あらすじ
2018年本屋大賞2位!
著者渾身の慟哭のミステリー、ついに文庫化!
平成六年、夏。埼玉県の山中で白骨死体が発見された。遺留品は、名匠の将棋駒。叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志した新米刑事の佐野は、駒の足取りを追って日本各地に飛ぶ。折しも将棋界では、実業界から転身した異端の天才棋士・上条桂介が、世紀の一戦に挑もうとしていた――
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Posted by ブクログ
久しぶりに物語の世界にのめり込んでしまった。
ネタバレあります。
上巻冒頭
将棋界の最高峰「竜昇戦」七番勝負の第七戦、最終戦
現竜昇のエリート棋士、壬生6冠に挑むのは、東大出で「炎の棋士」の異名を持つ異端児、上条桂介。
壬生6冠がタイトルを守り、残る7冠めに王手をかけるか
奨励会に入ることなくプロ棋士になった異端児、初タイトルに挑む上条が勝つのか
そこに、天木山山中から見つかった身元不明の白骨体が抱えていたと思われる、初代菊水月作の名駒、錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒。
世界に7組しか存在しない、価値は600万とも言われる銘駒を抱えて眠る、この白骨死体は誰なのか?
なぜ、高額の名駒を抱えていたのか?
この謎を追う、石破刑事と佐野刑事。
上巻は、上条桂介の生い立ちが中心となる。幼い頃に母と死別し、父に育児放棄された桂介の、あまりの悲惨さに心がずーんと重くなる…
生まれた子供に罪はない。親を選ぶことはできないのだから…
小学3年生から家計を支えるために新聞配達をする桂介。その幼い子供の稼ぎまでギャンブルに注ぎ込み家庭を顧みない父親。
そんな桂介を、もと教師の唐沢が救う。彼に将棋を教え、心を守るために…
読みながら涙が溢れてくる。
並行して、白骨遺体が抱えていた名駒の出所を追いかける2人の刑事。
唐沢は、桂介の将棋の才能を見抜き、プロ棋士への登竜門「奨励会」に入門させるよう、父親に働きかける。しかし、俺を見捨てないでくれと懇願する父親に、桂介は唐沢の申し出を断ってしまう…
もうどうしようもなく心を抉る。
育児放棄され、自分の稼ぎまで掠め取られ、父親らしいこともされずに生きてきた桂介が、それでも父親を見捨てることができない、血の繋がりとはかくも深いものなのか、と。
それでも上巻の最後、桂介が東大に合格し、東京に行くことが決まってほっとしたのだった…
Posted by ブクログ
異色の経歴を持つ天才棋士の過去と、とある理由で彼を追う警察の現在が交互に語られながらある事件のことが紐解かれていく物語。
事件そのものはもとより、天才棋士・桂介の過去が辛い。幸いにも周りに目をかけてくれる大人がいて、そこに逃げられればいいのに、たとえ酒に溺れていたとしてもあまりに大きい「親」という存在。救いのない親子関係がひたすら辛かった。
Posted by ブクログ
殺人事件の鍵になる将棋の駒を巡る現在の警察の軸と、虐待されている子に手を差し伸べ将棋を教える先生の過去の軸で展開されていて、これがどう繋がるかは上巻ではまだ分からないが、後半の過去編で漸く駒に関する話が出てきて繋がりを感じられた。
全体的に文章が読みやすくサクサク読めた。
下巻での物語の展開も楽しみ。
Posted by ブクログ
佐野直也
三十歳過ぎ。大宮北署地域課。刑事。かつて棋士を目指し奨励会に所属していた。
石破剛志
四十五歳。捜査一課を牽引する中堅刑事。警部補。口が悪く、嫌味な性格で人づき合いのよくないことで有名。
壬生芳樹
若き天才棋士。竜昇。二十四歳。小学三年生で将棋の小学生日本一を決める小学生将棋名人戦で優勝し、小学生名人となった。翌年、奨励会に入会。十四歳で四段に昇進してプロになった。十八歳で初タイトル・王棋を獲得する。その後も、棋戦最多勝、最多対局、最高勝率など、将棋界の記録を次々と塗り替え、棋界のタイトル六つを掌中に収めた。
上条桂介
プロ棋士の養成機関である奨励会を経ず、実業界から転身して特例でプロになった東大卒のエリート棋士。六段。三十三歳。長野の高校を卒業したあと、東大に入学。東大卒業後は外資系の企業に就職し、その企業を三年で退職した。その後、自分でソフトウェア会社を立ち上げると、事業は軌道に乗り、年商三十億を達成する。業界のトップスリーにまで成長した会社の株式を売却し、実業界を引退、将棋界へ転身する。「炎の棋士」の異名を持つ。
