≪2022年9月号≫月刊 書店員すず木

≪2022年9月号≫月刊 書店員すず木
この道10年以上のプロ書店員・すず木です!
前月に配信された新作マンガで実際に読んで面白かったものの中から<少年・青年マンガ><少女・女性マンガ>それぞれ1作品を勝手に「今月の書店員すず木賞」としてご紹介!

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今月の書店員すず木賞

少年・青年マンガ

      • ブレス(1)

        ブレス(1)

        元モデルの宇田川アイアは、メイクアップアーティストになる夢を持っていたが、周りから否定されることを恐れて夢を諦めていた。 ある日アイアは、顔のそばかすを隠すように背中を丸めている大人しい女の子・炭崎純と学園祭のコンテストに出場することになった。衣装・ヘアメイクを担当するスタイリスト役とモデル役...

        メイクアップアーティストとモデルを目指す少年少女の“自分らしさ”を探す青春物語!!

        一度夢を持っても、才能がある人を前に己の才能のなさを認識し夢を諦めてしまうことはあると思います。
        自分にはその“役割”は求められていないと割り切り、「自分がダイヤの原石ではないと気付かされるくらいなら誰ともぶつからない方が良い。」
        この物語はそうやって夢を諦めた主人公ふたりが再び自分のやりたかったことに向かって走り出す物語です。
        主人公の宇田川アイア(うだがわ あいあ)は元モデル。メイクアップアーティストになりたいという夢がありながらも、自分にはそれを求められていないと思い夢を諦めていました。
        そんな彼が通うのは芸能志望や美容志望が多い高校。
        毎年行われる葵祭アーティストコンテストは注目のイベントです。
        そこに出演するスタイリストとして半ば押し付けられる形で参加することになった炭崎純(すみさき じゅん)とモデル役の宇田川。
        ふたりとも自分の能力に自信が持てないという共通点がありました。
        宇田川と話す内、炭崎がモデル役とスタイリスト役を交換しようと提案してきます。
        実は炭崎はその身長の高さを活かせないかと小さい頃からウォーキングを習っており、モデルとしての基礎があったのです。
        彼女のウォーキングを見て可能性を感じた宇田川は彼女の提案を受け、逆の役割で葵コンに挑むことを決意するのです。

        物語の展開がスピーディーで勢いがあり、読み始めたらその波に飲み込まれるかのように一気に読み進めてしまいました。
        そして絵が美麗!!
        キャラクター達の表情もとても豊かで魅力的。
        何者にもなれないと諦めていた主人公が夢を探す物語や、才能がある主人公が華開く物語でもなく、「目標を見つけ才能がないとわかったうえで足掻く」というところが今までにない物語です。

        スポーツや演劇などの物語が好きな方には是非読んでいただきたい作品。
        宇田川と炭崎がどう輝いていくのか注目です!!

少女・女性マンガ

      • はなものがたり 1

        はなものがたり 1

        完結

        全国の書店員さんたちも絶賛!! Twitterで話題になった美容に目覚めたおばあちゃん漫画!! 長年連れ添った夫を亡くした、はな代。 独り身で化粧品専門店を営む芳子。 まったく違う人生を歩んできたふたりが、おばあちゃんの今だから出会い、惹かれ合い、互いを知っていくことに――。

        人生の艶めきは何歳からでも可能!そう教えてくれる物語。

        長年連れ添った夫を亡くした、はな代。
        彼女の夫は悪い人ではないものの、ちょっとズレていたり、はな代のお洒落心に対し「みっともない」と言ってしまう、所謂“古いタイプ”の男性。
        はな代は街中で見かけた化粧品店の店員・堂島芳子(どうじま よしこ)と出会い、夫からの呪いを振り切り、美容やお洒落に目覚め“自分の好きなことをする”という新たな人生をゆっくりながらも歩み始めます。
        美容やメイクは何歳になってもやってよい!というのが主題のように思えますが、この物語のメインは違います!!
        自分の“好き”を見つける物語であり、人生の艶めきは何歳からでも得られることを教えてくれる物語でもあり、麗しいご婦人と可愛いご婦人の淡い想いの物語なのです。

        登場人物の関西口調もあり、物語全体的に流れるゆったりした空気感が心地よく、schwinn先生が言葉選びを非常に意識されているのを感じます。
        また端々に織り込まれたはな代の亡き夫との会話からは現代で言う“モラハラ夫”を感じますが、決してそれを批判するためではなく、今までは心に引っかかりを感じながらも受け入れてきたはな代の強さがそれを受け流しそれでも自分の好きを貫くしなやかな強さへ変化したことを表すために描かれているのです。
        恋愛の多様性、人生の多様性をサラリと描いているところもポイントです。

        物語の中に『花物語』という小説が登場します。
        今作『はなものがたり』のタイトルも『花物語』をリスペクトして付けられたのでは?と思う、物語の重要なアイテム。
        こちらは恐らく大正時代に発表された吉屋信子さんの少女小説かと思われます。
        少女や女性の友愛を描いた物語で、今作のはな代はその世界に憧れを抱いています。
        『花物語』を読むはな代は乙女全開でとにかく可愛らしいのですが、彼女にとって美しく凛とした芳子は憧れの物語の世界に引き込んでくれるような存在なのかもしれません。

        今後、芳子とはな代の関係がどうなっていくのか、彼女達の人生がどう進むのか見守りたいです。

        花物語』(河出書房新社)配信中です!是非合わせて読んでみてください。

こちらもオススメ!!

惜しくも今月の書店員すず木賞からは漏れたものの、オススメの作品をご紹介!!

書店員すず木

2005年より電子書籍サイトの仕事に携わる、この道10年以上のプロ書店員。
年間に読むマンガの冊数は2000冊以上。
「面白いマンガを多くの人に読んで欲しい」をモットーに、オススメのマンガをご紹介します。

最近の書店員すず木:友達の家に遊びに行ったら物が全くなくて吃驚しました…。
ヲタクじゃない家にはフィギュアってないんだ…ということを知りました。

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