あらすじ
14歳の兄は、それでもこの世界をあきらめなかった
裏山で見つかった、9歳の少女の惨殺体。“犯人”は、まだ13歳のぼくの弟だった。絶望と痛みの先に、少年が辿りつく真実とは――。
※この電子書籍は2001年12月に文藝春秋より刊行された文春文庫の新装版です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
中学生の時に出会ってから、どんな状況においても「一般論」や「世間の声」にかき消される立場があるということを強く意識させられる契機となった本。
自らを刺し抜いてくるような言葉が聴こえても、真実を明らかにするために事件と対峙する少年の強さは当時の私にはとても眩しく写った。
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新装版になって久々に読み返した。
僕の記憶が確かならば、石田さん作品で一番最初に読んだのが、うつくしい子どもだったと思う。
その衝撃と感動は今でも鮮明に覚えていて、あっという間に他の作品も買い漁った。
改めて読み直してみると、本当に素晴らしい作品だなということを再認識させられる。
今の季節(5~6月)と新装版が刊行された季節が見事にリンクしていて、「やられた!」と思った。
僕の石田さん作品の原点。これからも愛読していきたい。
Posted by ブクログ
まず、文章に出てくる言葉遣いが素敵だと思った。空とか森とか空気とかを何かに喩えたり言い回しとかが。
内容はとても読みやすかった。動機を探るって一点で進んでいってたから読みやすかったのかな。
自分がこの立場ならこうするとか考えちゃう本だった、主人公大人すぎるまじで。
弟が思ったより傷深い感じだったけど、兄は多分一生友達的な人ができて安心した。
最後のハーレム的な書き方がおもしろくて、こちらも気持ちが軽くなりましたとさ。
Posted by ブクログ
実際の事件をもとにしたといっても、小説は小説。
リアリティを求めすぎず、私はこの展開で良いのではと感じた。
加害者の兄弟には罪はない。
突然『加害者家族』とされ、本人には落ち度がないのに周囲から晒され疎まれ、迫害される生活に落とされる地獄。
それが中学生と小学生に訪れることが恐ろしかった。
でも覚悟を決めて自分に出来ることを頑張る幹生くんがカッコ良くて感動した
Posted by ブクログ
僕の弟が、ある日突然、小学生女児の殺人犯として
逮捕された。
なぜ、弟は殺したのか、
事件を追ううちに
だんだんと
真実が浮き上がってくる。
最後はリアリティないかな
と思いながら
中学生視点としては
こんな感じかなぁとも思った。
ドラマ化にできそうな内容の本だった。
Posted by ブクログ
すぐに
╍1997年 神戸市連続児童殺害事件╍
(酒鬼薔薇事件)を題材にして書かれた小説だとわかりました
そして 犯罪者家族の立場『少年Aの兄』の視点で書かれています
忘れてならないのは
加害者にも被害者にも家族がいるということ
そして少年Aの兄妹は なんの罪も犯していないのに
社会の厳しい視線に晒され続け、ある意味 "被害者" でもあるということ…
一歳違いの兄が、弟に寄り添うために…ひとりぼっちにさせないために…罪を犯した弟の気持ちを理解したいと、覚悟を持って調査を始める。そんな ひたむきな決意に何度も何度も胸が締め付けられました
被害者の少女の墓前に、毎日花を手向けに行く兄
世間の厳しい目から逃げず 受け入れようとする兄
╍弟を海に投げ捨てるわけにはいかない╍
と 弟と一緒に灰色の海を漕ぎ続けようと強く心に思う兄
「少年法」とか、なかなか難しい問題が浮き彫りにされますが、これは本当に簡単な問題ではないから、そこについては何も言えませんが …
これは小説。
この小説の中の加害者の家族に対しては守られてほしいと思いました。
Posted by ブクログ
弟を知るための理由が、スーパー大人だった。今から20年前の作品でも色褪せず、読み終わるまで最近の作品かと思っていた。語りや思考が中2には思えなかった点がなかなか物語に入れなかったかなと。
解説に五十嵐律人さんを招かれて読みたくて購入。石田衣良さんの作品は初めて。
Posted by ブクログ
中学2年のジャガことミキオには、CMタレントで小学生の妹ミズハと、引きこもりで中学生のカズシがいる。そんな中、ミズハの同級生の女の子が山の中で殺され、そこには「夜の王子」というメッセージが残されていた…。
ジュブナイルチックな設定に、子供視点では柔らかめの表現ではあるものの、序盤からハードな展開になるため、子供向けとは言い難いストーリーである。
「ぼく」という一人称視点のミキオのストーリーと、三人称視点の新聞記者の山崎のストーリーを交互に進めていくのだが、途中でほぼミキオの話だけになる。山崎に何かをやらせたかったのだろうが、少々そのあたりは企画倒れであったか。
ミキオの周辺は、弟に妹だけでなく、友人も少々クセが強めで、石田衣良らしいといえばらしい。それでも、相変わらず石田衣良らしく、キャラクターが薄い。本作においては、冷たく硬いキャラクターで描かれる、すこし不気味な子どもたちの世界という意味では良かった。
後半に向けて、(ミキオだけになっていくものの)話のスピード感は上がっていくのだが、なんでかなあ、「この後どんどんひどくなっていったのだ」みたいな、思わせぶりな表現によって、ストーリーの盛り上がりの腰を折っているように感じざるを得ない部分が見られた。これで☆1つ減点。前にも石田衣良作品でこんなこと書かなかったっけ?
