CREATIVE OFFICE CUEの現会長にして水曜どうでしょうの
ミスター、生涯現役を宣言して今も最前線で活躍中の鈴井貴之の作品。
体裁は小説を中心に前後をエッセイで挟んだ異色作。なんでも、
「小説家と呼ばれるのが恥ずかしい」という実に鈴井さんらしい理由
でこの形態に落ち着いた模様。
小説
...続きを読む部分の完成度は非常に高い気が。
暗さと倦怠感が全篇に溢れるちょっとしたイヤミス。気分はどんより
してしまうのだけど、時折剥き身の刃物のような鋭い描写や台詞が
登場してくる。その対比が実に見事で、見てはいけないモノを長時間
物陰から見つめているような緊張感が持続する。このあたりがきっと
鈴井貴之の「狂気」であり、僕が彼にいちばん惹かれる部分。
バラエティで駄洒落を連発し、終始ニコニコしながらも目だけは笑っ
ていない、という鈴井さんのパンクな要素が色濃い。
しかし、物語に密接に関連するエッセイ部分からはホッとするような
「やすらぎ」が。「ダメ人間」の時と同じように徹底的に自分を卑下
しているが、文章は軟らかく圧倒的な説得力もちゃんとある。
「狂気」と「やすらぎ」を同居させ、それらを1つの作品に仕上げて
しまうのだから、その才能には本当に恐れ入ってしまう。
オフィスキューのメンバー、大泉洋も安田顕も戸次重幸も大好きだが、
僕がなってみたい、と思う人間はやっぱり鈴井貴之だな、と改めて。
ラストの文庫版書き下ろしアフターストリーで、ちょっと泣いてみて
ください、皆さん!