【感想・ネタバレ】マザーズ(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

同じ保育園に子どもを預ける作家のユカ、モデルの五月、専業主婦の涼子。先の見えない育児に疲れ切り、冷めてゆく一方の夫との関係に焦燥感を抱いた母親たちは、それぞれに追い詰められてゆくが……。子どもへの愛情と憎しみに引き裂かれる自我。身も心も蝕む疲労、そして将来への深い不安――。不倫、虐待、流産などのタブーにあえて切り込み、女性性の混沌を鮮烈に描く話題作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

電車で読んでて物理的にくらくらして、あ、立ちくらみするってなって本閉じた。それくらいの凄み。

p152「セックスって全肯定だからね。全肯定って暴力だからね」
p174「そうそう、手が綺麗って言われてさ」
「うん?」
「そのコンビニの店員の女の子にさ、金払う時、手綺麗ですね、って」
「ほんとに?どんな風に言われたの?」
「うわー、って感じでほれぼれしてたよ。見る?って手出したらいやいや、って笑われたけど」
笑いながら、ほら、女の子ってみんな男の手が好きなんだよ、と言った。私は待澤と出会った十五の頃から、待澤の手が好きだと言い続けていた。
p210 毎週ジャンプを読んでいる男とか、アウトドアが好きな男とか鏡の前で筋肉を強調するポーズを取る男とか女子高生もののAVが好きな人とか、そういう男と付き合うべきだったのだと。
p400 絶望して初めて、人は起爆できる。
p526 きっと皆私の自殺を心配しているだろうと思った瞬間、私は自分の不倫が何を意味するのか、分かった気がした。皆が私の自殺を心配して連絡を取ろうとしている時、夫でない男と抱き合っている事なんだと、そういう事なんだと、そんな風に思った。
p537 例えば高熱を出している人が小説を読まないように、裸族には小説が必要ないように、少なくとも友人の子供の死を知ったあの瞬間、私には小説が必要なくなったのだ。


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2025年11月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

発売当初の自分が母親になっていない状況で読んだら、また違った感想を持ちそうだけど、母になって8年経っているとなんかもうヒリヒリするくらい3人の気持ちがわかって。
赤ちゃんから3歳までの育児って孤独も感じるし、しんどいし、ちょっとでも母親が気を抜けないというか思い詰めちゃう感じは往々にしてあり、真面目すぎる母親はきついなと思う。
だからといって、不倫していいとか虐待していいとかクスリやっていいというわけでもなく。
でも母親が発散させる場所は絶対的に必要なんだよな。
五月は弥生を亡くしたし、涼子は一弥と離れて暮らし、ユカは再婚相手との2人目の子どもを妊娠しているって不思議な結末で、でも因果応報というか、それぞれ痛みを伴ってご都合主義ではないなと思った。

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2025年09月15日

Posted by ブクログ

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すごい迫力ある作品
女性を取り巻く社会の価値観、生物としての役割の中で欲望、執着、妬み、自由などのあらゆる感情が、波のように寄せては返す

教科書に書かれているような理想の母親はいない
みな1人の人間であり女である
それぞれのキャラクターが際立っていて、部分的に自分に重なる一瞬がある

五月の子供が亡くなることは衝撃すぎたが、それ故に夫婦仲が良くなるという、運命的なサイクルが回る

男女の関係は満たされると離れ、失うと近づく
それは1対1の関係だけでなく、彼ら彼女らを取り巻くすべのものを包括している

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2025年05月10日

Posted by ブクログ

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力作だった。
女性版村上龍じゃないかな、この人。

結婚、出産を通じての女性の生きづらさ。それは他者性だろう。
結婚した男性との他者性、出産した自分の他者性、そして子供という他者性。
登場人物の3人のマザーはバックグラウンドも思想も仕事も違う。それぞれの生き方の中にその一気に来た他者との格闘に疲弊し切っていく。

キャラクターの違いもある。ユカは作家&ヤク中で嘘つきだ。涼子とのイザコザは感情と論理の対立だ。意味と論理と感情の対立。涼子の感情をユカは論理で処理しようとする。そこに言いようのないすれ違いがある。モデルで芸能人の五月は取り繕う事が上手く仮面夫婦である夫との関係に疲れ不倫に走る。経済面、生活面で困窮を抱える涼子は虐待に走ってしまう。

3人の夫は最初圧倒的な他者として描かれ、最後には包容力を持って描かれる。

安易な解決法を導かず圧倒的にマザーズの有り様を描き切った傑作と思うぜよ。

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2023年03月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

同じ保育園に子供を通わせる3人の女性の子育てや夫との関係の物語。子供を愛しながらもその存在を鬱陶しいとおもったり、泣きやまない子供を虐待してしまう母親たちがいる。
小さな子供を育てるということが地獄のように感じてしまう一瞬は誰にでもあり得る。
親に蹴られている赤ちゃんが生きて、愛情ある丁寧な朝ごはんを食べている子が死んでしまう。大切家族との関係や精神状態、状況等のほんの少しの巡り合わせの悪さで何もかも失ってしまう怖さを感じた。

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2025年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

衝撃の小説やった。
嫁さん含め、世の妊娠、子育てを経てきた人(ingの人も)はこんな思いをしていたのか、そりゃ少子化になるわ。そりゃ子供なんて欲しくないわ。俺もきっと恨まれてきたんやろなぁ…

小説としてはスゲーと思う。ただ、とんでもない現実を突き付けられた感があって「オモロかったか」と言われると、決してオモロくはなかった。俺の思ってた母性とか親子愛は自分勝手な幻想やったんやと思い知らされた気がする。

もし、これが世の女性のほとんどが感じることであるなら、子どもなんて産まなくて良いし、日本なんて滅んでしもたらエエねん。

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2019年03月31日

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