全体には、宮部みゆきを思い出させるような、ねっとりした嫌な気分がスリリングで、よくできた小説だと思う。
Posted by ブクログ
ジャガというあだ名を付けられたボク。弟はハンサムで妹は可愛くて母の愛情は弟にそして妹に。
静かに生きているお兄ちゃんは事件にも静かにそして深く対応していく。
「うつくしい子ども」ってどんな子だろう。
今、私は「うつくしいおとな」になっているだろうか……
Posted by ブクログ
石田衣良さんは池袋ウェストゲートパークシリーズが好きで読んでます。状況描写や風景描写がすごくわかりやすく美しいなと感じます。現実の世界でも時々日本中に衝撃を与える少年犯罪がテーマで、まさに加害者の家族達は作中のようなのだろうかとリアル感がありました。
Posted by ブクログ
そんな時、裏山で女子小学生が殺された。閑静だった住宅街が、突如不穏な雰囲気になった。そして逮捕されたのは、自分の弟だった。なぜ弟は、そんな犯行に及んだのか?調べていくうちに意外な人物が浮上する。いじめや加熱する報道に耐えながらも、同級生ととともに学校生活を送っていく。
もしも、身内が殺人者だった場合。その心境は想像を絶するかもしれません。なぜ?どうしてこんなことになったのか?苦境に立ちながらも、主人公が懸命に闘っている姿にこの先も頑張ってほしいと応援したくなりました。
物語は、加害者の兄(中学生)と新聞記者の2つの視点で進行します。加害者側となる家族は、顔にコンプレックスを持つ兄「主人公」と芸能活動する妹、根暗な真ん中の弟の5人家族です。その家族が、一瞬にして悲劇へと転落していきます。
加害者の関係者側から見た視点は、あまり他の作品でも見ないのですが、ある意味では被害者とも解釈できます。
マスコミや学校などあらゆる攻撃が、家族に襲いかかりますが、その描写は凄まじく、それに耐え抜く兄の心の強さといったら、中学生?と思えるくらい、強かったです。
また、兄と仲の良い同級生も心が強く、圧倒されました。
中盤までは、事件発生後の兄の学校生活が多く書かれています。PTAからの反発、学校のいじめといったシリアスな部分はあるものの、仲間との友情、真っ直ぐな気持ちといった爽やかさが相まって、そんなに重々しい気持ちにはなりませんでした。
むしろ、青春小説としても、読めた部分もありました。兄が好きな植物の知識も披露し、和ませる部分もあったので、マイルドな気持ちになれました。
また、新聞記者の視点では、報道に対しての苛立ちや記者としてのモヤモヤ感も書かれています。
報道って、何でこんなに土足で越えていくんだろう?と思うくらい、雑に取り扱っていることに憤りを感じましたが、これが現実でもあり、「普通」なのかなと思いました。
第三者から見たら、事件の詳細を知りたい欲望がありますし、怒りを感じるかもしれません。
でも、それは犯人だけです。その関係者には、何の罪もないですし、罰する必要はありません。
そういった気持ちをどう抑えればいいのか、一人一人が考えなければいけないなと思いました。
後半では、兄やその仲間に浴びせられたいじめの真相が明らかになります。それだけでなく、昔の自殺や今回の殺人事件には黒幕がいたことを発見します。
それまでとは違い、スピードが加速する感覚でしたし、ずっと兄の視点になっていくので、より一層世界に引き込まれました。特に新たなる黒幕にはゾッとしてしまいました。
その背景には、子供が取り巻く環境に影響するのかなと思いました。何が良くて、何が悪いのか。なかなか10何年という期間では、判断しづらい部分もあります。自分で抱え込むのではなく、周りも協力することが大切だと感じました。
これから先、兄が前向きにさらに弟と真っ正面と付き合っていくことに心の強さが伺えました。
Posted by ブクログ
神戸市連続児童殺人事件(酒鬼薔薇事件)の2年後に刊行された本作は、あの事件を別の角度から見ることはできないだろうか?という思いで書き上げられたそうで、主人公の少年は9歳の女の子を殺した少年の兄に当たる。
モデルとなった事件こそ、日本の少年法が厳罰化の一途を辿るようになるきっかけとなった事件なのだから、事件当時からしばらくの衝撃は計り知れなかっただろうし、そのような中で、加害者家族の立場から事件を描き、警鐘を鳴らすというのは想像する以上に勇気のいることだったと思われた。
それを押し付けがましくもなく、また涙を誘うのでもなくある種淡々と描く本作は考えさせられるものが多かった。Netflixでアドレセンスを観たあとだとさらに思うことも多いかと…
また個人的には、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』の印象が強く、抒情的なものが少ないライトな作品を描かれるのではという勝手な先見があったため、繊細な表現と硬質な筆致、取材の確かさが伝わる丁寧な構成という絶妙なバランスに、存在感を覚えずにはいられなかった。
Posted by ブクログ
衝撃的な「酒鬼薔薇事件」を下敷きに書かれた小説。
事件を起した子の兄の視点から、その家族の悲しみ苦しみ悩む姿も描いている。
そう、加害者にも被害者にも家族が居るのだ、ということを教えてくれる。
この14歳兄の成長が好感度だ。力になってくれた新聞記者の言葉
「大人になること。正しさの基準を外側にではなく、自分自身を中心に据えること。」
押しつぶされそうな事実をも勇気を持って見つめられたらすばらしい。つらいだろうけどそれでも、若いということは…最後の文章にほっとする。
「この幸せがあと永遠の半分は続くってことを。」
ああ、「永遠」があった日々を思い出してしまった。いいなー、瑞々しいってのは。事実そのものは決して明るくないのだけれど、希望もあるではないかと言えるから。