あらすじ
過剰共感能力者とは、他人の感情に共感しすぎてしまう特異な体質のために、社会生活に支障をきたしてしまう人々。生きづらさを抱える彼らの共感能力を生かし、本来はその持ち主にしか理解できない記憶を第三者にも分かるようにする“記憶翻訳”の技術を開発したのが九龍という企業だった。珊瑚はその中でもトップクラスの実力を持つ記憶翻訳者だ。依頼人の記憶に寄り添い、その人生を追体験するうち、珊瑚は幼い頃に失った自身の一部について思いを馳せるようになる──第5回創元SF短編賞受賞作「風牙」を収録。心を揺さぶる連作短編集。/【収録作)風牙/閉鎖回廊/いつか光になる/嵐の夜に/あとがき/解説=長谷敏司※本書は、『風牙』(2018年10月刊行)を再編集・改題し、書下ろし2編を加えたものです。
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Posted by ブクログ
予備知識なしで読み始めて最初は「???」な感じで苦戦したんだけど、「閉鎖回廊」を読んでいる辺りで「多分九龍って人の記憶情報を利用してゲーム作ってる会社ね。でもって記憶翻訳ってゲーム開発のプロセスで、珊瑚はそのエキスパート。」と理解してからは読むテンポが上がって話も楽しめた。いつか後編も読もうと思う。
Posted by ブクログ
単行本「風牙」の文庫版、風牙読んでるはずなんだけど記録がない。
単行本以外にも年刊傑作選にも載ってたような記憶がある。
何回読んでも変らず面白く読めるのは良い。
続刊も楽しみ。
関西弁話す理由も読んだことある気がするんだけど、次かな?
Posted by ブクログ
はじめ、仕組みを理解しようとしすぎて脱落しかけたけど、後半に向かって登場人物たちのことがよくわかってきたら読みやすくなった。最後まで行ってから冒頭に帰って、「風牙」でちょっと涙。いい話やん。(初読時は気づかずw)
主人公の珊瑚は、他者への共感力が強すぎるあまり、13歳くらいまで、どれが自我でどれが他人なのか区別もつけられないような人生を送ってきた人。でも、強すぎる共感力をコントロールする技術と、他人の記憶を読み解く技術のおかげで、「記憶翻訳者」として生きられるようになった。おもしろい発想。人ごみにまぎれると、種々雑多な思念におぼれそうになるというの、コニー・ウィリスの『クロストーク』にもちょっと似てる。
そのギミックをうまく生かしながら、職場小説のような味わいもあり、関西弁が独特の味をかもしだしてもいて、よかったです。
SFに興味がありませんでしたので、いままで殆ど手を出していませんでした。そのためか、最初の風牙を読み終わった段階では、記憶翻訳者について若干の疑問が残っていて、理解が深まらず、どこか消化不足でした。徐々に読み進めることで、記憶翻訳者という概念が理解でき、良さがわかってきます。
もう少し、SFに慣れてない私のような者にも、記憶翻訳者の概念が早めに解ると良いと思い、☆3つとしました。
Posted by ブクログ
【収録作品】風牙/閉鎖回廊/いつか光になる/嵐の夜に
2018年刊『風牙』を元に加筆訂正を行い、さらに短編2作、幕間の挿話2作を加えて全体を再構成し、二分冊としたものの前編。
興味深いのだけれど、そして、面白いのだけれど、理解が追いつかない部分が多々あって、やはりSFとは相性が悪いようだ。
Posted by ブクログ
冒頭の混乱状況が読者側の理解を助けてくれたものの、記憶翻訳の仕組みは手強かった。まだまだついていけてないけどこの世界観は好き。プロモーション用記憶翻訳とかわけわからないけどワクワクする。
Posted by ブクログ
個人の主観の集合体である記憶を第三者向けにコンバートする<記憶翻訳者>の珊瑚と共に巡る魂と再生の物語。序盤は独自の設定を読み解くのに苦戦したが、収録作の「風牙」と「閉鎖回廊」で思わず涙腺が緩む。両者共に良質のSFヒューマンドラマだが、後者はミステリー仕立ての構成も実に秀逸。サブタイ作品の「いつか光になる」は文庫版書き下ろしで、前述の二作品とは趣向が異なる。ゲストキャラのハルが抱える壮絶なバックグラウンドの割にストーリーが大人しめだが、このエピソードが次巻への橋渡し役を果たすのだろう。分冊版下巻にも期待大。