あらすじ
官尊民卑の世の中を変えるため、目指せ、攘夷の志士! ところが――。
従兄の尾高惇忠や渋沢喜作らとともに、尊王攘夷に傾倒していく渋沢栄一。江戸に出入りして同志を集め、ある暴挙を企てるが、京の情勢に通じた惇忠の弟・長七郎の猛反対にあい、実行直前にして断念することに。一転、幕府から追われる立場となった栄一は、喜作とともに京へ逃げる。
そんな彼らに助け船を出したのが、徳川慶喜の側近・平岡円四郎だった。慶喜こそが幕府を変える人物であると望みを懸け、一橋家に仕えることを決意した栄一の運命が、再び大きく動き始める――。
話題の大河ドラマ「青天を衝け」第11回~第21回の内容を収載した、完全小説版第2弾。
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Posted by ブクログ
栄一が一橋家の家臣となり、その後フランスへと旅立つこととなるまでを描いた第二巻。
第1巻では渋沢と国のダイナミズムの間に隔たりがありながらも、栄一自身のアイデンティティを生み出した血洗島でのエピソードが語られ、並行して進む世界線でありながら、時代の潮流を見つめていた、
本書では、いよいよ栄一が喜作とともにダイナミズムの中心に合流し、信じ続けた攘夷の現実と慶喜の考える日の本の為の政。
そして政治の中心でも天皇、朝廷、幕府、薩摩、長州、水戸、そして一橋と。
攘夷と開国、また倒幕と佐幕の間を揺れながらも、
最後まで攘夷を掲げた長州の挫折、朝廷からの信頼を得て幕府の復活による国力増強を図る一橋、公武合体から倒幕へ大きな転換を果たした薩摩、
孝明天皇の崩御、14代将軍家茂の逝去など、
まさしく「内患外憂」の時代に慶喜はいよいよ徳川宗家を継ぎ、15代将軍となる。
栄一はそんな中でパリで開かれる万国博覧会へと足を運ぶ。2人の行く末は如何に。
栄一はこの第二巻で減らず口とも言われたお喋り力を遺憾なく発揮する。慶喜への度重なる提言、一橋家を潤わせる為の数々の勘定役での場面など、彼は自身の口でその役目や立場を勝ち取る。
そして見事な機転と自身が長けていることへの分析能力の高さ、自身の誤りをすぐに訂正できる柔軟性と同時に父の教えである自らの道理を通すことへの一貫性。そのいずれものバランスの高さが光る章であり、まさに栄一の成り上がりそのものが描かれている。
またこの間に出会っている人物はいずれも世間に名を残すこととなる人物ばかりであり、栄一に限らず若くして才がある人物が多く登用された時代であるともいえよう。
家康の残したご遺訓
「及ばざるは過すぎたるよりまされり」
チャレンジャー精神を忘れないことは、栄一のワクワクそのもの原動力であり、時として無礼とも言える提言にも繋がりながらも、誤りを認められる、
そんな彼自身を示しているようでもある。