【感想・ネタバレ】シズコさん(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

四歳の頃、つなごうとした手をふりはらわれた時から、母と私のきつい関係がはじまった。終戦後、五人の子を抱えて中国から引き揚げ、その後三人の子を亡くした母。父の死後、女手一つで家を建て、子供を大学までやったたくましい母。それでも私は母が嫌いだった。やがて老いた母に呆けのきざしが──。母を愛せなかった自責、母を見捨てた罪悪感、そして訪れたゆるしを見つめる物語。(解説・内田春菊)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

母と娘の関係は難しいと言われる。
母娘に限らず、肉親には、共に過ごした時間と、良くも悪くも、深い愛情や期待がある。
簡単に好いたり嫌ったりできるものではない。親子とて他人だと分かっているけど、そうそう割り切れるものではない。

著者も幼い頃から母親に虐待まがいの扱いを受け続け、母親が認知症を患うまてでは母親を嫌う気持ちを抱き続けていた。
一方で、家族の記憶を反芻する中で、激動の時代を力強く生きて、物理的に家族を支え続けてきた母親への尊敬と同情の念を抱いていることも再認識する。
ときに同じシーンの記憶を二度三度と繰り返し思い返しながら、許せない気持ちと許したい気持ちを行ったり来たりするのはとてもリアルだった。

そして最後のベットで、ごめんなさいを伝えあう場面は思わず涙が出そうになった。
認知症の影響とはいえ、心を溶かした状態で母の死を迎えられたのはとても幸福なことなんじゃないだろうか。



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2022年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ぽんぽんとリズム良い文章に、赤裸々でありながらユーモラスな優しさも感じ、あっという間に読み終えた。
時代背景もあるだろうが、厳しい母との葛藤、互いに素直になれない哀しみ、家族の情、生きる厳しさなど、印象深い。
そして、呆けた母への思いの変化が熱をもって綴られ、美しい。

『 母が私との関係を高校の担任に、「嫉妬でしょうか」と云った時、私は見当違いの事を何云っているのだろうと思った。
 そして、わかった。もしかしたら本当だったのだ。私は父にそっくりだったのだ。・・・・・
 母は本当に私に嫉妬していたのだ。』

『もしかしてこの人、本当には強くない人なのだろうか。』

"謙虚"という言葉が浮かんだ。
わたしの目に映る風景も、5年後、10年後変わっているかもしれない。
傲慢にならないよう、謙虚に!
歳を重ねるごとに可愛いく素直な心で生きたいと想った。

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2021年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小説なのか自伝なのかよくわからないけど、おそらく佐野洋子さんご自身の話なんだろう。母を嫌いだったと断言する娘。母と娘の間には多かれ少なかれ何かしらのしこりがあるものだと思う。全く無い人いるのかな?彼女の場合はしこりは小さくはない。その気持ちをつらつらと、それはもう開けっぴろげに、乱暴にも思える言葉で書きなぐる(勿論計算された構成なんだろう)。それでも「嫌い」の裏に説明できない想いと絆がたしかにあって、目頭が熱くなることしばしば。私も母の布団に潜り込みたい。ぷつりぷつりと途切れるような言葉が心地よくて好き。

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2018年01月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 佐野さん自身と母親との関係を描いた生々しいエッセイ。呆けた現在の母と、苦しみを与えた過去の母を行ったり来たりするような構成が、その切実さをいや増している。

 終戦後、5人の子を抱えて中国から引き揚げ、その後3人の子を亡くした母。さらに夫(佐野さんの父)も亡くなり、女手一つ、完璧な家事と仕事で4人の子供を大学まで行かせた母。一方、ヒステリックで子どもに虐待の様なこともし、見栄と自尊心をこじらせていた母。どちらも同じ母で、すべてを嫌いになれなかったからこそ、佐野さんはさんざん苦しめられたんだろうなと思う。

 問題を起こす家族は、物理的に離れること、これが一番なんだと思う。親を捨てたという思いはいつまでもつきまとうかもしれない。けど罪悪感と生きてゆく重い覚悟なんてせずに、「とりあえず離れる」という選択があってもよいのでは。佐野さんのように、いつか許せる日が来るかもしれないんだから。

 生後33日でコーヒーの様な血を鼻から出して死んだ赤ん坊や、脱腸していた近所の同級生の母親の描写など、戦後の貧しい日本にはキョウボウな匂いが漂っていたんだなあとしみじみ感じた。死が遠いものになり、ある意味「無菌状態」な今の日本で、「百万回生きたねこ」のような作品は生まれないのかもしれない。

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2018年01月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

母がボケてしまってから、母と自分との関係を見つめ直す物語。母と娘の関係って人生のなかでそんなに大きく占めるものなのかな。

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2014年04月20日

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