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第一話
冒頭で窓という区切られた、漫画のコマのようなショットに写るカップル、当人達は幸せかもしれないが、そのコマを見ている絲生さんからすれば不愉快な光景でもある(同時に羨ましくも思っている)。
終盤の絲生さんと嘉湧くんを写す見開きの大ゴマ、絲生さんが愚痴を言っているだけに見えた光景も、我々読者から見れば絲生さんが腐していたカップルと同じような空間に見えてしまう。
この漫画を読んでいる我々も同じく、少し離れた場所から漫画のコマのように区切って見れば、案外幸せなのかもしれない。そんなことにまで考えが及んでしまった。
一見ユルいラブコメに見られてしまうかもしれないが、巧みな漫画的表現 -
『ヒミズ』以降の古谷漫画に顕著な特徴として、打ち切り漫画のような突拍子もない終わり方、思わせ振りに出てきて特に回収されないキャラや展開があり、漫画として納得しづらいことが多いです。
しかしそれらは我々の実人生がそうであるように、あえて歪な構成になっていると思いました。
今作に至るまで徹底してこのスタイルを貫いてる為、単に欠点だと切り捨てれません。
『サルチネス』はそんな古谷節がとても濃く、どんどん観念的な話になっていくようでいて、伝わってくるメッセージはとても普遍的なもの。
不思議な魅力を感じ、何度も読み返してしまいました。
個人的には古谷漫画の中でもトップクラスに好きです。
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