あらすじ
SFマガジンに掲載された「宇宙ラーメン重油味」「たのしい超監視社会」をはじめとした、『横浜駅SF』で話題の、SF界若手最注目の奇才による初短篇集。全六篇収録。
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『横浜駅SF』で鮮烈なデビューを飾ったSF界の鬼才、柞刈湯葉の短編集。
ジョージ・オーウェルの名作『1984年』を大胆にオマージュした「たのしい超監視社会」、消化管のある奴は全員客!と宇宙人に合わせた美味しいラーメンを提供するラーメン屋が題材の「宇宙ラーメン重油味」、部屋に突然巨大な岩が現れた男を描いた「記念碑」など、全6篇のユーモラスな短編小説を収録。
中でも私がいちばん好きなのは、表題作の「人間たちの話」です。
火星で見つかった、メタンを生成する岩。果たしてこれは、"生命"ということができるのか?人類と宇宙生命のファースト・コンタクトなのか?という議論と、姉の子供と暮らすことになった研究者の生活。この二つを軸に"他者"というテーマを描き、科学的な面白さだけでなく、少ししんみりとした人間ドラマとしての面白さも楽しめる珠玉の作品です。
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Posted by ブクログ
『記念日』はカフカ『変身』と村上春樹『TVピープル』と似た香りがする。といっても、冒頭の不条理さと巨大な石を他人が意に介さない挙動にそれを感じただけであるが。
『変身』は10代に読んだことあまりにも有名な書き出ししか印象に残っておらず、結末の方向性(ハッピーorダイ)も覚えていないにもかかわらず引き合いに出す豪胆さ。
『TVピープル』は直近に読んでいるし、あるPodcastでも話題に出ているのを聴いてる。ラストの不穏さが不気味である。
翻って『記念日』はなぜか前向き。明らかな不条理に巻き込まれているのに、最後には親近感すら感じておりなんだかハッピーな終結。岩の存在によって正気のない世捨て人感がある主人公に人間味がちょい足しされる。
無機質な岩との内省的なコミュニケーションによって人間として生きてることの実感が生まれて、さらには死に向かう現実を真っ向から見据えてみようという意識の変化がうかがえる。
ということで、『記念日』が一押しかというとそうでもなく、『No Reaction』も『たのしい超監視社会』もえぐ面白い。その他の作品も。概して全作品に人間の業を抉ってくるシニカルさがある。読みながらハッと息を呑む。
日常にモヤモヤとする言語化未満の感情を抱えている皆さまには、ぜひ手に取ってハッとしましょう。
Posted by ブクログ
柞刈湯葉先生の作品を初めて読みました
自分を合っているのかどれも読みやすく楽しめた
お気に入りは記念日
大きな岩=恋人(家族捉えても良さそう)と解釈した
主人公に対してそんな風に見るなよと思う一方でそうかもとも思う
特にワンルームでは一人増えるとプレッシャー(?)という意味では大きな岩一つに相当するかも
にしてもあれはコミュニケーションとか取れてるのか?
Posted by ブクログ
SF短編だけど面白かった。
「たのしい超監視社会」みたいな作品を読むたびにジョージオーウェルの1984を読んでて良かったなって思う。他の作品もなかなか良かったように思いました。作者の名前覚えとこ。