【感想・ネタバレ】ホークス3軍はなぜ成功したのか?~才能を見抜き、開花させる育成力~のレビュー

あらすじ

21世紀の新たなる覇者・ソフトバンク。その「強さの原動力」として注目されたのは「3軍育ち」。育成選手としてプロ入りした、たたき上げのプレーヤーたちだった。千賀滉大、甲斐拓也、牧原大成、石川柊太、周東佑京、大竹耕太郎――3軍制を取る球団は数あれど、なぜホークスだけが大成功を収めたのか? 王会長をはじめ、多くの選手・関係者への取材を元に解き明かす。その源流は、やはり“あの男”へと行き着いた。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ここ数年のプロ野球は、ソフトバンク=反則的に強い、という印象があり、
(それでもなぜかレギュラーシーズンは西武が一位になったり、ロッテはソフトバンクに強かったりする番狂わせ感がパリーグの魅力なのですが、)
その強さの源泉の一つとして取り上げられる”3軍”について、一冊の新書が出ていると知り、入手したもの。

千賀や甲斐などの育成出身スター選手たちのエピソードがメインなのかと思いきや、
始まりから3分の1くらいまではソフトバンク3軍創設に至る背景(球界を取り巻く時代や社会の変化)や球団内外での動きについてしっかりと書かれていました。
第3章以降はこれまでの歩みを第一・第二・第三世代に分け、環境の整備具合や球団外からの評価の変化、各世代を代表するスター選手のインタビュー等を通じて、
ソフトバンク3軍の成熟のプロセスや選手の世代変化について紹介・考察されています。
プロ野球のファンでも普段これらのことに触れたり思いを巡らせたりすることはないので新鮮で面白かったです。
単なる野球本に留まらず普遍的な内容も多く、示唆的な部分もあり、良かったです。

以下、印象に残ったところ(&自分の気付きメモ)。
・「『支配型リーダー』の対極にいるのが『サーヴァント・リーダー』だ。イニシアティブを取る若手、中堅のリーダー格を『支援』する。つまり『やってみなさい』と、物心両面でバックアップをしながら、全体の足並みを巧みにそろえ、最終的に大きなゴールへの導いていくスタイルだ。大同小異。その”小さな異論”を乗り越え、部署間の対立を緩和していく。」(p.9)
→自分の職場でも”大同小異”はめちゃくちゃ多い。実働しなければならない層が適切な働きをしない。サーヴァント・リーダーシップがヒントになるか?
・日本経済の衰退→プロ野球界の『人材プール』の役割を果たしていた社会人野球の衰退。アマ球界トップの先細り→プロに至る道の先細り→プロ野球の魅力も失われ、ひいては野球人口の減少にも繋がる。こうした悪循環を食い止めるためにも、育成選手制度が必要。(p.16-17)
・シーズン前にはフロントとファームの首脳陣が集まり、若手選手を相対評価で「A」「B」「C」にランク分け。選手たちには知らされないが、現場とフロントの双方では常に確認され、共有されている。大金を投じて獲得したドラフト上位は「A」、育成は「C」。目標達成や評価のために出場機会を与える必要があるが、必然的にチャンスは「A」の方が多くなる。「A」の選手が年400打席なら、「C」は200打席。(p.70-71)
→期待されていればチャンスは多く回ってくるが、期待されていなければチャンスも少なく、結果を残すのがより難しくなる。
・「2軍、3軍ともに、日々の練習内容の進行具合、ゲームでのパフォーマンスを記したレポートが毎日作成され、フロントと現場首脳に一斉メールされる。(中略)律儀な王は『読みました』という返信を送るそうだが、これがうっかり、受信者全員への一斉返信になってしまっているときがあるという。」(p.73)
・小川一夫氏コメント。「今、花開いていなくても、可能性のある選手はいる。高校時代に頭角を現していなくても、大学や社会人で3年、4年とやったらドラフト一位になるだろ?半分くらい、高校時代には、名前がないんよ。(中略)そういう選手を仕掛けて、早く獲ってしまえと。」(p.112)
→事業投資みたい?
・「甲斐は、その一つ一つの光景を、明確に、くっきりと覚えていた。リアルな表現ぶりに、聞いているこちらの脳裏にも、見えていないはずの光景が浮かんだ。」(p.180)
・「牧原の語る”若者への苦言”は、単なる年長者の説教ではなく、尊い経験から抽出される『今の時代の失われたもの』のような気がしてならない。」(p.219)
→世代により、備えているものは違う。
・石川柊太「そこで終われればいいけど、独立リーグに行ったり、自分で区切りを付けようとする選手、いっぱいいるじゃないですか。」(p.230)
・「NPB(略)が発表した『2018年戦力外、現役引退選手の進路調査結果』によると、調査対象の136人の平均年齢が『29.2歳』、平均在籍年数は『8.3年』。1つの会社に『10年以内』と考える新入社員が半数近いという先のデータと、ほぼ一致する数字でもある。」(p.236)
・「2019年(略)に活躍した甲斐野央、周東佑京、新人王の高橋礼が、車庫証明をもらうために市役所を訪れた時は、庁内がちょっぴりざわめいたという。」(p.274)
・「時代や社会の変化に伴って、選手たちの『気質』も、変化していることに気づかされた」(p.340)

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2020年09月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<目次>
序章   「俺を使え」
第1章  3軍を創る
第2章  逸材を探せ
第3章  名古屋の運動具店
第4章  四国を沸かせた強肩
第5章  たたき上げのプライド
第6章  育成契約はリスクではない
第7章  野球の街
第8章  甲子園を超える
第9章  名門校からホークス3軍へ
第10章  イチローよりも速い男
終章   宮崎の白梅

<内容>
スポーツ記者による、ホークス3軍(育成)の誕生と創成期の選手(正規契約を勝ちとった選手)の秘話をまとめたもの。根本陸夫と王貞治、この二人の提案を中心に、東大卒のプロ野球選手だった、小林至、遠藤良平の実戦部隊の動き、小川一夫(現2軍監督)らの動きなどが語られる一方、千賀滉大、甲斐拓也、牧原大成、石川柊太、大竹耕太郎、周東佑京のエピソードが語られる。それは一芸に秀でたもの、故障上がりのものなどである。一方で、千賀に関して愛知のスポーツ用品店の店主の話、などがついてくる。後半の石川や周東のエピソードが短いが、さらに2、3軍のホ-ムグラウンドである筑後市や春季キャンプ地の宮崎の話など盛り込んで、結構読みごたえがある。

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2020年04月28日

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