あらすじ
これは怪奇短編小説の見立て殺人なのか?──イギリスの中等学校タルガース校の旧館は、かつてヴィクトリア朝時代の作家ホランドの邸宅だった。クレアは同校の英語教師をしながら、ホランドを研究している。10 月のある日、クレアの親友である同僚が殺害されてしまう。遺体のそばには“地獄はからだ”という謎のメモが。それはホランドの怪奇短編に繰り返し出てくる文章だった。事件を解決する鍵は作中作に? 英国推理作家協会賞受賞のベテラン作家が満を持して発表し、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞受賞へと至った傑作ミステリ!/解説=大矢博子
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Posted by ブクログ
英語教師のクレアは、同僚で友人のエラが殺された事件の容疑者になってしまう。二人が勤務するのは、ヴィクトリア朝時代の怪奇小説作家R・M・ホランドの屋敷を校舎にしたため、自殺した彼の妻の霊がでると噂されるいわくつきのタルガース校。エラの殺害現場には、ホランドが短篇「見知らぬ人」に引用した『テンペスト』のセリフ、「地獄はからだ!」というメッセージが残されていた。教師の傍らホランドの文学研究をしているクレア、事件の担当刑事ハービンダー、クレアの娘でタルガース校に通うジョージアの三視点を行き来しながら、ゴシック小説とSNSテキスト文化を巧みに混ぜ合わせたポップなミステリー。
『窓辺の愛書家』より先にでた、ハービンダーの初登場作品。この人好きだ~。二作読めばもう間違いないのはわかる。作中作の作りこみが特徴なので『カササギ殺人事件』と並べて語られることもあるそうだけど、私はホロヴィッツよりグリフィス派かも。
最初からせわしなく視点が変わった『窓辺~』と違い、本作はまずじっくりとクレア/ハービンダー/ジョージアそれぞれの視点から見た事件が語られる。とにかくこの人は視点操作による情報開示タイミングのコントロールが抜群にうまく、ある人物にとって当たり前すぎて一切触れられない事柄が別視点に切り替わってから明かされて驚かされる(サイモンの再婚相手がアフロなこととか)。オシャレで気取ってる(とハービンダーは思っている)クレアやティーンのジョージアよりもハービンダーのほうが人の服や持ち物を細かく見ていいとか悪いとか品評していたり。警察官らしくもあり、コンプレックスの裏返しのようでもあり、ハービンダーに親しみを感じる描写だ。
ハービンダーがたびたび創作者や読書家たちの「ブッククラブ的な会話」にすさまじく無理解なことを言うのがかなり笑えるのだが、続篇の『窓辺~』でモロに「ブッククラブ的」なグループに彼女を放りこんでるとこからして、このキャラクター書くの楽しくて仕方ないんだろうなぁ(笑)。複数視点が入り混じるスタイルの面白さって誤解を恐れずに言えば「偏見は面白い」ということに由来していて、人にぶつけた偏見が今度は自分に跳ね返ってくるようすがちょっといじわるな大人の笑いを生みだしている。そして『窓辺~』と同じく本作でも、殺人事件の謎とは別に〈他人という謎〉が作品の大きな魅力になっている。
殺害現場に残されたメモとクレアの日記に書きこまれたメッセージの筆跡が同じという段階で、読者視点ではかなり容疑者が絞られてしまうのでフーダニットとしては少し弱い感じだが、作中作「見知らぬ人」とホランドの伝記的事実にまつわる謎がとっても面白いのでおつりがくる。死んだ妻の足あとをそのまま床マットにエンボス加工するアイデアがすごいけど、元ネタあるのかな。
スクールカースト上位の子たちがヒューズ先生みたいな”白魔女”に心を捕えられているという設定もめっちゃ面白いし、エラがいたころの創作クラスの話も知りたかったなぁ。でもジョージアの視点はあるのに、ヒューズ先生の魅力の片鱗しか読者には教えてくれないあたりにグリフィス作品から深い奥行きを感じる秘密がある。しかもジョージア作の小説の書きだしを載せて、たしかに上手いと思わせることで創作クラスに説得力をだしている。どんだけ小説が上手いんだエリー・グリフィス!
