あらすじ
夏休みが終わる2日前。13歳だったぼくたちの人生は、大きく狂いはじめた。
1984年の台湾と2015年のアメリカを舞台に、数奇な運命に弄ばれた少年たちを描く、青春ミステリーの金字塔!
2015年冬、アメリカを震撼させた連続殺人鬼〈サックマン〉が逮捕された。
彼の弁護を担当することになった国際弁護士の「わたし」は、30年前に台湾で過ごした少年時代を思い出していた。
当時、13歳だった「わたし」は〈サックマン〉のことを確かに知っていたのだ――。
台湾を舞台に贈る青春ミステリの金字塔。
織田作之助賞、渡辺淳一賞、読売文学賞小説賞をトリプル受賞!
解説・小川洋子
※この電子書籍は2017年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
2015年、アメリカ。少年ばかりを狙って惨殺する連続殺人鬼<サックマン>が逮捕された。
彼の弁護を担当することになった国際弁護士の「わたし」は、30年前台湾で過ごしていた少年時代を思い出す。「わたし」は<サックマン>のことを確かに知っていた。
1984年の台湾と2015年のアメリカを舞台に、家庭的な不幸に振り回される少年たちの姿を描いた青春ミステリ。
解説が小川洋子さんだったので手に取った初読の作家さんの本だったのですが、とても良かったです。
1984年の台湾、当時13歳中学1年生だった3人の少年の物語。喧嘩や万引きなどをしつつも、ブレイクダンスの練習に興じ、困ったときには助け合ってきた3人の関係は、それぞれの家庭の問題によって崩れていきます。
1人は兄の死によって母親が精神を病み、1人は継父から日常的に凄惨な暴行を受け、1人は母が浮気相手と出奔したことにより家庭が崩壊し……。追い詰められた3人が選んだ選択が、結果的に後のアメリカの連続殺人事件へ繋がる事に。
ほんの13歳という子どもが選んだ選択肢を考えると、少年らしい頑なさと残酷さに眩暈がします。彼らには、周囲の大人に頼れる人間がいなかったと考えるとさらに。
「誰」が「誰」を殺し、殺されたのか。物語中盤で明らかになるシーンは淡々としていながらもパッと風景が変わるようで印象的です。
台湾での少年時代とは全く変わってしまった関係ですが、それでも少年時代の思い出は痛々しくきらめいています。死者の思い出に生者が敵わないように、死んでしまった思い出にしか放てない輝きがあるようでした。
ヘビが物語上重要なアイテムとして登場するので、物語の構成もありウロボロスを連想しました。自らの尾を食むヘビは円環となり、死と再生や永続性の象徴でもあります。物語の終末は冒頭へ還り、痛ましくも楽しかった少年時代へともどっていく……というのをイメージしているのかな、と。考えすぎかもしれませんが。
Posted by ブクログ
は?異国すぎて地名なのか人名なのか意味不明
読むのやめよかな
真ん中過ぎたあたりから面白い
相変わらず地名なのか人名なのか分かんないのあるけど
毒蛇と葛藤してるの笑えた
青春が切ない〜ユン〜安らかにな〜
なんで子供殺したのかよく分かんなかったけど
Posted by ブクログ
台湾の歴史と民俗、まとわりつく湿度と臭気、大人に翻弄される少年たちの複雑な感情がリアルに感じられた。最初スタンドバイミー?ブラザーフッド?BL?と思ったがどれとも違う。アメリカで起きた猟奇犯罪、その犯人と弁護士。少年たちの関係が徐々に明かされる。
P8「おれたちはガキで、世界はガキの思い通りになんかならねえんだ」
P268 連続殺人鬼の殺人衝動なんて、あとから専門家たちがとってつけたものだ。こういうことに正解なんてない。正解の代わりに誰かの想いがあるだけなんだ。」「人間はいつだってその誰かの想いによってつくられる。」
P284 正義が蒸発し、勇気が砕け散ってゆく。悲しみだけがピリピリと肌を刺してくる。目の前にいるジェイは、もう僕の知っているジェイではなかった。
P289 そしてわたしは変わった。時間をかけ、ゆっくりと。ただの不良少年が我が身可愛さに、法律という名の新しい暴力にすがり付いた。豚のように肥え太っていく不安を始末するには、法律しか手立てがなかった。
P294 「まあ、すんなりいかねえ時ってのはあるもんだ」男が言った。「けど、おれにいわせりゃ、もっとうまくいってねえやつはごまんといるぜ」
「そうだと思う」
「さてと。じゃあおれは仲間んとこに戻るよ」
【中略】こんな夜に限って、世界はどこまでも優しいのだった。
Posted by ブクログ
中盤まで、少年時代の話題が長々続くなぁ…という印象があったが、現代のシーンで弁護士と殺人犯が誰なのか判明して以降は色々な点と点が線で結ばれたような感覚を覚え、一気に読破出来た。
ジェイの立場だったら、アガンの立場だったら、と色々思いを巡らせながら、読み終わった後は少し余韻が残った。
Posted by ブクログ
文庫で再読しました。
1984年の台湾と、2015年のアメリカ。
アメリカで連続殺人を起こした〈サックマン〉は、台湾の少年たちの誰なのか。そして弁護士も誰か。。
台湾での少年時代が鮮やかに描かれ、そしてどんどん後戻りできなくなる転落で、彼らが決定的に変わってしまったという悲しみがありました。3人(ダーダーも重要だけど、だいたいユンとジェイとアガンだったな…)がとても生き生きと描かれていて切なくなります。
周りの大人たちの影響で否応なしに歪み、そんな状況をなんとか打破しようとして更に悪くなる、という悪循環がつらいです。
アガンもジェイも、ユンの弁護を依頼したり担当したりして、少年時代をきちんと終わらせていくのかなと思いました。
2度目でも泣いてしまいます。しみじみ、良かったです。