poさんのレビュー一覧
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主人公の魅力が薄い
作者の米澤穂信は青少年の日常にミステリを組み込んだ作品群で有名で、それらに関しては作者の技量は疑う余地はない。
一方でこの作品は現職の刑事を描いている。社会的地位のある成人男性が主人公の作品となると同作者の作品では
黒牢城を思い浮かべるが、それと比べると主人公の掘り下げが明らかに足りていないと感じた。
黒牢城の荒木村重は豊かなキャラクターだった。厳粛な領主でありながら部下の扱いに苦心し、茶器に執着し、
官兵衛の言葉に戸惑い、信長に対し強い感情を抱く。それらは主人公の内面への掘り下げであるとともに物語の中でも
重要な意味を持っていた。
では本作の主人公である葛はどうか。現職の刑事で優秀な頭脳...続きを読む