あらすじ
恋愛や生殖を強制する世間になじめず、ネットで見つけた夫と性行為なしの婚姻生活を送る34歳の奈月。夫とともに田舎の親戚の家を訪れた彼女は、いとこの由宇に再会する。小学生の頃、自らを魔法少女と宇宙人だと信じていた二人は秘密の恋人同士だった。だが大人になった由宇は「地球星人」の常識に洗脳されかけていて……。芥川賞受賞作『コンビニ人間』を超える驚愕をもたらす衝撃的傑作。(解説・小林エリカ)
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Posted by ブクログ
主人公の奈月が、同作者のコンビニ人間の主人公と同じく、超合理的で論理的な考え方をしているから、その思想に納得ができてしまって、段々と地球星人の方が気持ち悪く見えてくる。
主人公サイドからは我々地球星人が狂っているように見えて、地球星人サイドからは主人公サイドが狂っているように見える。我々読者サイドからは、どちらのサイドも等しく狂っているように見える。ともすれば、登場人物は全員一般人とも言えるのだろうか??考えれば考えるほどオモシロイ。
やっぱり村田沙耶香大好きだ。
Posted by ブクログ
村田沙耶香作品5作目。
タイトルを見て、地球人ではない主体からの視点の物語か?と妄想しながらスタート。初めは子供のファンタジー的なストーリーになかなか入り込めなかったが、あの事件の後からはスルスルと読み入ってしまった。お腹が大きくなるという結末に直ぐに飢餓が結び付かず、突然のファンタジー?と思ってしまったのだけど、よくよく考えて飢餓によるものだと分かる。異星人を選んだ彼らの行く末が絶望的過ぎたのだけど、果たしてそう思うのは自分が地球星人だから?
村田沙耶香さんの作品を幾つか読んで、SFタイプと写実タイプがあるように思う。SFの中にメタファーを見出す手法では新たな気付きがあるし、リアリズムを描くコンビニ人間では生きづらさを抱える人に対して理解をしたいという気持ちが芽生える。しかし、この作品は写実タイプであるが故に社会不適合者の極地には絶望しかないことを突きつけられた気がした。ただ、村田さんは絶望を伝えたいわけではなく更にその先の何かを見てほしいのかもしれないけれど、今の自分にはここまでだった。
Posted by ブクログ
重かった……非常に重い……。
でも読んだことを後悔はしてない。村田の小説はいつも社会の「あたりまえ」に無垢な疑問を投げかけて、読み手に新しい視点をくれる。
自分の中で言語化できていなかった疑問や違和感に、村田はいつも言葉で応えてくれる。その形はちょっと刺激的ではあるけれども。
主人公の奈月の、少女期に置かれている環境が過酷で辛い。
病気がち(?)な姉に依存する母の母子カプセルから放り出されて、言葉と暴力の両方の虐待に晒されながら、自己防衛のため唯々諾々と思考停止してる子供を狙って手を出す塾講師に性的虐待まで受けている、その闇。果ては、その辛い経験を同性に打ち明けた時、地球星人に洗脳された彼女たちからは「お前が誘った」「見初められて羨ましい」と酷いセカンドレイプを受ける始末。
そんな過去があるから、34歳になって夫ができても性的な関わりには潔癖で、夫婦関係に過干渉な社会に対して「自分の生殖器は世界のもので、自分のものではない」と感じている奈月。
描かれ方は露悪的だけど、現実を誇張しているに過ぎないと思う。
親の虐待も、小児性愛による歪んだ性的虐待も、日常茶飯事で起こっている。守られるべき人が守られず、「普通の大人」は「異常を無視するのが仕事」。
それに事実として、小さなレベルでこういう「パートナーの有無についての探り」「生殖に関係する行為の探り」は当たり前に、現実で、身近に、起こっている。
もしも奈月が、両親から正しい愛情を注がれて、周囲にも常識的な大人だけがいて、もちろん性被害にも遭わずに大切に社会に守られ、環境に恵まれて育っていたらまた違ったのか。
地球星人に洗脳された人間は、むしろそういう環境下で育っているのかもしれない。
幼少期に、家族との確執や、性的虐待といったような癒えない傷を負った生物は、ポハピピンポボピア星人に感染するポテンシャルが高いのかもしれない。
村田の小説にシンクロしやすいのは、私自身もそういう闇の一部を掌に抱えて生きているからかもしれない。
奈月とは違って、半分は地球星人の洗脳に上手くかかっているものだから、ここまで極端にはなれないけれど。
Posted by ブクログ
読み終えて。
裸族で生活をし、後半の後半は人肉を食べ生きながらえる。なんともすごい作品だなぁ。沙耶香節の効いた1冊でした。最後は男が妊娠で終わりなんてそんなラストあり?と思って考察を読んだり同じ疑問を持った知恵袋を見てしっくりきました。重度の栄養失調になると下腹がポヨンっと出るらしい。それを妊娠と勘違いするなんて。でもこれを読んで親の育て方、生きる環境で誰もが宇宙人になり得ると思うとまた読もうかなぁ…悩むなぁと思う1冊
Posted by ブクログ
村田沙耶香ワールド炸裂!
世界99から村田沙耶香デビューを果たした初心者ですが、やはり村田沙耶香さんにはこの世界は”人間工場”に見えているのでしょうか。
主人公の奈月はポハピピンポボピア星人の魔法少女で、地球星人に擬態して生活している。
これはただの女児の妄想だと思うだろう。実際このような妄想をしたことがある人も多いだろう。
しかし、彼女にとってこれは妄想ではなく現実なのである。その証拠に彼女は折り紙で作った魔法のステッキと変身コンパクトを持っている。
この作品はこの前提が常にある状態で話が進んでいくため、現実と魔法の奇妙な融合世界が実に村田沙耶香らしいと感じさせられる。
性犯罪も、殺人も、友情結婚も、カニバリズムも、すべては自分はポハピピンポボピア星人であるというアイデンティティに基づいて肯定されている。
いつか奈月も由宇も智臣も宇宙船に乗って自分の星へ帰らなければならない。
信じて疑わない奈月、奈月の世界観に陶酔する智臣、妄想であると気づいてしまった(奈月たちに言わせれば洗脳されてしまった)由宇。
この三人は地球星人の工場で息を潜めている。
そしてラスト。ここの感想は三者三様で私もよく理解できていない部分なのであるが、私は洗脳による事件を連想してしまった。奈月のカリスマ性(奈月自身は洗脳して自分の世界に二人を引きずり込んでやろうという意図があったわけではないためこの言葉は少しニュアンスが違うと思われるが)に智臣と由宇は洗脳され、自分たちだけが人間工場から解放された人間だと信じるようになる。彼らの中では、盗みも、裸体も、殺人も、何があっても生きのびるために合理的な手段として採用される。はたから見れば異常者の集まりだが、彼らはこれが幸せであった。特に奈月は両親から肯定されず、性被害に遭っても助けてもらえず、味覚は失い、現実逃避のために妄想で自分を守るしかなかった。そんな幼少期を過ごしたからこそ、ポハピピンポボピア星人の妄想は防衛本能であり、大人になっても強い指針として彼女の中に存在している。そんな奈月を肯定してくれる人がこの世に二人いるのなら、奈月にとってそこ秋級は楽園だったのかもしれない。そういう意味ではハッピーエンドともとれるラストなのではないかと捉えた。
誰が悪いのかと議論を始めれば全員が悪いと言えるが、
伊賀崎先生だけは絶対許されないし、当然の報いだとすら思ってしまいました。