【感想・ネタバレ】やわらかな足で人魚はのレビュー

あらすじ

一体どうしたら自分は人間になれるのだろう。
当たり前に愛される人間の子供に。

タワマンを舞台に電話詐欺の嘘によって結びつく偽物の母と息子。
“前科”のある中学教師と孤独な少女。
悲しみを抱えた二人が出会うとき、世界は色を変える。
『昨日壊れはじめた世界で』が話題沸騰のオール讀物新人賞作家の、痛々しいほど危うく美しい傑作短編集。

四六時中わけもなく淋しくて、悲しくて、心許ない。
まるで私たちの足元にはちゃんとした地面がないかのようだ。──「水に立つ人」

人魚姫が王子を刺せなかったなんて、やっぱりウソだ。いつの間に引っ張り出したのか、赤い万能ナイフは陽の手の中にあった──「やわらかな足で人魚は」

この短編集の五人の主人公たちは、皆、「どこにでもいるけれども、悲しみを抱えているとは傍目に分からない人たち」だ。
香月夕花の描く世界は、どこまでも儚く、残酷で、美しい。
満場一致でオール讀物新人賞を受賞したデビュー作「水に立つ人」と同名の短編集を改題し、「逃げていく緑の男」を追加して再構成。

解説:川本三郎

※この電子書籍は2016年10月に文藝春秋より刊行された単行本『水に立つ人』の文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

短編集だけど、どれも寂しかったり悲しかったり。
ここ最近自分が穏やかに過ごせているので、あまりいい気分ではなかったかな。解説で他者の悲しみを知ることが時に大きな重荷になるという話があったけど、それだったな。

0
2025年09月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他人に触れてほしくない心の暗い部分を描いた内容が多く、個人的には読んでいて苦しかった。
特に「水風船が壊れる朝に」は、何の苦労もなく生きてきたように見える天海に対し、深く傷ついている澪の八つ当たりのようなシーンは読んでいて澪の気持ちも天海の気持ちも考えるととても苦しかった。
「水に立つ人」も、アルバムを置いていなくなった葛城の死を認めることができず、一瞬葛城の幻を見る。やっと本当に他者を愛することができるとわかった矢先のことで、主人公の気持ちを想像すると本当に辛いと思った。あまりに幻を見るシーンがリアルなので、小説によくあるあり得ない展開なのか、と思ったがそうはならないあたり、現実味を感じられてより一層苦しくなった。
どの作品にも雨が降るシーンが描かれており、登場人物の心を表しているようであり、また「人魚姫」のような切なく苦しい気持ちが表題作以外にも通じて表れていたように思う(原作の人魚姫は確かにあまりハッピーエンドではなかったな、とも思い出した)。
正直、読んでいて苦しい気持ちになるので読み返せる自信がないが、このような気持ちにさせる作品はそうそうないと思う。

0
2022年08月14日

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