あらすじ
私は夫と離婚をする。そのことを両親に報告せねばならない。実家へ向かう路線バスのなかで、老人たちがさかんに言い交わす「うらぎゅう」。聞き覚えのない単語だったが、父も母も祖父もそれをよく知っているようだ――。彼岸花。どじょう。クモ。娘。蟹。ささやかな日常が不条理をまといながら変形するとき、私の輪郭もまた揺らぎ始める。自然と人間の不可思議が混然一体となって現れる15編。(解説・吉田知子)
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Posted by ブクログ
たとえばマタハラと言ってしまえば簡単に済むが、
(「工場」においては非正規労働の過酷さと済ましてしまう読みもあり得たように)
生理的な居心地悪さを提出する、その手つきゆえに、ホラーであり幻想小説である読後感が生まれる。
人が人としてあるだけで、人が人と関わるそれだけで、必然的に歪みが生じる。
あとは気づくか気づかないかだけで、多くの人は意図的にか無意識には見過ごしている。
それを作者は見る。
カメラでぐいーーっとズームしていくように。(デヴィッド・リンチ「ブルー・ベルベット」の冒頭)
目地も肌理もすべて書き尽くす。
気持ち悪いくらい接写する。
■うらぎゅう★
■彼岸花★
■延長
■動物園の迷子★
■うかつ
■叔母を訪ねる
■どじょう★
■庭声―谷崎潤一郎「鶴唳」によせて
■名犬★
■広い庭★
■予報
■世話
■蟹★
■緑菓子
■家グモ
Posted by ブクログ
初めて手に取った『工場』ではまり、『穴』そして本作と読み進めてきた小山田浩子。
ストーリー自体は幻想的で、ざわっとするようなできごとも含まれていて、ほぼ主人公の視界の範囲から外れていないのだけれど、圧倒的な描写力(文庫版の帯で津村記久子が「とても小さなことを書いているのに、ものすごく奥行きのある小説」と述べている)で、短編集なのに、それぞれの話ごとに読みごたえを感じる。
小説好きの全ての人にお勧めしたいけど、虫が絶対ダメって人は、少し覚悟してどうぞ。
Posted by ブクログ
2022年、34冊目です。
小山田浩子さんの短篇集です
主人公の目の前にある情景を、注意深く正確に描写していく文章は、
作者の文章の特徴です。どうでもいいような些細な日常を精緻に描いていく中に、
ふと感じる違和感が、ところどころに埋め込まれています。
そして、物語の最後に、その違和感の顛末が出てきます。
それは、少し奇妙な顛末になることが多いのですが、
それまでの文章が、淡々と事実を描写しているので、
一層、その顛末の奇妙さが印象付けられる感じを受けます。
これまで、「工場」、「穴」などの作品も読んでいますが、
「工場」に代表されるように、主人公の女性が、工場で働いている物語の最後に、
工場の中にたくさんいる黒い鳥になってしまうような”奇妙さ”が、
多くの物語に通底するものだと感じています。
おわり