川崎長太郎作品一覧
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4.0食えない作家志望の青年との同棲生活を描く。 「こう世間が不景気じや、あなたの勤口もあぶないもんだし、筆の方でちやんとやつて行ける自信だつて、ないんでしよう。――ね、家を持てないなら私と死んで頂戴! 家を持つか、心中するか、どつちかにして頂戴よう!」 いつまでたってもうだつの上がらない作家志望の青年・捨六と、浮気癖のある若い女給・時子。食い扶持を求めて小田原、名古屋、東京と転々とするものの、なかなかお金をお稼げない捨六に、業を煮やした時子は心中してくれと懇願するが――。 時子の独白で綴られる表題作に、久しぶりに再会した二人の一夜を描く後日談「別れた女」を併録。
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-いわゆる赤線、著者が描いてきた「抹香町」、玉の井やその他私娼街など、娼婦の街に生きた女たちの姿を、感傷を排して描く「娼家の灯」。 小田原をはじめとする西湘地域の時代的な変遷をたどった「西湘今昔」。 徳田秋声や宇野浩二ら長太郎が交友した作家たちの姿を活写する「面影」。 当時の社会への批評や自身の日常にまつわる出来事を綴った「週言」。 自らをもクールに見つめ容赦なく素材として使って描きつづけた私小説作家ならではの、感傷を排した筆致でありながら、どことなくユーモアの気配漂う昭和文士の文章の芸が様々な角度から存分に堪能できる、講談社文芸文庫オリジナル編集の傑作随筆集。
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-武田麟太郎の斡旋で1934年(昭和9年)に刊行された連作集の『路草』と三人称客観描写の中篇「朽花」を中心に据えた作品集として1937年(昭和12年)に刊行された『朽花』は、川崎長太郎が東京で文壇に連なって作家として生きていた時期の単行本。 この2冊から「初期名作集」として新たに構成したのが本書である。 単行本『路草』収録の5篇から、のちに作家本人によって、冒頭に置かれた「その一 飛沫」が割愛され、「その一 穽」「その二 隻脚」「その三 泥」「その四 路草」という四章立ての連作「路草」となっている。 「路草」は、カフェの女給である民枝と作家本人に近い存在である主人公のもつれた関係の転変、そして悲痛な破局を緊迫感あふれる筆致で描いている。 また、「朽花」は、徳田秋声の息子である徳田一穂が私娼街・玉の井の娼婦を足抜けさせようとして孤軍奮闘するさまを三人称で描く、いわばモデル小説である。 本書では、タイプの異なる2篇を収録することで、可能性を秘めた若い作家だった川崎長太郎の初期の姿を、コンパクトでありながら鮮やかな形で1冊の文庫本に収めることをめざした。 講談社文芸文庫版として著者の歿後40年の節目に刊行するにあたり、「路草」に関連して単行本に収録されながら後に割愛された「飛沫」を、「朽花」について著者が書いた短いエッセイを、それぞれ参考資料として収録することで、川崎長太郎や私小説の愛好家向けに工夫をこらしている。
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-23歳で文壇デビューしながら、その後不遇の時代が続いた私小説作家の川崎長太郎。東京での執筆に見切りをつけ、小田原の実家物置小屋に棲み、創作に専念すること十数年……。 1954年に娼婦たちとの関わりを描いた『抹香町』で長太郎ブームが起きるが、しばらくすると終息、そして間を置いて再び話題に……という具合の作家人生だった。 この作品は大正期後半、24歳の主人公が私小説の習作に励みながらも食べていくために子供向け読み物で糊口をしのいでいた時期に始まる。その後は27歳、29歳、31歳、33歳、35歳、すこし空いて42歳、45歳と年齢を重ねるたび、その時期に交際のあった女(カフェの女給、若い女流作家、家出した人妻、娼婦、芸者、食堂の女中)との日々を媒介にして大正末から敗戦直後に至る作家生活の周辺を回想するという仕立てで書かれている。 一見、いい気なものだという話にすぎないと感じられるかもしれないが、その筆致に甘さや虚飾はない。愛すべき人間でありながら、とうてい普通の市民としては生きられない「業」を背負ったかのような者たちが懸命に生きる姿が鮮やかに描き出されている。読後感はむしろ清々しささえ湛えているのである。