花田源治
戦前、賭け将棋の真剣師として名を馳せた。九段。特例でプロ試験に合格し、五段付け出しでプロになった。
亮
丸藤将棋駒店。
酒牧航大
佐野の奨励会時代のライバル。五段のプロ棋士。
本島
十段。酒牧が若いころから尊崇している。
前田
連盟の関係者か奨励会の会員。
崎村賢太
八段。洒脱なトークで知られる。
広岡知美
若手女流棋士。女流三段。
橘雅之
大宮北署署長。警視。
五十嵐智雄
埼玉県警捜査一課管理官。警視。
糸谷文彦
大宮北署刑事課長。警部。
本間敏
埼玉県警捜査一課の理事官。
鳥井
大宮北署刑事課強行犯係主任。
清水淳
四十一歳。山林の伐採を引き受けている株式会社フジトーヨーの社員。天木山で白骨化した遺体の第一発見者。
高田伸広
山林の伐採四十年のベテラン作業員。現場の責任者。
矢萩充
天木山の山中から、遺体とともに発見された将棋の駒を鑑定した人物。六十七歳。アマ四段。日本将棋連盟東神奈川支部の事務局長。
矢萩礼子
充の妻。
梅ノ香
菊水月作の駒を所有している京都の老舗料亭。
仙田剛太郎
菊水月作の駒を所有している富山の駒収集家。
吉田碁盤店
菊水月作の駒を所有している東京の囲碁・将棋専門店。
佐々木喜平商店
菊水月作の駒を所有している宮城の囲碁・将棋専門店。
林屋本店。
菊水月作の駒を所有している広島の囲碁・将棋専門店。
相模高雄
将棋の駒の研究者。三年前に心臓の病で亡くなった。
唐沢光一朗
三年前に還暦を迎え、それを節目に教師を辞めた。元小学校教諭。小学生だった桂介に将棋を教え、その才能に気づく。初代菊水月作の駒を持っている。
児島武夫
唐沢が教諭だったころの教え子。スポーツ用品店を経営。
高田正一
唐沢が尋常小学校五年生の時の担任。
美子
唐沢が二十七歳のときに、赴任先の小学校で事務員を務めていた。唐沢の妻。
庄司
唐沢の近隣の住人。町内会の会長。
佐々木
唐沢が勤めていた小学校の用務員。大の将棋好き。
阿部
唐沢と同じ町内会。
新聞販売店の店主
桂介が小学三年生で働いていた新聞販売店の店主。
信治
児島の息子。
上条庸一
桂介の父親。春子が亡くなってから自暴自棄になる。酒とギャンブルに溺れる。信州味噌の味噌蔵『杦田屋醸造』で働いている。
上条春子
桂介の母親。桂介が二年生の冬に亡くなった。
徳田洋平
地元紙の観戦汽車で、この道三十年のベテラン。
松本朝子
信治の担任。
長谷川金仁
教育委員長。唐沢が長野市の小学校で教頭を務めたときの校長。
香里
義則の嫁。
義則
佐々木喜平の孫。市役所に勤めている。
大洞進
佐々木喜平商店から初代菊水月作の駒を買った。
佐藤
杦田屋醸造の番頭。
安立直人
水戸中央署地域課巡査の捜査員。
大洞忠司
大洞進の息子。忠司が結婚した昭和四十年に初代菊水月作の駒をを売った。
菊田
大洞進が初代菊水月作の駒を打った相手を知っている。大阪で不動産業を営んでいる。
笹本景子
前年から引き続き桂介の担任になった教師。三十代前半で、去年結婚した。
守岡
桂介が通う高校の教頭。唐沢の元教え子。
新関徹平
大阪府警難波南署地域課巡査。
菊田勲
西宝不動産を経営。昭和三十年登記。
菊田栄二郎
栄公不動産を経営。昭和二十五年登記。
大守江美
栄公不動産スタッフ。
大河原信二
菊田から駒を買った人物。
Posted by ブクログ
上下巻2冊。
『盤上の向日葵』は、2019年にBSでドラマ化され、今年の10月31日より、坂口健太郎、渡辺謙の主演で映画化されるのも楽しみだ。
物語は簡単に言えば、将棋の駒を抱いたままの白骨が見つかり、その殺人事件を刑事が解決していくストーリーではあるが、そこには平行して謎のプロ棋士・上条桂介の半生、『棋士』になるための苦労や、さまざまな将棋界の掟などが描かれている。
もちろん将棋界を知らなくても十分面白いが、知っている人はより一層面白いのかな。
長編ゆえ、主人公のプロ棋士・上条桂介(映画では坂口健太郎)の生い立ちから始まり、酒浸りの父親からの暴力に耐えながら新聞配達をし、生計を立て、将棋と出会い、のめり込んでいく章から始まる。また殺人事件を追う刑事のパートの章と交互に物語は進むが、最後の最後にようやく接点があるというのも、ちょっと意外だったな。
将棋をテーマに書かれた小説と言えば、難病に苦しみながらもひたすら名人を目指して人生の全てを将棋に捧げた『聖の青春』が面白かった。(これはノンフィクションだけど)
将棋の駒の動かし方もあやふやな僕には到底想像もつかないが、羽生善治さんが解説まで務めているところからも、棋士の方にもある意味では有名な小説なのかな。