Posted by ブクログ
見立て殺人とフーダニットに焦点を当てたイギリス発のミステリ。
イギリスの中等学校タルガース校に勤める英語教員のエラが何者かによって殺害されることから物語は始まる。
サセックス警察のカー部長刑事は、エラを殺した犯人はエラの知り合いであろうという推測の元、エラの同僚であり友人だったクレアやその同僚、タルガース校の生徒たちに聞き込みをし、犯人の足取りを追う中で、第2の殺人が起き……。
この物語は3人の主要人物たちが見聞きしたことと架空の短編小説『見知らぬ人』とが足りない情報を補い合う形で物語が進んでいく。実は読者が犯人に気がつけるように少しずつヒントが散りばめられているのだが、かなり注意深く読んでいないと犯人には辿り着けないようになっており、犯人の正体が分かった時に思わず唸ってしまう作品である。
この作品に登場するカー部長刑事が登場する作品がまた出ているようなので、続きも読んでみたい。
Posted by ブクログ
エリー・グリフィス初読。
刑事ハービンダー・カーの第1作。
これぞイギリスミステリ、と言いたくなる作品。
(私の中のイメージでは)どことなく暗く冷たい北欧作品、外連味があり大技を繰り出すフランス作品、ミステリより家族との絆が根幹にあるアメリカ作品。それらに比べ、どことなくミステリ色が強く、必要以上に残酷な描写にならないのがイギリスミステリのイメージ。
舞台は、ホラー作家の邸宅だった学校。被害者はホラー作家の小説に見立てられ殺されていたというもの。
正直星3寄りの星4かなぁ。。。
キャラもストーリーも、あんまり残らない。ゴシックホラー味のあるミステリだなぁとは思ったけど。。。
帯の文句で「この犯人は、見抜けない」となっているが、正直ヒント少なすぎたわからないだけでした。
次作の評判が高いので楽しみ。
Posted by ブクログ
〈ここが良い〉
・小説全体の構成。読ませる力のある小説。
・物語の緩急。特にティーンエイジャー特有のノリとか恋愛のいざこざの件なんかは、油断させられる。
・幻想怪奇短編『見知らぬ人』が本当に面白い!
〈ここはちょっと〉
・見立て殺人の要素は必要ないし、それを題材とする他作品と違い、重要度も低い。
・クレアへの登場人物(女性)からの執拗な敵意。(美人で魅力的なのをもっと他の表現で示して欲しい)
・ミステリ、推理小説としては単調。
久しぶりに怪奇ミステリを読んだ気がする。
最近はSF×ミステリが流行りな気がして、、、。
本編よりも短編『見知らぬ人』を何度も読み直した。
Posted by ブクログ
司書さんから借りた本第2段。
舞台は現代のイギリスなんだけど、見立て殺人とか古い館に出る幽霊とか、昔ながらのこてこてのイギリスっぽさがとてもツボでした。
高校で英語を教えているクレア・キャシディ、その娘のジョージ―、事件を捜査する刑事ハービンダーという3名の女性が交互に視点となって事件を語る。
それぞれに知っていること、知らないこと、隠していることがあり、偏見もあり、語り手として信用しすぎるわけにはいかない。
殊に15歳の少女・ショージ―の、親に対しての態度。
こうしておけば、とりあえず親はOKでしょ?的な言動が鋭すぎて愉快。
っていうか、クレアは教師なのに、全然ティーンエイジャーがわかってないのね。
もうジョージ―の方が一枚も二枚も上手で。
そしてハービンダー。
インド系で、同性愛者でという二重のマイノリティであるからなのか、偏見が甚だしく攻撃的で、これで刑事って勘弁してくれよと思いながら読んでいたのだけど、いつの間にかクレアと仲良くなっちゃって、頼もしいガードになってくれたからよかったよ。
でも偏見をもって捜査するのは冤罪のもとと思います。
犯人については、根拠は薄いけど最初から胡散臭いと思っていました。
ひっかかった部分については、ネタバレになるので書けないけど。
でもって、こういう犯人が一番怖いよね。
全編通してMVPは犬です。
Posted by ブクログ
おもしろいはおもしろいんだけど犯人の動機をきいてもなんかあんまり納得感が得られなかった...
クレアに惚れ込んで、近づくためにその娘と付き合うってなかなかに気持ち悪い行動なんだけど、それをされたジョージーが彼を許さなくちゃってなっているのも私の感覚したらよくわからない。許さなくていいよそんな男。
Posted by ブクログ
ホランドの見知らぬ人のどこがホラーなのか分からない?
語り部が、犯人なの?
何故、肝試しをした人と立会人が次々と死ぬの?
意味が分からない?
そして肝心の本編も3分の2位、詰まらない。
解説にも有るけど、事件の進行が遅い。我慢して読んで最後の犯人も、意外と言えば意外だけど、この結末に導くなら誰でもが犯人になれたんじゃない?
つまり、作者の胸三寸で、無理矢理に犯人を作っているような不自然さを感じてしまうんだよね。
だいたい、人を雇うのに個人情報をきちんと確認しないって、あり?
なんか、釈然としなかったな。
Posted by ブクログ
勝手に読みにくそうと先入観を抱いていたが、とても読みやすかった!事件とは関係のない描写(登場人物たちの生活や思いなど)が多かったが、それが逆に物語に深みを増していたと思う。(私の大好きなクリスマスに少女は還る、に似ている)犯人は、確かに予想もつかない人物だった。が、犯行理由や逮捕されてからの部分はあまり描かれておらず、フーダニットに重きを置いているわりに人物像が掴めなくてそこが少し残念だった。
ホランドと【見知らぬ人】というサイドストーリーも物語に雰囲気を醸し出していて良かった。最初、ホランドは実在の人物かと思って調べたら、架空の人物だった。そのくらいリアルだった。