【感想・ネタバレ】不如帰のレビュー

あらすじ

「ああ辛い! 辛い! もう――もう婦人(おんな)なんぞに,生まれはしませんよ.」日清戦争の時代,愛し合いながらも家族制度のしがらみに引き裂かれてゆく浪子と武男.明治31-32年発表,空前の反響をよんだ徳冨蘆花(1868-1927)の出世作は,数多くの演劇・映画の原作ともなり,今日なお読みつがれる.改版(解説=高橋修)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

明治を生きる夫婦の悲哀。時代に翻弄された男女の切なく悲しき物語。映画化すると、こんな感じのキャッチコピーになるだろうか。プロットを辿るとそんな感じだ。確かに読んでて涙溢れた。浪さんが自殺しようとするあたりとか小川さんの語りとか。
深い考察は解説を読んでなるほど、と思った。あんなに深い読解力があれば楽しいだろうな。。

もうおんななんぞにうまれはしない。。。
この作品で最も有名な浪子の臨終間際のセリフ。
自分の不幸が女に生まれてしまったことに起因することを嘆いての言葉。
明治時代、お家の慣習が根強い男性中心の文化。
浪子と離縁を薦める母に対して、武男が逆の立場(武男が結核)で向こうから離縁されては嫌だろうと問うも、母は男と女では違う、と。
売り言葉に買いことば的な発言なのだろうが、一体何が違うのだろうか?女の親はそもそもそんなことはしないということ?それとも男が肺病だったら離縁されても問題ないということ?
現代を生きる自分にとっては、なんて世界だ!?となるものの、数十年数百年後には当然に考えている今の常識が、なんて世界だって!?って思われるようなことがきっといっぱいあるんだろうな。

0
2022年12月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

徳富蘆花―不如帰
学校で習うような小説なんて、説教くさいのかと思いきや、これ、完全に昼ドラマです。

夫婦仲は、当時としてはびっくりするほどよい。
ところが、彼ら二人の周囲には敵がたくさんいるのです。

意地悪なお姑さん、冷たい義理の母ーこれが浪子サイド。
育ててもらった恩も忘れて逆恨みする従兄弟、娘可愛さに浪子と別れさせようと画策する出入りの商人山木ーこれが武男サイド。
従兄弟と山木はあくどい商売で繋がってもいる。
そして、従兄弟の千々岩は浪子に横恋慕してるのざます。

浪子の父は心から浪子のことを慈しんでいるけれども、しょせん父親。
しかも戦時中の軍人。
肝心な時にはいない。
それは武男も同じ。
肝心な時、そばにいない。
浪子のなくなった母の姉も浪子の味方ではあるが、やはりいつもそばにいるというわけにはいかない。

きっかけは風邪だった。
こじらせて肺結核に。
当時の肺結核は、死に至る病であり、しかも伝染病。
夫婦は愛し合っているのに、さまざまな思惑にからめ捕られ、武男が戦地に行っている間に離縁ということになってしまう。

短い小説ですが、どろどろした情念あり、清らかな愛情あり。
そして、何も悪いことをしていない夫婦二人は、幸せの絶頂から不幸のどん底に突き落とされるのです。
これは、人気出るでしょう。

離縁させられた絶望から戦地で無茶を重ねる武男の姿などは、かなりくどく感じますが(なくてもいい部分と思われ)、当時はどう受け止められていたのでしょう?

「ああつらい!つらい!もう―もう婦人(おんな)なんぞに―生まれはしませんよ。―あああ!」
死の間際の浪子のセリフは有名ですが、男だって決して自由ではなかった。
武男だって浪子と別れるのは嫌だったけど、親に逆らうことは親不孝であり、別れた妻に会いに行くことは世間体の悪いことであり、それらの障害を武男は越えることができなかった。

人生はままならない。
だからこういう小説は時代を超えて読まれるのだろう。
しかし最後の一文。これは、要りますか?

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2017年04月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

片岡中将の娘、浪子は10歳で実母に死に別れ継母のもと辛抱と忍耐の日を送る。川島武男という好青年と縁付き伊香保で蕨摘みを楽しむ。幸せも束の間結核を患い、逗子で療養する。
戦地に赴き留守がちな夫。義母と武男に横恋慕した山木豊を娘に持つ山木の策略で離縁されてしまう。
父の深い愛や信心深い婦人の助けの甲斐もなく、失意のうちに儚い生を終えるのであった。

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2022年12月19日

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