あらすじ
赤穂浪士・大石内蔵助の妻、りく。
忠臣として語り続けられる大石内蔵助ではなく、その妻にスポットライトを当てた、影の「忠臣蔵」。
討ち入り後、りくは遺児となった大三郎とともに生きるが、その生涯は哀しいものだった。赤穂に嫁ぎ、夫を支え、そして夫亡き後は忠臣たちの遺族のもとをまわるなど、最期まで武士の妻であった。そんなりくの人生を平岩弓枝が鮮やかに描き出した傑作長編。涙なくしては読めません。
第25回吉川英治文学賞受賞作。
※この電子書籍は1990年に新潮社より刊行され、文藝春秋より2020年12月に刊行した文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
残された者の回想
大石、赤穂、浅野――いはゆる赤穂事件、忠臣蔵をつなぐものとしては、男の物語になることが多い。しかし、これは妻のりくから書いてゐる。
りくと義弟の喜内、りくと姑のくま、りくとをばの戸世。をさない頃から家老に嫁ぐことになったりく――それが徳川の世の習慣であった――から、往時を思ひだしつつふりかへるあの頃は、切なくもあり、にぎにぎしくもあり、いつの世の人間模様も変らぬものだと感じる。
平岩弓枝の筆は冗長を嫌って巧みだった。ちょっと人物相関が分りづらいが、とりわけ最後のしめくくりの月と星の比喩は圧巻であった。