【感想・ネタバレ】欲望の経済を終わらせる(インターナショナル新書)のレビュー

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Posted by ブクログ

本書を読むと、経済・政治ともにどん詰まりの日本において、何をすれば現状を抜け出すことができるのかの「解」がようやく仄見える思いを持つ。やや硬い内容だが、パンドラの箱に残った「希望」に見えた。少なくとも現状の経済無策の自民党政治への対抗軸には充分なるだろう。
2000年代の自民党や民主党が改革を競って主張した時代を思い起こすが、小泉旋風と新自由主義が世の中を席巻した時代があった。しかし改革と既得権攻撃をしても経済は成長しなかった。それらの状況の経済史的な位置と意味が本書では俯瞰できる。
また、日本の都市部と地方の相反する利益と中央の政策の構造をリアルに解剖したり、日銀の政策の現実的な結果をはっきりと言い切る内容は小気味好い。
なるほど、日銀の低金利政策によって失われた年数十兆円にもなる貯蓄の金利収入の行き先は「企業部門と中所得層(住宅ローンの借り入れを行える層)」となる。これでは「量的緩和政策は巨大な所得『逆』再配分を起こしかねない」。何と日銀が格差拡大を進める結果となっているという。
政治経済が混迷し、国民各層の分断と格差が進行しつつある日本で、現在最高に説得力のある本であると思った。
日本の未来に夢が持てる本として高く評価したい。

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2020年10月26日

Posted by ブクログ

あとがきまでいって、著者が神野直彦さんの弟子であることがわかった。とすると書かれていることはさもありなん。師匠との連続性を感じる。新自由主義とリベラルが相反するものではなく、後者が前者を呼び込んでしまう、との指摘は鮮やかだった。政府の再分配機能への見解は、わたしはもっと懐疑的だが、方向性としては理解できる。

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2020年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新自由主義って何?「私は新自由主義です」って言う人あまり聞いたことない。1937年にアメリカの評論家ウォルター・リップマンが著者「善き社会」で企業が利益を独占する古典的な自由主義を民主主義に反するものとして批判したのが始まり。企業や富裕層への負担を増やすことや鉄道の国有化など「大きな政府」を提唱する。しかし今言う「新自由主義」は、シカゴ学派の経済学者ミルトン・フリードマン。財政を小さくし、規制を緩和すればよいという単純な主張。序章、ややまぎらわしく、新自由主義が広がって格差が広がったかのように書くが、1980年代~90年代、イギリスでもアメリカでも日本でも所得減税を行って消費税のような付加価値税を増やし、富裕層の負担を低所得層に付け替えるような政策が取られた。さらに非正規雇用の増加による労働組合の弱体化や株式資本主義で純利益至上主義が横行し、人件費を削ってでも純利益を水増しして株価を上げる動機が経営者に植え付けられた。
政府規模の対GDP比(政府の大きさ)をジニ係数で割ると、小さな政府は格差を広げるのがわかる。(113ページグラフ)アメリカの経済学者ロバートライシュによると、自由な市場は幻想。規制緩和は自由な市場を目指すものではなく、ルールを変えて誰かが得をするためのもの。
池田勇人は皆保険が実施された時の首相だが、福祉行政に国費を使うよ売り、経済を安定させ、高度の雇用を持続することのほうが重要だと考えていた。教育、住宅、病院などの現役世代への政府支出が日本はヨーロッパ諸国、アメリカと比べても低い(P136グラフ)
消費税を19%にして(詳細は割愛)ベーシックインカムを全国民に支給すれば分断がなくなる。自助努力で倹約に励む自己責任社会から税によって頼り会える社会になる。消費税は富裕層の方がたくさん払うし、ベーシックインカムが例えば月15万円なら富裕層にとっては収入にしめる割合は少ないが、貧困層には50%にも及ぶ。
所得制限は事務作業と分断を生む。
ホモサピエンス(知性人)に対してホモパティエンス(苦悩人)。人は合理的に生きるほどズルをしただ乗りし、人を出し抜く。そうではなく、理想を高く持ち苦悩する存在こそ人なのだ。

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2020年08月30日

Posted by ブクログ

政治に興味が湧いた

その興味が現実的な政策や歴史、今の社会と繋がったことはこの本に起因することだと思う

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2021年10月20日

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