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-私小説家・川崎長太郎の自叙伝を含む決定版。 独身のまま56歳になったわが身を憐れむ「女に関する断片」、自分が服装には無頓着であることを書いた「ぼろ談義」、絵のうまい甥を誇らしげに語る「日曜画家」など、身の回りの出来事を軽妙に綴った作品集「一夜の宿」に、「抹香町もの」「葛西善蔵訪問記」など文学に関する話題を中心にした作品集「木彫りの亀」を同梱。 さらに「文藝」に連載された「私小説家」――旧制中学への合格と退学、丁稚奉公、家業の手伝い、東京での同人誌時代、物置小屋暮らしなど、出生から“長太郎ブーム”までの半生の記録をあわせた決定版。
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-自分の身の上と文学仲間の動静を綴る傑作。 ――庄太の一枚看板みたいな私小説は、いまだに彼の頭へこびりついており、忘れた時分に作品も発表している。今後共、世間にもて囃されるようなものは覚束ないにしろ、片隅でコツコツ書いて行きたい、あぶれ者の自慰行為に似た執念は、相当のようであった。―― プロレタリア文学が一世を風靡し、短い文芸復興期を挟んで、戦争文学が主流になっていく戦前・戦中期。どの波にも乗れず、講演の抄録や短い文芸批評、地方紙の埋め草原稿などで糊口をしのいでいる小川庄太は、東京でやっていけなくなると故郷の小田原に戻り、実家が持つ物置小屋で寝起きしていた。やがて、他人のものに手を出すまでに困窮し、軍隊に入るか、牢に入るか、というところまで追いつめられて……。 自分と家族の身の上を縦軸に、文学仲間の動静を横軸にして淡々と綴る見本のような私小説。宇野浩二、中山義秀、田畑修一郎、火野葦平らが変名で登場し、文壇の裏事情が垣間見える傑作。
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-30歳差の道ならぬ恋を淡々と描いた名作。 「先生が憎い。――こんなに、わたし好きになってゐるのに、本当に解つてくれないッ。」 と、花枝は、髪の乱れた額で、先方の胸倉をこづくようであつた。 「そんなことがあるものか。重々、ありがたいと思つてゐる。」―― 小田原の物置部屋で作家活動をする竹七と、夫が書いた作品を見てもらうため、ときおり竹七の元を訪れていた花枝。うだつの上がらない初老の作家と、2人の子を持つ25歳の人妻が、いつしか互いに離れられない関係になり――。 前後して発表された『抹香町』とともに著者の出世作となった、これぞ私小説といえる逸作。
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-私小説作家と女たちとの交情を綴った短篇集。 「相手変れど主変らずで、作者の分身である人物がどこにも登場しており、相手方の女性は作品ごとに一人一人違っているのである。が、私がそれぞれ大なり小なり親しくした人達であり――」(まえがきより) 小田原の私娼街「抹香町」の芸者とのつかず離れずの関係を描いた「捨猫」、著者のファンとして訪ねてきた人妻との淫靡な駆け引きを綴った「火遊び」など、著者が交情を重ねた相手とのエピソード8篇に、師と仰ぐ徳田秋声にまつわる女性の話「小説 徳田秋声」など全10篇を収録。私小説作家・川崎長太郎、愁眉の短篇集。
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-物置小屋で生まれた名私小説9篇。 小田原の魚商の長男として生まれた著者・川崎長太郎は、家督を弟に譲り、文学の世界へ。たびたび東京暮らしを経験するが、30歳になる頃、小田原の海岸にある実家の物置小屋に住み着き、物書きのかたわら私娼窟通いを続ける――。そんな著者の尋常ならざる日常を切り取った、味わい深い私小説集。 「淡雪」「月夜」「浮雲」はうだつの上がらない物書きとのつかず離れずの関係を、若い小田原芸者の視点で描いた佳作。映画監督・小津安二郎(ここでは「大津」として登場)と、「小川」として登場する著者、そして小田原芸者との三角関係を描いた、いわゆる「小津もの」のひとつ。 そのほか、実家で働いていた奉公人を描いた「ある生涯」、著者を批判し続けるが薬物におかされてしまった友人を描く「ある男」など、全9篇を収録。