あらすじ
『暁の脱走』『独立愚連隊』から『この世界の片隅に』まで――。
日本映画はいかに戦争と向き合ってきたか?
元特攻隊の脚本家、学徒兵だったプロデューサー、戦地から生還した映画監督が映画に込めた、自らの戦争への想いとは?
『この世界の片隅に』片渕須直監督との特別対談も収録。
日本の戦争映画を広く知るために最適の一冊。
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Posted by ブクログ
春日太一先生といえば、これまで「文章はクール、ハートは熱い人」という印象だったが、本書における文の熱量は尋常ならざるものがあった。邦画における戦争映画がどのように描かれ、どのように変質していったか。そして各作品に、作り手や出演者がどんな思いを刻み込んでいったか。それは映画を通して、戦後日本人の精神史をたどる試みでもあったのだ。
「解説本」としては字足らず。
2024年10月読了。
日本の「戦争映画」の歴史を、時代の変遷とエポック・メイキングな作品から紹介していこうと云う趣きの書。
映画一つにとっても思想的な偏りは、その時代によっても、又は社会的状況によっても左右にブレるのは致し方無いとして、『そういう点で(思想的な)文句はぶつけてくるな』と最初に宣言しているのは良かったが、やはり著者も『戦後教育を受けて育った世代』の為、《右左でケチを付けられたくない》と云う恐怖心が見え隠れしていて、作品の説明や褒め方がぎこちなく、又一つ一つの作品に割けるページ数が限られているのか、突っ込んだ所まで語り切れてないのが残念な本。文春新書で『日本の戦争映画』と云うタイトルが、著者の腰が引ける原因になったのではないか?と思われる。
もっとも著者は、別の本で世界の戦争映画ともごちゃ混ぜで共著の本も出しているので、本音のところはソッチを読んだ方が良いだろう。
何本か観ていない映画もあったので、機会があれば観てみようかな?と思った程度で終わっている。
ただ個人的な意見として言わせてもらえれば、日本の戦争映画は『反省』『慚愧』『憤怒』『恨み辛み』『悲劇』等が通奏低音の様に下地に有り、いつまででも《体験者、被験者の声》が何よりも金科玉条の様に成っている事と、戦後の日本が本当の意味での『歴史的総括』を出来ていない事が、総体的に『(日本の戦争映画が)面白くならない』その原因だと思っている。今の時代に『娯楽性満点の日本の戦争映画を作る』と言ったら、色んな方向から石や矢が飛んでくるのだろう。
《戦前(=昭和初期)は暗黒時代》の様な、安直な国民的歴史認識は、某公共放送局を含めて思想的に偏ったメディアの責任であり、『国家の安全保障』と云う世界中どの国でも当たり前の認識を他国任せで有耶無耶にしてきた政治の責任でも有ろう。
「言霊思想」辺りから国民総出で学び直さない限り、先進国の輪からもいずれ外される未来と成るだろう。たかだか『戦争映画』一つで、国の未来も変わることにも気付かない《暢気な国家》で有り続ける限りは。