あらすじ
「飛び道具トラップ」「激動期トラップ」「遠近歪曲トラップ」
経営を惑わす3つの「同時代性の罠」を回避せよ!
近過去の歴史を検証すれば、変わらない本質が浮かび上がる。
戦略思考と経営センスを磨く、「古くて新しい方法論」。
「ストーリーとしての競争戦略」の著者らの最新作!
これまで多くの企業が、日本より先を行く米国などのビジネスモデルを輸入する「タイムマシン経営」に活路を見いだしてきた。だが、それで経営の本質を磨き、本当に強い企業になれるのだろうか。むしろ、大切なのは技術革新への対応など過去の経営判断を振り返り、今の経営に生かす「逆・タイムマシン経営」だ。
そんな問題意識から、日本を代表する競争戦略研究の第一人者、一橋ビジネススクールの楠木建教授と、社史研究家の杉浦泰氏が手を組んだ。経営判断を惑わす様々な罠(わな=トラップ)はどこに潜んでいるのか。様々な企業の経営判断を当時のメディアの流布していた言説などと共に分析することで、世間の風潮に流されない本物の価値判断力を養う教科書「逆・タイムマシン経営論」を提供する。
経営判断を惑わす罠には、AIやIoT(モノのインターネット)といった「飛び道具トラップ」、今こそ社会が激変する時代だという「激動期トラップ」、遠い世界が良く見え、自分がいる近くの世界が悪く見える「遠近歪曲トラップ」の3つがある。こうした「同時代性の罠」に陥らないために、何が大事なのか──。近過去の歴史を検証し、「新しい経営知」を得るための方法論を提示する。
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Posted by ブクログ
タイムマシン経営 :未来を実現しているエリアの手法を持ってくる。
逆・タイムマシン経営:過去の新聞雑誌記事から浮き彫りになる本質
思考の型、センス、知的作法
バスワード:ステレオタイプ的な見方 同時代性の罠
本質の一義的な特徴はそう簡単には変わらない
サブスク 「卒業」できないインフラ的商品に向く 古くから存在
ERP、DX 手段の目的化
POS セブンイレブン1982年 SISブームとは別の世界初のマーケティングツール
戦略が先、ITは後。
事例文脈を理解。
抽象化し、論理で本質をつかむ。
優れた戦略は特殊解。一般解はない。
導入判断。ベネフィット、コスト、リスク、タイミングを思考実験。
いつの時代も「今こそ激動期」
要素がシステムに先行する ~自動車の前に舗装道路
人間は連続的な性格
過去が薄い=文化が浅い から新しいものに容易に移行する
若者は圧倒的にヒマ そもそも不要なサービス 問題解決の過剰
グーグルグラス、セグウエイ、3Dプリンタ
投資家は激動を求める生き物
遠くは良く見え、近くは粗ばかり見える
シリコンバレー 超多産死による高速新陳代謝
日本的経営 50年かけても崩壊しきっていない
昔のことは良く見え、現在進行中のことは深刻に見える
すべてにおいてうまくいってる国はない
移民受け入れは短期的には特効薬だが、コンフリクトに直面する
ミクロとマクロは混ぜると危険
高度成長期は青春期のようなもの、いつまでも続かない。
デジタル化はメディアのファスト化
本質的な論理の獲得が難しくなる
スローメディアの主役は本
Posted by ブクログ
過去の経済誌などを振り返りつつ、いかにバズワード化した言葉/概念が取り上げられてきたか、そしてそれらが現在どのように帰結しているのかを淡々と振り返った一冊。著者曰く、所謂バズワードに惑わされてしまう背景には、「飛び道具トラップ」「激動期トラップ」「遠近歪曲トラップ」の3種のトラップがあるとのこと。
経営コンサルとして働き、いかに言葉が曖昧に使われているか(DX、リーン、アジャイル・・・)を痛感している中で、この本の主張には納得感がある。一言で言ってしまうと、どれだけ新たな概念を提示しそれが世の中に流布しようとも、経営の本質を構築する太い論理には勝てない、ということなのだと思う。個人的に興味深かったのは、数十年前までには「人口増加」が日本の悩みの種だったということ。常に悩みが尽きないのが世の常である中で、要するに誰もが現状を嘆き、そこに原因があると見なすということなのだろうと思う。コンサルとして、そして研究者?としての1つの価値の出し方として、このような時間軸を振った議論/思考を行うことは、有効であることを再認識した。
特に印象に残った箇所は以下の通り
・「情報の豊かさは注意の貧困を生む」。ノーベル経済賞を受賞したハーバード・サイモンの名言です。人間の脳のキャパシティが一定ならば、触れる情報の数が多くなればなるほど一つ一つの情報に傾注する注意の量は小さくなるのは当然の帰結です(p.88)
・技術革新がどれほど非連続なものであっても、人間の需要は本質的に連続的な性格を持っています。パソコンのOSを変えるようには人は変われません(p.120-121)
・工場やその管理システムは、そもそも「部分最適化の集大成」という性格を持っています。製造装置レベルでの標準化もままならないのですから、より上位にある生産ラインのシームレスなつながりは相当に難しいと考えたほうがよいでしょう(p.161)
・安く買って高く売る。投資家にとっては変化率がすべてです。変化に要する期間が短いほど、変化率は増大します。ようするに、投資家はその本性からして「激動」を求める生き物です(p.173)
・大きな変化ほどゆっくりとしか進まない。大きな変化は振り返ったときにはじめてわかる。これが逆・タイムマシン経営論の結論です(p.179)
・人々が同時代性の罠に陥る理由の本質は「文脈剥離」にあります。シリコンバレーという特異な生態系全体の文脈を理解せず、その時々で注目を集める技術やベンチャー企業や起業家にばかり目を向けることにあります。これが遠近歪曲を引き起こします(p.191)
・それほど遠くない昔、日本では「何とかして人口増加に歯止めをかけなければならない。このままでは未来は暗い」という、今とは正反対の議論をしていました。かつては「人口増が諸悪の根源」が強力なコンセンサスを形成していました(p.218)