【感想・ネタバレ】台所のラジオのレビュー

あらすじ

それなりの時間を過ごしてくると、人生には妙なことが起きるものだ――。昔なじみのミルク・コーヒー、江戸の宵闇でいただくきつねうどん、思い出のビフテキ、静かな夜のお茶漬け。いつの間にか消えてしまったものと、変わらずそこにあるものとをつなぐ、美味しい記憶。台所のラジオから聴こえてくる声に耳を傾ける。十二人の物語。滋味深くやさしい温もりを灯す短篇集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

12のお話がおさめられた短編集です。
ぜんぶ読み終わって、あとがきを読んで初めてラジオに気付きました。読み返してそう言われてみればそうだな…と。
まったく関係ない短編の寄せ集めも好きですが、この話とこの話、繋がってる!という短編が好きです。
特に好きな2つの話について感想を書きます。

「マリオ・コーヒー年代記」
この話は本の中で2番目に好きです。
マリオが何か不幸な目に合うのではと警戒していたのですが、何も起こらなくて良かった。
ホットドッグとミルクコーヒーはとても良い組み合わせだと思います。カシャカシャする紙に包まれてくるホットドッグはなぜかとてもおいしそうに見えますね。たぶんマリオの店のホットドッグも同じ紙に包まれていると思います。

「夜間押ボタン式信号機」
この話は本の中で一番好きです。
現実の世界の中に架空のものが入り込んでだんだんと浸食していく感じ、けれどお互いの輪郭は曖昧で境界線はぼやけ、絶妙なバランスでヘンテコで奇妙な世界が出来上がっている。これは吉田篤弘が書く小説の特徴の一つだと思いますが、こんなにきれいなグラデーションになっている話は初めて読んだ気がして美しさに眩暈がしました。「押しボタン式の信号機」、「誰もいない二十四時間営業のスーパー」、「カラフルなパッケージの冷凍食品」、「未来を舞台にした推理小説」、「子羊のロースト」、「<抜き打ち検査官>につづく謎の職業<ひとしらべ>」そして「A~Nまでの十四種類の分類」。
靄の中から見れば世界はぼやけていてそこが現実なのか、架空なのかよくわからない。
こういう世界が(知識として?体験として?)自分の中にあると、現実に打ちのめされても倒れないでいられる気がします。

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2018年04月14日

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