【感想・ネタバレ】藤井聡太論 将棋の未来のレビュー

あらすじ

「天才は天才を知る」。レジェンドが迫る巨大な才能の秘密。
AIの登場以降、大きく変貌する将棋界。そこに現れた若き天才・藤井聡太。
14歳2ヵ月・史上最年少のプロデビュー後、衝撃の29連勝から始まり、史上最年少でのタイトル獲得など、次々と記録を塗り替えていく彼のすごさとは? 人間はどこまで強くなるのか?
その謎を、史上最年少名人位獲得の記録を持つレジェンドが、自らの経験を交えながら、さまざまな角度から解き明かすとともに、多士済々の頭脳集団が切磋琢磨し、進化しつづける将棋の魅力を伝える。

第一章 進化する藤井将棋
ケタ外れの「頭の体力」・棋士も経験する「ゾーン」状態・時間配分をコントロールする etc.

第二章 最強棋士の風景
谷川・羽生の両方を持っている・トップ棋士の研究量・シビアな勝負師に徹して etc.

第三章 不動のメンタル
負けん気と平常心の両立・記録ではなく、強くなること・最年少名人記録は破られるか etc.

第四章 「将棋の神様」の加護
羽生世代が起こした序盤革命・苦手意識をどう克服するか・恐ろしいほどの強運 etc.

第五章 「面白い将棋」の秘密
勝った相手に楽をさせない・将棋は学業にも役に立つ・盤面をイメージせず読む・強さの源泉は詰将棋にあり etc.

第六章 AI革命を生きる棋士
人間と異なる形勢判断・強さとAIは関係ない・自分で考えなければ強くなれない・一局で一手研究が進む時代・五十代の戦い方 etc.

第七章 混沌の令和将棋
堅さよりもバランス重視・トップ棋士に求められる受けの力・美学に反した手を見直す etc.

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 藤井聡太の存在を抜きにして、現在の将棋を語ることはできない。谷川浩司九段が藤井聡太四冠の魅力について語った書です。「藤井聡太論 将棋の未来」、2021.5発行。1935年の実力名人戦開始以来、80数年間にタイトルを獲得した棋士は50人に満たない。タイトル獲得は棋士の夢。平成の羽生、令和の藤井。羽生の手が震えた時、藤井聡太の前後の身体の動きが止まった時、対戦相手は観念しなけければならないw。羽生との違いはライバルの有無。藤井将棋の魅力は、圧倒的な強さに加え、将棋自体が面白く、華と新鮮味に溢れていること。
 2016年10月に14歳2ヶ月でプロ棋士に。いきなり29連勝。デビュー以来、想像を絶する勝率。ただ、今の棋士はたとえ八冠を制覇してもそれより強いAIがいる。謙虚にならざるをえない。藤井四冠は、人間とAIの関係を、対決から共存という言葉で語っている。

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2022年01月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 藤井聡太さんが強いとか、勝率が高いとか、詰将棋が得意とかそういう話はもう周知の事実ですが、その中で谷川九段がどんな内容の本を書かれるのか興味がありました。
 一部の内容はWebで先に読んでいたものもありましたが文章がわかりやすく読みやすかったです。

 将棋の世界にはAIが早くから導入されプロ棋士の多くが現在研究のために利用されていますが、強い棋士がAIだけによるものかというとそうではないと考えられている点がとても興味深い点です。確かに対局が終わった後、棋譜をAIにかけて評価値の上限を確認し、いい手だったか悪い手だったか、またその後の流れはどのようなものが考えられたか、研究を助けるものにはなりますが、それがわかったからと言って次回の棋戦で必ず勝てるということはないわけです。

 藤井聡太さん自身、またトップ棋士である渡辺明名人も藤井聡太さんの強さはAIだけによるものではなく、もともと中盤・終盤が異常に強いというところに依るものであると考えているようです。

 勝率が6割を超えれば優秀と言われる将棋界においてなぜ8割超えの勝率を4年間も続けられるのか、誰もがその理由をわかりかねているようです。

 普段の将棋への取り組みという点で言うと、とにかく将棋への集中力が並はずれており、木村王位とのタイトル戦でのエピソードがそれを示しています。封じ手の時間を18時に告げられてから18時19分まで考え続け、飛車の成り捨てで封じました。タイトル戦において、これだけ重要な手を対局室に人が入ってくる落ち着きのない時間帯において考え決定した集中力は並外れたものであることは間違いありません。

 先日棋聖戦の防衛戦、渡辺明名人との第1局を勝利し、今日も順位戦B級1組を屋敷九段と戦っていますが、対局姿勢はどこも変わらず盤面に集中し続けています。

 忙しいとか、季節によって調子が変わるとか、疲労が出るのではとか、プレッシャーがあるのではと言っているのは、あくまで周りの人間であり藤井聡太さん本人からはそのようなものへの迷いは一切感じません。

 この本のよかったところは谷川九段の、偏りのない藤井聡太さんに対する分析がなされているところと、令和の時代にあっても将棋に対する取り組み方や礼儀作法を重視する姿勢が通底しているところです。ただ将棋が強ければいい、そんな思いは一切感じません。なかなか若手に対して厳しいアドバイスをする人も少ない世の中において都度若手に向けてメッセージを発する谷川さんの姿勢は素晴らしいと感じます。

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2021年06月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

天才は天才を知る。
では、規格外の超天才が現れたら?
その超天才の一人が、藤井聡太である。
戦後の新聞将棋掲載普及によって、棋士たちのキャラ立ちも明確になり、読者を二分する様な好敵手が出現した。古くは、大山康晴と升田幸三、中原誠と米長邦雄、谷川浩司と羽生善治など…
そして、タイトル全冠制覇者は、時代によってタイトル数も違うが、升田幸三(全三冠)、大山康晴(全三冠、全四冠、全五冠は4回)、羽生善治(全七冠)、藤井聡太(全八冠)のみ。この4人は、規格外の超天才と言っていいでしょう。
もちろん著者の「光速の寄せ」谷川浩司も中原時代に終止符を打った天才棋士です。
本書は、天才が超天才を論じたもの。
以下は、私の備忘録。
・渡辺明の藤井聡太評「谷川浩司と羽生善治のいいところを両方持っている」
・谷川浩司の自宅研究会メンバー。菅井竜也、斎藤慎太郎、都成竜馬、福間香奈
・藤井聡太「以前は駒の損得が重要だったのが、最近では駒の損得よりも駒の利きなど局面に応じた駒の価値の方が上に見られている」
・藤井聡太の強さはAIとは無関係
羽生「AIは他の棋士も使っていますから」
渡辺「将棋は最終盤の力が大きい。彼は中終盤の力で勝っているわけですから」
・AIのおかげで絶滅戦法が復活
雁木、土居矢倉、エルモ囲い(大山康晴vs中原誠戦で類型登場)

本書が書かれた2021年4月、藤井聡太の二冠獲得直後でした。巻末で、当時のタイトル序列が記されています。
1位は渡辺明(名人、棋王、王将)、2位は豊島将之(竜王、叡王)、3位が藤井聡太(王位、棋聖)、4位が永瀬王座。
その後、藤井聡太がストレートで8冠達成するとは、やはり怪物です。野球の大谷翔平、ボクシングの井上尚弥と並ぶ現役大スターですね。

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2025年05月08日

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