あらすじ
時は大正12年。
吉良と一緒に陸軍幼年学校での勤務が始まった朔。
昼は一職員として、夜は義弟として吉良と一緒に暮らす朔は、
その役割に混乱しつつも並んで立てることに幸せを感じていた。
そんな時、吉良に異動の話が持ち上がり――?
激動の大正時代に「自分」を求めた人々の想いと生き方とは――。
少女になりたかった少年の終わりと始まりが明かされる最終巻。
〈単行本限定〉
・緒方軍医のことがもっとわかる!
軍事法規研究会さまの書きおろしコラム「医務室と看護長」も掲載!!
・豪華カラーイラスト7ページ掲載!
【目次】
Episode-8 グノシエンヌ
Episode-9 リーベストラウム
Episode-10 ジムノペディ
Episode-11 クレールドルナ
カラーイラストギャラリー
感情タグBEST3
月夜に完成する 旋律
何年たっても成長が止まった美少年のように浮世離れした美しさを放ち続ける緒方軍医。その「止まった時間」は小節線のないサティの『グノシエンヌ』の旋律そのものだ。
懸想相手であり義兄の吉良は 緒方にとって「太陽」だった、「女にはなれない体 不完全なこの男の体をいっそ焼き尽くしてはくれないだろうか。」
1923年 関東大震災 緒方は姉を亡くす 家が『2人の家』になる
シベリアへ発つ直前、吉良は短刀を自身の懐からだし「朔、貴様の手で消えない証をつけて欲しい」と乞う。腹部に刻まれたその傷を、極寒の地でいとおし気に撫でる吉良。この場面を彩る『リーベストラウム(愛の夢)』は。、墓の前で後悔せぬよう「愛しうる限り愛せ」と説く。肉体を超えた自己犠牲の祈りが、血の通った「証」として二人の魂を一つに繋いだ。
吉良少佐はシベリアで、売春を行っている少女との出会い、彼女に過去の自分を重ねる回想シーン、静謐なる『ジムノペディ』が流れるなか、吉良は異郷の地に散ることなる。 緒方はそれを母国で電報という形で受け取った。
「男性の体」という枷を解き放つ。おしろいを叩き、紅をひき、吉良の香水を纏う。姉が仕立ててくれたワンピースに身を包み、胸元のリボンに口付けを落とす。高いヒールを履き、姿勢を正す。彼の中に蘇ったのは、ずっと求めていた「少女でいられた頃」の全能感だった。
「あなたは女性だから。女性にしか見えません」
精神と肉体が一つになる、彼はようやく自分自身になれた。「吉良さん、この僕でまた逢ってくれますか」
『クレール・ド・ルナ(月光)』の冷たくも美しい光に包まれ、月へと堂々と歩みを進める後ろ姿。
ページをめくると『完』の文字 すべての音が止まった瞬間、不完全だった 緒方 朔 の人生は美しい「完成」をみた。
contentsとして楽曲名を使っている、1巻のepisode‐0から始まり3巻までで11曲 作品の背景に曲の背景を合わせて(意味、聴く)楽しんだ
BLのくくりになっているが 私のイメージするBLとは全く異なる。史学、文学、社会学の方がしっくりくる 内容がとても濃く読み返すたびに新しい知識、感情が得られる。
何度も読み返している、大好きな、素晴らし作品だ。