あらすじ
15歳にして親元を離れ、不慣れな土地で奮闘し、やっとの思いで甲子園に出場したのに、なぜか批判されてしまう……。そんな野球留学生を、もっと応援したくなる!覚悟を決めて地元を離れ、甲子園を目指す野球留学生たち。強豪校ゆえの激しいポジション争いや、慣れない土地での寮生活に悪戦苦闘しながら過ごす日々。郷土を思う一部の過度なファンから、気持ちよく応援してもらえないこともあるが、そんな地域文化とも向き合いながら、やがて人間としても成長していく……。『野球部あるある』『下剋上球児』で高校球児をハートフルに描いてきた菊地高弘氏が、野球留学生の奮闘の日々を、愛情を込めてお届けする青春物語。イラストは、自身も元高校球児で、『ドラフトキング』が好評連載中の漫画家・クロマツテツロウ氏。
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Posted by ブクログ
本書はいわゆる野球留学生(越境入学者)の物語です。大阪の子が島根の高校に行く場合などですね。外国人留学生の話ではないです。
話は大谷翔平を擁する花巻東を岩手大会で破った盛岡大付属高校に向かって閉会式で「よっ、横浜瀬谷ボーイズ!」と野次が飛ばされる場面で始まります。私自身、野球留学に関しては否定的で甲子園も近年見なくなりましたが、さすがにこの野次はダメだろうと思いながら読み進めました。
本書では盛岡大付以外に健大高崎(群馬)、滋賀学園、明徳義塾、創成館(長崎)など8校が取り上げられています。それぞれいかに野球留学した部員たちが慣れない土地と環境で奮闘し、地元に受け入れられ、第二の故郷と感じるまでに至るか、その過程を描いています。
読んでみてだいぶ彼らに対する見方が変わりました。その土地で育った選手だけで構成する野球部は理想かもしれませんが、少子化もありもうそういう時代でもないですしね。高校野球に興味のある方には是非読んでいただきたい本です。
Posted by ブクログ
野球留学、県外生が多く在籍する強豪校を前向きに捉えたノンフィクション。
高校野球の代表校は郷土の代表。地元はもちろん故郷を遠く離れ暮らす人々も応援する。それが高校野球がこれだけ人気のある所以だろう。
そんな高校野球だが多くの強豪校から全国から選手を集める。時に地元の子がほとんどいないガイジン部隊と揶揄されるチーム構成となることもある。
本書はそんな強豪校の実態を丹念に取材、読後は今までと野球留学のイメージが大きく変わる一冊である。
八戸学院光星、盛岡大付、健大高崎、帝京、滋賀学園、石見智翠館、明徳義塾、創成館。
夏の甲子園の時期そして東京2020大会の最中に読んだ一冊。そういえば侍ジャパンの田中将大と坂本勇人は同級生、伊丹市で同じチーム出身。地元に残らず駒大苫小牧、光星学院を選んだところも象徴的。
大学や他の競技では地元はおろか国際化が進む中、野球だけ批判的に捉えられるのはやはりおかしいのだろう。とはいえ純粋に地元の公立高が時に強豪校を倒すことがあるのも楽しい。互いに切磋琢磨して野球のレベルが上がれば何よりであろう。
丹念な取材による力作ノンフィクションでした。