【感想・ネタバレ】失われたものたちの本のレビュー

あらすじ

第二次世界大戦下のイギリス。本を愛する12歳のデイヴィッドは、母親を病気で亡くしてしまう。孤独に苛まれた彼はいつしか本の囁きを聞くようになったり、不思議な王国の幻を見たりしはじめる。ある日、死んだはずの母の声に導かれて、その王国に迷い込んでしまう。狼に恋した赤ずきんが産んだ人狼、醜い白雪姫、子どもをさらうねじくれ男……。そこはおとぎ話の登場人物や神話の怪物たちが蠢く、美しくも残酷な物語の世界だった。デイヴィッドは元の世界に戻るため、『失われたものたちの本』を探す旅に出るが……。本にまつわる異世界冒険譚!/【収録作】失われたものたちの本/シンデレラ(Aバージョン)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ジブリ映画の「君たちはどう生きるか」の理解の助けになるかと、原作(原案?)の一つであるこの小説を読んでみた。

この小説自体の面白さ、テーマ性の力強さに圧倒され、宮崎駿監督はこの要素を取り入れたのかな等と考えつつも物語を楽しむことができた。
しかしこれを読んであの映画を作ったのかと思うと、やはりオリジナリティの天才だと思う。

まずこの本は、物語と人生の密接さを描いている。
数々の童話をモチーフにした物語や展開が描かれ主人公や登場人物の人生に相互に影響し合っているのが分かる。物語は生きており、それを読まれたがっているのだ。
そしてこの本は、ひとりの少年が成長し、大人になるまでを描いているのではない。ひとりの少年が成長し、人生の苦しみや悲しみや傷みを抱えながらも生きて死んでいく様を、登場する物語を通して描いているのだ。
だからこそ、これを読んだ宮崎駿監督は映画のタイトルを「君たちはどう生きるか」にしたのだろう。

ラストシーンで木こりは出ているのに母親は結局出てこないことに疑問はあったが、少年の頃の母の死は乗り越えるべき壁だという捉え方をしているのかもしれない。

元ネタとなった童話は全て知っているわけでもないので、機会があったら読んでみたいと思う。
素晴らしい読書体験に感謝。

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2024年12月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

デイヴィッドは本当の自分がどう在るべきかを、他者から教えてもらいたかった。理想化された大人ではなく、正しいあり方を示してくれる存在を求めていた。だからこそ彼は現実ではなく、物語の中に救いを探し、登場人物たちの言葉に期待を寄せた。語られる物語はおとぎ話のような、めでたしめでたしではなく、妙に現実味を帯びたトゥルーエンドのようだった。太宰治が「本を読まないということは、その人は孤独ではないという証拠である」と述べたように、デイヴィッドの読書量と想像力は、そのまま彼の孤独を示している。終盤で、いい子になったデイヴィッドは、ただ従順になったわけではない。彼は失いたくない世界があり、避けていても無視しても、他人という存在は消えてはくれないことに気づいた。そしてその現実を前に、勇気を出して自分を変えることを選んだ。現実と向き合い、自分の感情とも向き合う中で、変わらない世界のなかで変えられるものがあるとすれば、それは自分の心だけだと気づいたのだ。他者にも心があることを理屈ではなく、痛みを通して知ったからこそ、彼は自分を変え人に優しくなったのだと思う。それは誰かのためではなく、デイヴィッド自身が納得して選び取った変化だった。その姿勢はとても誠実で迷いなかった。

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2025年08月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

予想していたよりダークなファンタジーだった。

宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」という作品は、本書を結構モチーフにしているというレビューを見かける。先にこの本を読んだが、いずれ映画も観たい。

有名な童話(白雪姫やヘンゼルとグレーテルなど)が色々と登場するのももちろん好みなのだが、主人公・デイヴィッドを助けてくれる謎の国の良い人たちが命懸けで救ってくれたり、おかしな世界ではあるが現実的な考え方をしていたり(それがむしろおかしさを感じるが)、キャラクターが魅力的だ。
ねじくれ男が執拗い狼を始末し、デイヴィッドは私だけのものだ、という場面はゾクッとした。
ねじくれ男の正体がほとんど明かされない中で、たまに現れては嫌なことをして去っていくので、敵か味方か、という謎さ加減が強めで面白い。

