本書は昨年(2019年)の8月に刊行されてから、大変話題になり、かつ其の後起きたコロナ禍への中国の対応/管理手法の一つとして個人情報を国が使って監視したことから、さらに注目された本だ。

    これについては否定的な視点はありつつも、実は昨今(特にコロナ禍以降)の日本においても、このような手法を肯定的に捉える風潮が強まり始めていることは、政治を司るもののみならず、国民の側にもメリットがあるわけであって、その点を、中国ではどのように捉えられているのか?ということを理解しなければ、この『幸福な監視社会・中国』というテーマを理解したことにはならない。むしろ、この点こそが『幸福な』と付く理由であり、中国に限った話ではないことを物語っており、これこそが、本書の優れて今日的な評価を高めている理由だと、私は理解している。

    さて、本書の主題である"国家による個人情報の監視システム"については、正確に(中国で)何が為されているのか?を把握している人は少ない、と著者は説く。

    それは、我々読者側が持っている「先入観」による視界の歪み、正確な情報の欠乏、及び、システムの実装のスピードがあまりに早くて専門家でさえ状況を追い切れていない、などがあると言う。

    最初に挙げた「先入観」は、『中国の社会体制が普遍的人権や議会制民主主義、法の支配と立憲主義といったいわゆる「普遍的価値」にもとづくものとは根本的に異なるため、変化の激しいテクノロジー、特に「監視社会」に関係するそれが、一体どう使われるかわからないという「不確実性」に対する漠然とした恐れ(p.18)』が、我々に先入観を持たせてしまっており、かつ、昨今議論されている『中国のような権威主義的な国家こそ、これからのAI+ビックデータの時代で覇権を握るだろう、という言説がそれなりの説得力を持って展開それ始めていること(p.18)』もそれらを補強し、さらにコロナ禍で中国政府が見せた"鮮やかな情報管理"が、それらを確信に近いものとして多くの人に印象付けたと言えるだろう。

    第6章:幸福な監視国家のゆくえ”にて「功利主義(こうりしゅぎ : utilitarianism)」というキーワードを取り上げている点に、私は非常に妙着した。

    この「功利主義」、『行為や制度の社会的な望ましさは、その結果として生じる効用(功利、有用性、英: utility)によって決定されるとする考え方 (Wikipediaより引用)』とあるが、これを別の言い方をすると「最大多数の最大幸福」というベンサムの命題があるが、この考え方は、特にビジネスパーソンにとっては親和性が高く、また、本書の主題である「監視社会」とも親和性が高いということは、次の一節の引用で十二分にご理解頂けると思う。

    ---
    つまり、個人の属性や行動パターンによって反社会的行動を取りそうな人たちに対しては、あらかじめ行動の自由を奪っておくことが、違法行為を犯して刑務所に入れられる可能性を減らすので、むしろその人たちのためになる、というわけです。(p.172)
    ---

    そして”第7章:道具的合理性が暴走するとき”において、この仕組を最大限生かしている事例として、現在も中国政府が世界各国から非難を浴びている、新疆ウイグル自治区における再教育キャンプの実態について取り上げている。

    これは、ウイグル族住民の個人情報のみならず、生体情報(DNAや虹彩のデータ、話し声や歩き方)まで収集して監視網を強化し、かつ、再教育キャンプにて思想矯正を行うという、「現代の民族浄化」とでもいうべき実態について挙げた上で、これら監視システムの道具としての合理性を突き詰めていくと、こういう”暴走”ともいうべき人権無視の状態が生じることに警鐘を鳴らす。

    このように否定的な視点はありつつも、実は昨今(特にコロナ禍以降)の日本においても、このような「功利主義」と「監視社会」を肯定的に捉える風潮が強まり始めていることこそが、本書の書名に『幸福な』と付く理由である、と、私は解釈している。

    本書には、結論は無く、以下のまとめの言葉がある。

    ---
    これらを踏まえた上で、私達はどのようにすればよいのでしょうか。月並みかもしれませんが、やはり重要なのは、テクノロジーの導入による社会の変化の方向性が望ましいことなのかどうかを、絶えず問い続ける姿勢をいかに維持するかということに尽きると思います。(p.239)
    ---

    本書を読んで語りたいことは多々あるが、この中国の監視システムを「気持ちが悪い」と言いながらも、その基盤があって生ずる便益を羨望(せんぼう)する私達自身が、果たしてどのような社会を望むのか?という問いを投げかけられているのだ、と私は理解する。

    そして、このようなテクノロジーの発展というものについては、『確かにテクノロジーを敵視して、その導入を拒むのは「ラッダイト運動」(産業革命期のイギリスで起こった機械の破壊運動)の頃から繰り返されてきたことであり、同じことは監視技術の導入についても言えるでしょう。(p.239)』と喝破している。

    そうなのだ、我々は、いずれこれらを、喜んで受け入れていくのだ。今持っているこれら社会システムへの嫌悪感を忘却した上で。

    0
    2020年07月01日

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