【感想・ネタバレ】真鶴のレビュー

あらすじ

失踪した夫の日記には、「真鶴」とあった
夫は10年以上前、日記に「真鶴」と記して失踪した。京は娘、母と3人暮らしをしながら、恋人と付き合い、真鶴と東京の間を往還する

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Posted by ブクログ

ネタバレ

たびたび訪れた真鶴。
狂おしく愛しい、憎んだ夫。
既婚者の恋人。
難しくなる思春期の娘。
ついてくる女。
自分て‥、まだ生きていていいの。


この年になるまで気づかなかったけど、
女のひとって若いときだけでない、
年代それぞれに美しさがある。
自分が思っているよりお綺麗なんですよ
とみなさんに伝えたい。

危うさもある。凛としたとこもある。
艶っぽさもある。透明でもある。
なんか好きな作品だった。

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2024年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

揺れるような不思議な小説。小舟で揺られているような。
自分にとっては、仕事でしばらく忙しく、別のところに連れていかれるような感覚があり、心地よかった。心地よい・・ちょっと違うかな。。心の中に深く潜る・・というか。。自分はこのような状況に陥ったことはないし、異性だし、確かに理解しているとは感じられない。でも、どこかの自らの心象風景に近づくことがある。

最初の文に>>
歩いていると、ついてくるものがあった。
まだ、遠いので、女なのか、男なのか分からない。どちらでもいい。かまわず歩き続けた。
・・・
布団はすぐに敷きます。風呂は地下です。そっけなく説明する息子が出て行ってから薄いカーテンを引くと、すぐ際に海が見えた。波音がする。月は出ていない。波を見ようと目をこらしたが、灯の数が足りなかった。部屋はずいぶん前から準備されていたようにむっと暖かだった。窓も開け、冷えた空気を入れた
>>
最初は主人公がどこにいるのか、男性なのか女性なのかもわからなかった。
文章に好き、嫌いがあるが、すぐに好きになった。途中、ひらがなが多かったり、普通は使わない「たゆたう」などの言葉が出てきて、読みにくいと感じることもあった。でも、独特のリズムがあり、行ったり来たりする、人の気持ちの揺らぎを、自分事として感じることができたように思う。

ついてくるものは、最初、はっきりしない。途中からリアリティをもって感じられるようになってくる。主人公のメンタルも崩れる一歩手前までくる。それが離れていくことになるが、メンタルの危機は離れ、明るい前向きな気持ちに変わっていく。

まるで人生そのものではないか。単に恋愛だけでなく、いろいろなことを考えてしまった。
また、読み返したい。

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2024年04月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

夢か現か、その境界が曖昧というか...どちらも主人公にとっては本当なのだと思う。
人との距離感をぴたりと表現しておきながら、登場人物同士はぴたりと合わない寂しさ。
それでも/だからこそ、誰かを強く想うのかな。自分にそんな気持ちあったっけ?と振り返った。

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2024年08月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

真鶴という場所にはたびたび行ったことがあり、縁がある。その流れで読んだ一冊。
文体が綺麗で儚げで、特に句読点の多さや漢字で書くところを平仮名としたりなどの書き様がそのあたりを演出しているように思った。
あとがきでようやく気がついたが、主人公は少し精神を冒されているという状態だったようだ。最後まで感情移入が難しかったが、夢現の描写はとても美しく感じた。

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2023年05月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

喪失と、「距離」の物語。「距離」とは、他人との距離でもあり、自分との距離でもあり。
百の成長と、それに伴ってなくなってくるもの。時間が経つに従って、変わってくる他人との関係(百でも、母でも、青茲でも、礼すらそうだ)、それに伴う何かの喪失。喪失がいいことなのか悪いことなのかは分からない。決めるのはその人間との距離と関係のような気もする。自分の中での喪失もまた然り、であろうか。
水のようにひたひたと様々な「距離」にふれ、最後は光が差してくる。光が差すのをハッピーエンドと判断するのは楽観的すぎると思うが、自分と他人と向き合い続けたこの物語の末には少しでも希望があって欲しいとは思った。

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2025年07月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他者と自分の境、自分であること、他人であることとは一体なんなのだろう。

これまで読んできた川上弘美作品のなかでもかなり独特で、読み終わるのにだいぶ時間がかかった。
霧の中をゆっくり小舟で進むような物語で、時に掴めない表現のかさなりになんだか眠くなったりもした。
しかし不思議と退屈さはなく、真鶴に引かれるようにして通い続ける主人公のようにつらつらと読み続けた。
特に最後の方は波にひかれるように読み切ってしまった。

喪失に折り合いを付ける、というのはとても時間のかかることで、相手が自分の中に食い込めば食い込んでいるほど難儀で、相手がいない以上明確な回答はどこにも存在せず、存在しないゆえに輪郭をもちすぎた喪失に引き込まれてどこかに行ってしまいそうになる危うさは、なにか分かる気がした。

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2024年10月11日

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