また、3人の医者を奴隷にした女狩人がやること自体がなかなか残酷で、人間と動物のキメラを、頭と胴体を切り落とし繋ぎ合わせて作るというのを生き甲斐としており、デイヴィッドも狐と合体させられそうになったが、ケンタウロスの話をするとその気になって自身が馬と合体しようと考え、デイヴィッドに手伝わせる〜が、女狩人の首を切断した時に逃げ出そうとし、鍵がかかっておりすぐ家から出ることができないでいるも、水薬で止血して慌てて追いかけてきた女狩人。
女狩人が失敗作と呼ぶ、頭が動物で身体が人間のキメラたちがいつの間にか家の前に集まっており、出てきた女狩人を取り囲んで報復するという。
また、ヘンゼルとグレーテルもどきの童話も魔女が焼かれて死ぬのは原作通りではあるが酷く、その後、弟は母が恋しい余り姉と一緒に暮らすのが嫌になって出ていくも、母のような包容感のある女性に招かれて家に入るも、二度とその弟の姿を見たものはいない〜と〆るなど。
本当は怖いグリム童話のような、そんな話がチラホラあった。

話の出だしの取っ掛りが、実の母親が死んで再婚相手が先生で、どれだけ優しく接してこようとも僕の母親には決してなれないんだ!(むしろ優しくされるほどイラつく。パパは本当のママのことを忘れてしまったのか?あんなに仲が良かったのにそんな女とベタベタしやがって…)という複雑な子供心の話でありながら、そこまで展開はないので、話が長く感じた。

時どき、人を失う恐怖に囚われてしまうあまり、彼らが生きている現実を心から享受できていないのではないかと自分を疑うんだ。p276


最後まで読んでみて、これは大人向けではなく子供向けだなと感じた。道中のグロさはあるが、少年の精神的成長は子供にこそ読んで欲しいと思った。が、子供にそのことがどのくらい汲み取れるかどうか。そう考えると大人向けなのか?
ねじくれ男は完全なる悪役だった。
人に近い狼は王様の想像の産物だった。

木こりが実は生きていたのは凄く嬉しかったし、デイヴィッドもこの世を全うしてまた再会するというのもとても良い世界観だと思ったが、躊躇なく剣で人を殺すようになったデイヴィッドの姿であったり、読後感がなんともどろっとした濃厚な大人の童話を読んだような感じだった。

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2024年09月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

がちむず
がち読みにくい
アリス殺しの序盤みたいな感じ
終盤ギリギリまで読みにくすぎて全然身が入らなかったけど最後は大満足。なにこれ〜
デイヴィッド良かったね勇敢だったね

ループ=人狼
ループたち=人狼の群れ
リロイ=人狼の長
狼=ただの狼

ブルード=ハルピュイアの群れ
ハルピュイア=人面の翼獣 神話
トロル=ずんぐりとした象みたいな肌の顔は醜い猿


シンデレラAバージョン、めっちゃ面白い

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2024年08月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」から。

読んでみると分かるが、かなりインスパイアされているなという印象。大まかな枠組み殆ど一緒じゃないかな。
中には、これ「もののけ姫」では…と思うシーンもあった。
児童書好きの私は、とても大好きな本になった。物語は読まれたがっている、という言葉に胸をぎゅっと一掴みにされた。物語の持つ無限の広がり、それは子供の頃から地続きで、今も広がり続けているのだ。今夜はデイヴィットと行った王国や、失われたものたちの本のことを考えながら眠りにつこう。

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2024年07月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

誰しもがそれぞれに持つ内面の物語についての物語。
母親を亡くしたデイヴィッドは、新しい家族の中に自分の居場所を見失い家族関係がぎくしゃくしていたところをねじくれ男に付け込まれて物語の世界に誘い込まれるが、そこで大きく成長して戻ってきて、親子関係を見つめなおす。

ジブリの映画「君たちはどう生きるか」の元ネタになったと言われている本。公式にそう言われているのかは知らない。
映画を先に観てから読んだが、なるほど対応関係は分かる。
しかし原作と言えるほど、この物語を忠実に映画化しているわけではない。映画版はかなり翻案されており、設定や枠組みを拝借したという程度に見える。

吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」は戦前の本だし、映画の舞台もこの本の舞台も第二次世界大戦中ということで、それなりに古い本なのかと思いきや以外にも2000年代の作品。読んでみれば新しさは感じられると思う。

やたらと長かったが、逆にこの長さが読み応えに直結していてよいのかもしれない。

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2024年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ダークファンタジーというくくりの物語を初めて読んだ。
中々グロかったけど、子供の恐怖心による想像で形作られた世界線、という設定は良かった。
登場するおとぎ話も皮肉な結末で、好きだった。
人から大事にされているのに、新しい存在が入ってきた時に疎外感を感じて、愛されたい、愛されているという実感が欲しい、という願望は誰にでもあって、子供たちのその願望をエネルギーに変換して自らの生に活かしているねじくれ男はきゅぅべえ的立ち位置で良かった。

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2025年05月29日

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