【感想・ネタバレ】欲望の経済を終わらせる(インターナショナル新書)のレビュー

あらすじ

気鋭の財政社会学者・井手英策が、新自由主義がなぜ先進国で必要とされ、広がり、影響力を持つことができたのか、歴史をつぶさに振り返り、スリリングに解き明かしていく。そして経済と財政の本来の意味を確認し、経済成長がなくても、何か起きても安心して暮らせる財政改革を提言。閉塞感を打破し、人間らしい自由な生き方ができる未来にするための必読の書! 市場原理を絶対視し、政府の介入を少なくすれば、富と複利が増大する、という新自由主義の考えは、80年代にレーガンとサッチャーによって実行され、米・英は好景気を迎える。日本では、外圧や、政財界の思惑と駆け引き、都市と地方の分断などの要因から新自由主義が浸透。経済のグローバル化も起こり、格差が広がる。勤労が美徳とされる「勤労国家」で、教育も医療も老後も、個人の貯金でまかなう「自己責任国家」、日本。財政が保障することは限られ、不安がつきまとう。本来お金儲けではなく、共同体の「秩序」と深く結びついていた経済。共通利益をみんなで満たしあう財政への具体策を示し、基本的サービスを税で担う「頼り合える社会」を提言。貯金ゼロでも不安ゼロ、老後におびえなくてすむ社会に!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

新自由主義って何?「私は新自由主義です」って言う人あまり聞いたことない。1937年にアメリカの評論家ウォルター・リップマンが著者「善き社会」で企業が利益を独占する古典的な自由主義を民主主義に反するものとして批判したのが始まり。企業や富裕層への負担を増やすことや鉄道の国有化など「大きな政府」を提唱する。しかし今言う「新自由主義」は、シカゴ学派の経済学者ミルトン・フリードマン。財政を小さくし、規制を緩和すればよいという単純な主張。序章、ややまぎらわしく、新自由主義が広がって格差が広がったかのように書くが、1980年代~90年代、イギリスでもアメリカでも日本でも所得減税を行って消費税のような付加価値税を増やし、富裕層の負担を低所得層に付け替えるような政策が取られた。さらに非正規雇用の増加による労働組合の弱体化や株式資本主義で純利益至上主義が横行し、人件費を削ってでも純利益を水増しして株価を上げる動機が経営者に植え付けられた。
政府規模の対GDP比(政府の大きさ)をジニ係数で割ると、小さな政府は格差を広げるのがわかる。(113ページグラフ)アメリカの経済学者ロバートライシュによると、自由な市場は幻想。規制緩和は自由な市場を目指すものではなく、ルールを変えて誰かが得をするためのもの。
池田勇人は皆保険が実施された時の首相だが、福祉行政に国費を使うよ売り、経済を安定させ、高度の雇用を持続することのほうが重要だと考えていた。教育、住宅、病院などの現役世代への政府支出が日本はヨーロッパ諸国、アメリカと比べても低い(P136グラフ)
消費税を19%にして(詳細は割愛)ベーシックインカムを全国民に支給すれば分断がなくなる。自助努力で倹約に励む自己責任社会から税によって頼り会える社会になる。消費税は富裕層の方がたくさん払うし、ベーシックインカムが例えば月15万円なら富裕層にとっては収入にしめる割合は少ないが、貧困層には50%にも及ぶ。
所得制限は事務作業と分断を生む。
ホモサピエンス(知性人)に対してホモパティエンス(苦悩人)。人は合理的に生きるほどズルをしただ乗りし、人を出し抜く。そうではなく、理想を高く持ち苦悩する存在こそ人なのだ。

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2020年08月30日

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