あらすじ
老舗・桜山ホテルで、憧れのアフタヌーンティーチームへ異動した涼音。夢にまで見た職場で初めて提出した企画書は、シェフ・パティシエの達也に却下される。
悩む涼音だが、お客様、先輩、そして達也の隠れた努力を垣間見ることで、自分なりの「最高のアフタヌーンティー」企画を練り直し……。
頑張りたい。だからこれは、自分への最高のご褒美!
「マカン・マラン」シリーズが大ヒット
心に染みると評判の著者待望の新作!
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
やっぱり古内一絵さんの本が好き。
前向きに頑張っている事を白い目で見られたり、陰口叩かれたり、出し抜かれたり。でもお爺ちゃんの「だったら、それで、いいじゃないか」が温かくて心にしみました。色んな感情に押しつぶされそうにもなるけど、美しい面を見られる人に私もなりたい。
Posted by ブクログ
アフタヌーンティーって貴族の楽しみだって言うイメージがあった。
でもこの本読んでいきたくなった。
自分の生活に幸福を与えてくれる時間を提供する。すごい素敵な空間だと思った。
アフタヌーンティーの話だけじゃなくて、ホテルスタッフの皆さんの人生の話も満載。
アフタヌーンティーを提供することに対する情熱とか仕事の取り組み方とかそういうエネルギーもビシビシ伝わってすごい元気もらった。
カフェ好きお仕事小説好きの私にとってドンピシャでした。読めてよかった。達也シェフかっこよかった。
Posted by ブクログ
念願のアフタヌーンティーチームに配属になった涼音。真っ直ぐに目標に向かって頑張れるのはとても凄いことだと思う。ただ頑張りすぎて空回りしてしまうことも。
祖父の言葉「お菓子はご褒美」
そんな風に考えてお菓子を食べていなかったけど、ご褒美と考えるとアフタヌーンティーはまさにピッタリだと思った。友人と行こうという話はしているので、まさに日頃頑張った最高のご褒美になることでしょう(*ˊ˘ˋ*)笑
とりあえず桜山ホテルのアフタヌーンティーに行きたくなりました。出てくるスイーツがどれも美味しそうで、、とりあえず紅茶飲んできます( ᴗˬᴗ)笑
涼音と達也がこれからどうなるのかも気になる!
Posted by ブクログ
アフタヌーンティーをテーマにした素敵な物語!
デザートって高貴な者なんだなー、と、
アフタヌーンティーの起源を少し垣間見て感じる。
ホテルのアフタヌーンティーのセットの裏側、これは物語だけれども…
企画する側と、シェフ長がいて、
その他のスタッフもいて、
いろいろな人間関係ややり取りがあって、
季節ごとのメニューが決まっている、という側面は、
もちろんアフタヌーンティーだけの話ではないのだろうと思いつつ…
…
主人公遠山涼音29歳は、入社7年目で、ついに希望していたアフタヌーンティーの企画を担当できる部署に配属になり、そこでの試行錯誤がこのストーリーのメインになる。
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お菓子
甘いお菓子に並々ならぬ思いを寄せていた涼音の祖父ー
「お菓子はな、ご褒美なんだ。だから、だらしない気持ちで食べてたら、もったいない」
受け取る側も誇りを持たなければならないのだ、と祖父は語った。
私の日常では、完全にだらだらと食べるものになってしまっているお菓子!
この機に高貴さをもう少し取り戻したいところです。
涼音の話していた、19世紀のイギリスのヴィクトリア時代に一人の貴婦人の空腹から始まったアフタヌーンティーの起源にまつわるお話は、とてもロマンがありました。
食事は一日二回で、コルセットをつけている女性は気軽に間食も許されない。そこで貴婦人アンナ・マリアは、自身の寝室に紅茶とお菓子をこっそり持ち込み、一人ティータイムを開始した。コルセットを外し、甘いお菓子を堪能する幸福を友人にも分かち合いたいと思い、親友たちを招いて秘密のお茶会を催すことに。これが広まり、華やかさを増して、会場も寝室からサロンへと、そして最終的にはイギリスと伝統的な社交の場へと発展した。
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女性と仕事と
涼音は先輩スタッフが産休に入る代替として、アフタヌーンティー開発のリードを務めることになったという経緯がありました。
いろいろな情報に触れる中で、現実の様々な側面を意識し始める。
_会社から一歩外に出ると、自分は高齢出産者でしかないと香織は言った。一方、結婚や出産などどこ吹く風と、仕事に邁進してきた女性たちは、職場を失ったら、いったいどこに道を見つければいいのだろう。
_アフタヌーンティー開発に夢中になるあまり、婚期を逃し、産期を逸し、最終的にはラウンジを追い出されて、にっちもさっちもいかなくなっている将来の自分の姿が浮かび、涼音はお本気で怖ろしくなる。
経営陣にはオジサンばかり、役員には初老男性ばかり。キャリア女性たちはどこへ消えたのか、という話はとてもリアル。
「本当に実力のある人は自分で起業して、今もきらっきらのぎらぎらぎんだそうです」
「そうじゃない人は?」
「母曰く、怖くて連絡取れないそうです」
…
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人の様々な側面
_都合の良い面を見ることと、物ごとの美しい面を見ることは、きっと違う。香織が自分にとって良い先輩で、彗怜が頼りになる仕事仲間だったこともまた、れっきとした真実だ。
知りたくなかった情報に触れたりしたときに、これまで信じていた他者の人物像や物ごとへの見方が崩れてしまったときにどう解釈するか、って本当に難しい。
たとえ噂であっても影響を受けてしまう私たち。でもこうして読みながらも、とくに人間には、ひとつの固定した偏見を持たないように気を付けたいと思ったりした。受け入れがたい側面もあったとしても、でも大抵はそれだけがその人を作っているわけではない。情報だけではなくて、生の感覚とか、自分にとって、というところに自覚的に、自立的に、物事へのとらえ方を捉えられるようにすることは大事だなーと思った。
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過去へのしがらみ
_「自分に照れてる暇なんで、どこにもない」…「偏見を持っているのは、僕自身だったのかもしれないー」…今後、自分がどうするのはまだわからない。ただ、この先に進むためには、目をそらせ続けてきたものと、一度きちんと向き合う必要があるだろう。大事なのは、傍から見たときの”普通”か否かにこだわることではなく、己にとってなにが一番大切かを見極め、それを選び取るための覚悟を引き受けていくことだ。そう。もう自分も、いつまでも自身に臆しているわけにはいかない。
達也は中年でシェフとして活躍しながらも、自分の中に押さえ込んできた本来やりたいと思っていること、それを抱えているときのもやもやがストーリーの中で表現されていて、それがほぐされていく過程っていうのは、だれもが待ち望んでいることなのかもしれない。でももちろん自分で覚悟しないとほぐされるものではないということも自分では分かっているつもりなのに!!!行動に移せないってことは分かっていないってこと?
留学する、海外に出る勇気、というのはよくドラマとかでもあるストーリーなのかもしれませんが、そう、それだけじゃない、勇気を出して本来取り組みたいことに気づく、確信する、そして覚悟する、というプロセスは、どうやって回り始めるのだろうか。達也の場合、過去にシェフの巨匠のような人からもらった言葉がずっと胸に残っていて、その響きと自分の心のうちの声との共鳴に耳を傾けられたから、かなー。人の声を聞きながら、結局自分の声を聞く、そのためにはまず心を研ぎ澄ませておくことがとても大事なんだろうと思う。