あらすじ
近世最大の歴史家と言われるエドワード・ギボンの著書『ローマ帝国衰亡史』。1776年に発売されるや、たちまち希代の名著としての地位を確立し、英国首相ウィンストン・チャーチルやインド首相ジャワハルラル・ネルー、経済学者アダム・スミスなど、多くの知識人を魅了してきた。本書は、大著である原著『ローマ帝国衰亡史』の中から各時代の代表的な章を選び、翻訳、再編集して一冊にまとめた抄訳の書である。全体は15の章で構成され、ほとんどの章の終わりに編訳者による「解説」が付いている。初代皇帝アウグストゥスの指針、その後の各皇帝による波乱万丈の治世、蛮族の侵略や宗教問題などを通して、歴史の盛衰を眺望できる。国家の衰亡、文明の衰退は必然なのかという人類永遠のテーマを考えるうえでの必読書であり、人生の指針ともなり得る一冊である。歴史的傑作の新訳ロングセラー、待望の文庫版を電子書籍化!
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Posted by ブクログ
山川の世界史でも5〜6ページしか扱われないアウグストゥス以降、特に五賢帝〜西ローマ帝国滅亡までを中心に描かれた歴史の古典。ヘロドトスにこそ遠く及ばないものの、250年前の英国の歴史書が未だに日本語に訳されて読まれると言うのはものすごい。時間の暴力に耐えられるだけの内容が詰まっている。
最近こそ時代解釈を中心に置いた研究が主流だが、本来歴史というものはこういう教訓を活かすことが目的だったはず。こうしてみると現代にも通じる部分がたくさんある。「およそ市民というものは、現実の危険から離れているときにはきわめて勇敢なものである。」この辺りは誠に耳が痛い。
登場人物の名前が覚えにくいのが玉に瑕だが、内容は非常に機知に富み面白い。と同時に他の国の通史に全く触れずに歴史好きを名乗っていた自分が恥ずかしくなる。
Posted by ブクログ
ローマ帝国は長く続いたが、その秘訣や原理が存在するかと思い読み進めている。
というよりは、権利闘争の繰り返しの中で、必要性により制度が作り変えられていった印象。いまのところ。初期の多様性の尊重はKeyと思うが、集権化、キリスト国教化による統治の時代も経ているし、移り変わるなかで、政体が選択されていったという進化論的な観点での解釈がしっくりくる。
Posted by ブクログ
非常に浩瀚な書物として名高い本書であるが、要所をおさえた抄訳なので、誰でも挫折することなく完読できると思う。翻訳も上手く、おそらく原書の醸し出しているであろう古典的な雰囲気がよく出ている。飛ばされる箇所はダイジェスト的にコラムで補われるので、全体の流れは掴めるように配慮されている。
ローマ帝国の衰亡史であるので、ローマの建国から辿られるわけではなく、あくまでアウグストゥスから始まる帝政期、東西分裂を経てコンスタンチノープル陥落に至る期間を扱う。それでも千数百年にわたる歴史であり、出来事を追うだけでもかなりの分量になるのは当然かも知れない。